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淡路島におけるパソナグループの地方創生 ~地元・企業・自然が融合した豊かな創造の未来図[前編]

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パソナが淡路市野島常盤に新築したグローバルハブスクエア

パソナが淡路市野島常盤に新築したグローバルハブスクエア


総合人材サービスの大手パソナグループが本社機能の一部を兵庫県淡路島に移転させてから1年半以上が経ちました。地方創生が叫ばれる中、パソナのような規模で本業と地域をリンクさせ、本気で取り組んでいる企業はまだ少数派ではないでしょうか。パソナが展開する新しい働き方と暮らし方をサポートするオフィスや施設を訪ねるため淡路島に行ってきました。



■加速する企業の地方移転と地方創生の関係

コロナ禍が続いたことで企業の地方移転の動きが加速しました。


帝国データバンクの調査によれば、2021年に本社移転した全国の企業2,258社のうち、首都圏から地方への移転例は351社あるそうです。例えば北海道への移転はコロナ前から2021年で約5倍も増えています。また経団連の調査では、東京の2割の企業が地方移転を実施、検討しているとあります。



参考:

企業の「脱・首都圏」、過去最多ペース 首都圏外への本社移転、半年で初の150社超」(帝国データバンク プレスリリース)

東京圏からの人の流れの創出に関する緊急アンケート」(経団連)



帝国データバンクのデータより独自作成(※)

帝国データバンクのデータより独自作成(※)



経団連「東京圏からの人の流れの創出に関する緊急アンケート」より(※)

経団連「東京圏からの人の流れの創出に関する緊急アンケート」より(※)



従来、地方移転を実施するには採用面や取引先との関係などのハードルがありました。しかしコロナ禍下でテレワークが一般化したことで、首都圏にオフィスを構えるメリットが薄れ、首都圏一極集中のリスクを考慮する企業が地方移転に踏み切っていると言えます。


このような動きが、東京圏の人口の過度な一極集中を是正し、各地域がその特徴を活かして自律的で持続可能な社会を創る「地方創生」につながっていくと期待されています。


まず企業側は地方に移転することで次のようなメリットがあります。



  1. ①多様な働き方を実現できる
  2. ②BCP的観点からリスクを分散できる
  3. ③地方の優秀な人材を確保できる
  4. ④各種補助金を活用できる


具体的には、地方での空き家再生事業、プラットフォーム(居場所)づくり、人材のマッチング、地域プロモーションの展開などがあります。また地方で独創的な事業を行えば先進的なイメージが得られ、新しい人材確保もしやすくなるでしょう。


一方、地方には少子高齢化や人口減少とそれに伴う財源の減少といった課題がありますので、企業の地方移転によって地方創生と企業の課題の双方を解決できる可能性があるのです。


そんな中で、パソナグループは2020年にいち早く兵庫県淡路島への本社機能の一部移転を発表しました。東京一極集中からの脱却を目指すだけでなく、大規模災害に備えた事業拠点としても位置づけられました。


すでに本社管理部門の約350人が移住し、2021年12月末時点で、元々いたスタッフや現地採用の方を含めて約700人が淡路島で働いていますが、今後、2024年5月末までにあと約900人が淡路島に移住する計画になっています。



神戸新聞NEXTより(※)

神戸新聞NEXTより(※)



すでに機能の一部移転が完了しているのは広報部やHR本部、財務経理部や経営企画部などの部署で、グループ全体業務の半数以上が淡路島で行われています。南部靖之代表をはじめ主要な役員も移住し、重要事項を決める取締役会も島内で開かれているそうです。島内に限らず、神戸市内や明石市内での採用やUターン雇用も行われ、島内での事務業務、サービス業務、シェフ、音楽家などとしても活躍されています。


コロナの影響で都道府県をまたぐ移動が自粛されたため、移住ペースは当初目標の6割にとどまったそうですが、淡路島以外にも京丹後や岡山、岩手などでも様々な事業が開始され、働き方改革と地方創生を実現するためのパソナの投資は継続しています。


