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好奇心を刺激するイマジネイティブなオフィスからエンターテインメントが生まれる ~THECOO株式会社[後編]

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THECOO株式会社の新オフィス エントランス。(※)

THECOO株式会社の新オフィス エントランス。(※)


ファンコミュニティプラットフォーム「Fanicon」事業を展開するTHECOO株式会社の新オフィス。前編に引き続き、メンバーサクセス本部の清水彩加さん、コーポレート本部の手塚彩子さんにお話を伺います。



前編はこちら








■平面のホワイトボードから始まるコミュニケーション

清水彩加さん(メンバーサクセス本部 メンバーサクセス部)

清水彩加さん(メンバーサクセス本部 メンバーサクセス部)



― 新オフィスは3フロアを使っていますね。どういう構成ですか?


清水さん  9階と10階は執務室になっていまして、一番人数が多い「Fanicon」事業部が9階、その隣にフリースペースを置きました。10階はコーポレート事業部とto Bビジネス事業部の執務室、フリースペースの上に当たる部分をスタジオにしています。11階は完全に会議室のみです。


― 皆さんの働き方としては、執務室で固定席ですか?


清水さん  部署によってやりやすいようにしていますが、現状としては「Fanicon」事業部は基本的にフリーデスクで、コーポレートと法人事業部は固定席ですね。



10階の執務エリア(※)

10階の執務エリア(※)



リモートミーティングに必須の個室ブース(※)

リモートミーティングに必須の個室ブース(※)



― フリーアドレスは推奨されているのですか?


清水さん  その部署がどういうコミュニケーションをとりたいかということによりますね。コーポ―レート事業部では機密情報も扱いますので、固定席で袖机を置いていたりします。


手塚さん  もともとは従来型の一般的な固定席オフィスだったのですが、コロナでテレワークになって出社する人が減り、サテライトオフィスもクローズしたときに、やはり席が足りないという問題が出てきて、固定席はもう無理だねということなって、フリーアドレスになりました。コロナの感染拡大当初はフリーアドレスでも一応業務はできていたのですが、もし全員が出社したら全然足りないということから移転にいたったという歴史です。


― 音楽業界は一人ひとりが一国の主的に裁量をもって仕事をしているので固定席にしたがる傾向もあると聞きましたが。


手塚さん  正直、「この席だと集中しやすい」「背面を取られたくない」という個人の意向はあったと思います。でも、当社では仕事するメンバーが固定しておらず、部署間やチーム内でコラボして仕事を進めていくスタイルですから、フリーデスクになることの理解は得られていたと思います。


― 代表も同じフロアにいらっしゃるのですか?


清水さん  9階に席がありますが、役員の会議室は10階なので、行ったり来たりしています。現場に出るのが好きなタイプなので。


手塚さん  もともと営業出身で、KPIにいかにコミットするかということを考えるのを好むタイプですから、「Fanicon」事業部のマーケチームや、「BD」と呼ばれる提案営業のメンバーには、今でも代表がキックオフミーティングやリーダー研修を率先してやっています。


― 意外な使われ方をしている場所などはありますか?


清水さん  フリースペースのファミレス席が人気で、あそこで仕事する方が多いんです。


景色も見えて気分転換ができたりするので。


― わかります。打ち合わせもやりやすいので、弊社もファミレス席が人気です。



人気のファミレス席(※)

人気のファミレス席(※)



手塚さん  執務室の中心に共有のゴミ置き場を作り、その天板をホワイトボードにしたんです。ホワイトボードというのは普通、壁に張ってあるものなので、天板にして誰が使うんだろうと私は思っていたのですが、to B事業の営業メンバーがそこに伝言を書いたりしているようです。





ホワイトボードの意外な活用法といえそうだ

ホワイトボードの意外な活用法といえそうだ



手塚さん  例えば「ここにお土産を置いておきます」と誰かが書いたら、別の誰かが「ありがとうございます。取りました」と書いたり、「今日はちょっと○○さんにご迷惑をおかけしてしまいました。反省」と誰かが書いたら、別の部署の人が「元気だしなよ」と書いたり。何か不思議なコラボレーションが生まれていて。Slackのような感じですが、ネットとはちょっと違うコミュニケーションなんです。


― すごくアナログなところが面白いですね。


手塚さん  昔、駅にあった伝言の黒板のような感じで使っていて、こういうコミュニケーションは見たことがないなと感心しました。壁に張ってあるホワイトボードに書くのは「見せる」という意識に構えてしまうところがありますが、水平に置くだけで使い方が変わるんです。感覚が緩くなって、ちょっと落書きみたいな。


清水さん  もともとはデザイン会社さんが提案してくださったもので、みんなで立ちミーティングするときのためという業務寄りの狙いがあったのですが、そういう伝言コミュニケーションの場になっているのは、うれしい意外な使い方でした。


手塚さん  意外ということで言うと、フリースペースは社員のコミュニケーションを軸に考えて作ったものですが、アイコンさんたちから、スタジオ以外に「あそこでもファンミーティングしてみたい」という要望があって使ったり、土日にセミナーを開催したりという使い方もしています。これも当初想定していなかった使い方ですね。




■海外進出、Web3.0の活用など、さらに展開していく



― 海外在住の社員さんもいらっしゃるそうですが。


清水さん 開発チームに海外在住の人がいます。それ以外にも、国内の遠方で勤務しているメンバーがいます。to B事業でも地方在住のメンバーが何人かいますね。ご家庭の事情など妥当な理由がある方は許容しています。


手塚さん  当社は自由と責任の文化がとても強く根づいています。一社員でもサービスを立ち上げることがありますが、その分、自由と責任は、ちゃんと各社員に持たせるという教育をしています。そういうアウトプットができる前提での自由さということですね。


― ユニークな人事制度やルールなどはありますか?