しかし、多くの企業にとって地方移転は容易に実施できるものではありません。実際には多くの準備や整えなければならないことも多いようです。地方で役立つ企業の在り方はどのような形がよいのでしょうか。


■集まることで生まれる"無駄なコミュニケーション"

笠谷桂伍さん(淡路セールスアドミ第2チーム チーム長)

笠谷桂伍さん(淡路セールスアドミ第2チーム チーム長)



まず、神戸方面から明石海峡大橋を渡ってすぐの「ワーケーションハブ鵜崎」を訪れました。ここは土産物店だったところですが、海に面した絶景の地といった印象です。1階では各企業がテレワークなどを行っています。


全国のパソナグループを通じて転職される人と企業との面接や、採用後の研修や教育などの調整業務を行っている笠谷桂伍さん(セールスアドミ部チーム長)にお話を伺いました。


― 笠谷さんのご経歴を教えてください。


2016年に入社し、今は7年目です。人材紹介本部で、名古屋と東京で5年間営業をして、同じくパソナに勤める妻と一緒に昨年淡路島に来ました。


現在は人材ビジネスの事務的業務と、パソナグループ内の各ソリューションをインサイドセールスしています。現地の方と一緒に働く環境で、これまでとは大きく違います。部署内のメンバーは移住した方や異動してきた方だけでなく、半数以上が現地での採用です。


― 島での生活はいかがですか。


すごく楽しいです。仕事とプライベートの両面で島に来てよかったなと思っています。近い方の拠点だと通勤時間は徒歩5分です。東京時代には満員電車で1時間かけて通勤していました。


もともとアウトドア派だったので、淡路島に来てからもキャンプをしたり、論鶴羽山(ゆずるはさん)や四国や神戸で登山を楽しんでいます。柏島(高知)では海の美しさに感動しました。島内は家賃も駐車場も安いです。家から5分で海にも行けるので、散歩が習慣になりました。


― 不便に感じることはないですか。


車がないと少し不便だとか、場所によってはネット環境が悪いという声もありますが、私個人的には不便はありません。もともと「田舎派」というか、学生時代も諸外国など様々なところに行き、人や文化から学ぶのが好きでしたから。


インタビューを行ったワーケーションハブ鵜崎からの素晴らしい眺望

インタビューを行ったワーケーションハブ鵜崎からの素晴らしい眺望



淡路夢舞台にあるオフィス

淡路夢舞台にあるオフィス



― 淡路島でお気に入りの場所は?


西海岸の慶野松原です。「夕日百選」にも選ばれているスポットで、本当にきれいです。


慶野松原からの夕焼け(※ 735design|AdobeStock)

慶野松原からの夕焼け(※ 735design|AdobeStock)



― 東京での働き方からどのように変わりましたか。


コロナ禍もあり、東京ではリモートワークとのハイブリッド出社でしたが、淡路島に来てからは出社が前提になりました。オフィスに来て皆さんとコミュニケーションしながら仕事をすることで、新しいカルチャーも作っていけているように思います。そういう意味でも、オフィス環境が素晴らしいことには意味があります。


― 業務だけを考えると、淡路島に住まなくても、リモートでできるのでは?


全国の営業マンが求職者やクライアントとの時間を作るために、事務的業務を淡路島に移管しています。リモートでもできる内容だとは思いますが、集まって仕事をすることによって現地の方々とのコミュニケーションが生まれ、淡路島の方々の思いや気持ちを聞くことができます。


社員にお友達やご家族を紹介してもらって応募に結びつける「知人紹介」という仕組みで10人ほどが採用となりました。これも淡路島の方々とお話しする中で生まれた成果です。


― リモートでは得られないものは何でしょう。


"無駄なコミュニケーション"です。厳密に効率だけで考えると生産性は落ちているのかもしれませんが、その雑談の中から様々な人の違った想いや背景を知ることができます。すごく意味のあることだと考えています。