清水さん  全社のコミュニケーション施策として、毎月末の金曜日にフリースペースで誰でも参加していい「TGIF」(Thanks God it's Friday)という会をやっています。これはコロナ前にも実施していたもので、コロナ中は停止していたのですが、移転をきっかけに月に1回再開したところです。例えば10月ならハロウィンとか、11月は80年代のアメリカンパブとか毎月テーマを決めて、人事側がデリバリーやお酒を準備して皆さんに参加いただく形です。自由参加ですが、いつも大体40~50名ぐらいが入れ代わり立ち代わり参加しています。フロアが違うと交流の接点が普段ないし、フリースペースの目的は集まる場所ということですから、そこで他部署の方との交流を促進できていると思います。


あとは、Slackのチャンネルでギター好きやアイドル好きのクラブみたいなものを立ち上げて、メンバー同士で情報交換したり、語ったりしています。



10月に開催され盛り上がったハロウィンパーティー(※)

10月に開催され盛り上がったハロウィンパーティー(※)



― コロナの感染状況が落ち着き、ようやくそういう施策もできるようになりましたね。


手塚さん  再開できたということ自体で、ちょっとテンションが上がりますよね。


― 今後オフィスを改善していく予定は?


清水さん  移転したばかりなので今はありませんが、清掃や運用ルールについて工夫・改善していきたいと思っています。


手塚さん  ただ、当社は社員全員が注意喚起する社風なんですよ。「終わったらモニターを消す」「電気を消す」「扉は開けておく」という会議室のルールも、最初はプロジェクトメンバーが注意していましたが、今では社員の側から「この会議室を使った人は誰ですか? 消えていませんでしたよ」とか「この会議室のリモコンはどこに行ったんですか?」とSlackのランダムチャンネルで発言してくれています。すごく協力的で、当社独特の文化だと思います。



エントランスのチューブライトで描かれた「Fucking ignore the system use it when it suits you.(こうでなければいけない、と決まったものはない)」は、制約条件を取っ払ってイノベーションを起こすためのメッセージだという。移転前のオフィスでも壁に書かれていた。

エントランスのチューブライトで描かれた「Fucking ignore the system use it when it suits you.(こうでなければいけない、と決まったものはない)」は、制約条件を取っ払ってイノベーションを起こすためのメッセージだという。移転前のオフィスでも壁に書かれていた。



― 事業について今後の展開は?


手塚さん  「Fanicon」事業は、韓国などアジアのカルチャーと親和性が高いので、海外進出を狙っていきます。また、エンタメテック、ファンテックはWeb3.0と非常に関係があり、たとえばアーティストさんのレコーディングデータをNFTでファンに販売できるようになります。弊社は独自開発できることが強みですからそういった領域にも展開したいと考えています。


インフルエンサー事業部のほうは、「Fanicon」の強みを活かしてファンマーケティングを強化していきます。インフルエンサーマーケティングには成果を数字で可視化しにくいという課題がありますが、弊社にはコアファンのデータがあるので、「Fanicon」の登録アイコンさんをインフルエンサーにして、Fanicon×インフルエンサーマーケティングというサービス展開を考えているところです。


― なるほど。今後もどんどん人が増えてオフィスが狭くなりしそうですね(笑)。


清水さん  かなり増えても大丈夫なように、ちゃんと余裕をもたせています(笑)。


手塚さん  このビルを選んだ理由のひとつはフロアを拡張できるということでした。会社がもっと大きくなっても大丈夫なようにということを考えて選んでいますので、問題ないと思います。


― なるほど。ありがとうございました。







お話にもあったように、THECOOのビジネスは多様なバックグラウンドのステークホルダーが支えており、その対面コミュニケーションの熱量が事業を成功させているようです。音楽関係のアイテムがちりばめられた独創的なデザインは、まさにエンタメ業界らしいものであり、同時に、そのステークホルダーたちが円滑にコミュニケーションするための「共通言語」が具現化したものと感じられました。


オフィスはその会社のカルチャーを映す顔であるとよく言われますが、そこに行き交う人々のコミュニケーション手段にもなり得るということにあらためて気づかせられました。






取材協力


THECOO株式会社

運用型広告事業を行うルビー・マーケティングとして2014年に設立。代表取締役CEOは平良真人氏。2015年からインフルエンサーセールス事業を開始し、2016年にTHECOOに社名変更した。主力事業は歌手や俳優のファンクラブプラットフォーム「Fanicon」で、2021年にはNTTドコモと業務提携を締結、同年東京証券取引所マザーズに上場した。


THECOOコーポレートサイト[外部リンク]


編集・文・撮影:アスクル「みんなの仕事場」運営事務局 (※印の画像を除く)
取材日:2022年10月12日

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