ワーケーションハブ鵜崎の執務エリア

ワーケーションハブ鵜崎の執務エリア



― 「集まる」ことの価値が変わったのですね。


様々な想いや経歴や適性のある方々ばかりなので、集まって話し合うことが重要だと思うんです。淡路島に来なければ出会っていない方々です。また、そのような事務業務をしたくても、淡路島にはこれまでできる場所があまりありませんでした。パソナの業態拡大がそのような方々の受け皿となり、喜んでいただけています。



■生産性も品質も上がり、売上や利益に貢献できている



― 淡路島での事業で最もうまくいっていることは?


私たちのセールスサポート部は、客観的にみて成功していると思います。昨年立ち上げて急拡大し、拠点もここと「ワーケーションハブ志筑」の2か所になりました。現地での雇用も創出できています。これまで全国の営業マンが個々に行っていた事務的業務を淡路島で行っています。そのことにより営業マンと求職者とのコミュニケーションの質が向上し、よりパソナの価値を提供できるようになりました。生産性も品質も上がって売上や利益にも貢献できています。業務が淡路島に分散されていますので、BCPのための体制もとれています。


― 情報やデータ面の管理も万全ですか?


情報のセキュリティにはかなり気をつけています。定期的に研修も行っていますし、入社時や入社1ヵ月研修でもセキュリティ研修があります。以前は各部門で異なるシステムを使用していたのですが、今はセールスフォースを使っており、生産性や効率を上げながらセキュリティ面の向上を図れています。人材情報には個人情報や機密条項が多いので、機密性の高いものを扱っている意識は徹底しています。リモート業務にはセキュリティリスクがあるので、その意味でも集まって業務をすることにはメリットがあると思います。


― 働く現場には女性が多いですね。


東京時代にも女性が多い職場でしたし、パソナは全体的に女性の多い環境なんです。性別や年齢、島外/島内などに関係なく、一緒に新しいカルチャーが作っていけたらいいなと思います。


― 地元の方々との交流は?


地域の清掃活動に参加したり、ご近所の方におかずをもらったりしています(笑)。パソナが展開している観光施設や飲食施設などにも高い評価をいただいています。


地元採用の方々からは事務業務ができるのがいいという声が多いです。チームでフォローしながら進めているので、週3日で9時~13時など多様な働き方を選択できます。賃金の面でも満足していただいています。インターナショナルスクールなどの子どもの教育面への支援も充実しています。


― 今後さらに働き方を改革していくとしたらどんなことが考えられますか?


個人的には「旅をしながら働く」ことに興味があります。パソナグループにもJOB HUBという関連会社があって、それをコンセプトに事業を展開しています。


※参考:既存記事「企業と人の関係を変える、キャリアとしての「関係人口」~パソナJOB HUB×パラキャリ酒場



淡路島にも旅をしながら働いている才能豊かな方々に来ていただいて一緒に働いたり、私たちがいろんなところに旅をして働けたら、楽しいだろうと思います。


― 本当に、生活に不便はありませんか(笑)。


アマゾンが都内よりも早く届きます(笑)。19時以降に指定しても17時に来たり、土日に指定しても平日に来たりします。島内にはウーバーなどのデリバリーサービスがありません。スーパーで売っているお魚が本当に安くて美味しいですし、「MAPPEE COFFEE WORKS」のエビアボカドサンドは本当においしいですよ。




「ワーケーションハブ鵜崎」には多くの人が集まり、テレワークやミーティングをする外部企業の方、パソナ社員の全員が穏やかに笑顔で仕事をしていました。笠谷さんも自然に囲まれた淡路島での仕事と生活が本当に充実しているようです。日焼けしたやさしい笑顔がそれを物語っていました。



後編はこちらから





取材協力


パソナグループ[外部リンク]



編集・文・撮影:アスクル「みんなの仕事場」運営事務局 (※印の画像を除く)
取材日:2022年5月19日

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