増床した47グループの7階オフィス(※)
コロナ禍で働き方の多様化が進む昨今、オフィスを見直す企業が増えています。そうした企業のオフィスづくりをサポートする47グループ(47ホールディングス株式会社・47株式会社・47内装株式会社・47インキュベーション株式会社)では、2022年に従業員数が150名を突破し、さらなる事業拡大のために11月に本社・東京オフィスを増床しました。今回はその新オフィスを案内していただきました。
今回の増床プロジェクトの最大の特徴は、居抜きだということです。47グループのオフィスはもともと同ビルの6階にあり、手狭になってきたために移転を検討しはじめたタイミングで、7階のテナントが移転することが決まり、居抜きで増床することが決まりました。このため、原則的には前テナントの内装を引き継ぎ、エントランス周りや家具などをリニューアルしたそうです。
執行役員の鈴木俊さん(47ホールディングス株式会社 事業推進部・経営企画部統括)と、チームリーダーとして増床プロジェクトを進めた瀧澤翔太郎さん(47株式会社 営業部マネージャー)にお話を伺いました。
左:鈴木俊さん(47ホールディングス株式会社 事業推進部・経営企画部統括) 右:瀧澤翔太郎さん(47株式会社 営業部マネージャー)
― 今回の増床プロジェクトの経緯を教えてください。
鈴木さん 当社は毎年、社員から担当者を決めてワークプレイスを作るプロジェクトを実施しているんです。年によって、軽微な変更だけだったり大規模なリニューアルだったりしますが。
― えっ、毎年ですか!
鈴木さん 組織の状態や事業の方向性に合わせてワークプレイスは常に変わっていくべきだと考えているので、1年ごとに見直さないと、いたるところでエラーというか現状と合わない部分が出てしまいます。ハード面だけでなく、運用などソフト面も含めて、年1回見直していくわけです。
ワークプレイスを使うのは現場のメンバーですから、経営サイドの都合で決めるのではなく、現場のメンバーが自分たちでワークプレイスを作るという意識をもち、毎年メンバーを変えてプロジェクトにしています。今年のリーダーは瀧澤で、5人ほどのチームでした。
クライアント側に立って、当社の内装サービスをユーザーとして使うという経験も増やしていきたいという意図もあります。この7階の内装も、僕らが発注側になって当社の内装メンバーに発注して作ってもらいました。居抜きだったため、良くも悪くもレイアウトが決まってしまっていましたから、壁や床、家具を提案してもらいました。
― 7階を増床するまでは、どのような課題があったのですか?
瀧澤さん 課題は大きく3つありました。まず全体的に席が足りないということ。それから少人数の面談やズーム会議をする場所が少ないということ。そしてリフレッシュスペースがなく、食事なども自席でとらなければならなかったということです。それらを7階を増やすことで解消しようと考えました。
(※)
瀧澤さん コンセプトは「交わるオフィス」です。当社のオフィスはグループ4社が同居しているのですが、各社が協力し合って事業を伸ばしていこうという意味で、「みんなで働きやすいオフィス」を目指しました。エントランスから入ったスペースには、真ん中にモニュメントのように机・椅子・木を組み合わせたスペースを設けて、各社のコーポレートカラーに色分けしています。各社が交わるという意味です。
エントランスから入った正面のスペース。カッシーナの家具を使用して高級感を演出
47グループは、仲介・内装・家具などの事業があり、それぞれが別会社となっている。従業員数はグループ全体で約150名(※)
― 各社ごとに働き方は違うのですか?
鈴木さん 結構違いますね。たとえば47内装には設計職がいて、サンプルを見ながら決めていったりするのでカタログが必要になるので、物が多いんです。事業ごとに属している業界が異なるので、働き方も、使う「筋肉」も異なります。
― 東京以外にもオフィスがあるそうですね。
鈴木さん はい。札幌オフィスに家具のEC受発注部隊がいます。東京から役員が定期的に出張したり、逆に札幌からメンバーが研修で来たり、といった交流があります。
グループ4社のメンバーが事業部や年代、役職にかかわらず自由に交わって連携を生むためのフリースペース。会議室をとるほどではなく執務スペースでは話しづらいようなちょっとした打ち合わせや相談、ランチなどに利用されている。ガラスの向こうは来客者用の会議室(※)
― BGMが流れていて、リラックスする空間ですね。
瀧澤さん 新人が入ると決まって「すごく静かですね」と言うので、話しやすいポップな雰囲気にするために音楽を流すことにしました。「音楽を聴きながらだと仕事しやすい」とすごく好評です。ちょっと緊張感が和らぐというか。僕自身も音楽好きなので。
― そういう選曲などもオフィスづくりの一環なのですね。
瀧澤さん 100曲ほどのプレイリストを5~6個用意して流しています。日本語の歌がかかると集中できないという方がいるので、そうならないように僕がプレイリストを作りました。
ファミレス席の後ろに設置されている遠隔モニターでは、上下2フロアを中継し合ったり、札幌オフィスとつないだりしている(※)
瀧澤さん レイアウトもなるべくコミュニケーションしやすいように工夫しています。互いの距離が近いほうがコミュニケーションしやすいので小ぶりのカフェテーブルを選んだり、何人かで使うのに話しやすいようにファミレス席を作ったり。
鈴木さん ここで一日中仕事している人も意外といるのですが、じつは、入れ替わり立ち替わり来るのを想定していたので、そういう使われ方は想定外でした。
瀧澤さん ファミレス席を一人で使っていることが多いのも意外でした。6階にはそういうスペースがなかったので、7階にプラスできた意義はあると思っています。
隣接して、隠れるようにある小上がりスペース。奥に執務スペースが見える
― 小上がりは面白い空間ですね。
瀧澤さん 微妙なスペースなので迷っていたら、内装の担当者が「小上がりを作ったら面白いんじゃないか」と言い出して、入れてみたらサイズ的にちょうどよかったんです。働く場としては独特で面白いと思います。
電源があるので仕事もできる
このバーカウンターも前のテナントが設置したもの。アルコールも置いており、19時以降は1人2杯まで飲んでOK。「0次会」の場になったりしているそう
― バーの利用率はどうですか?
瀧澤さん もともとバーカウンターがあったので、「1日2本までお酒を飲めるように」というルールを作ったら毎日誰かしらいますね。似たようなメンバーではありますが、普段話さないような人も参加してくれていたので、もっと企画していろいろな人が参加できる場にしたいですね。
7階執務エリア。6階も含めて完全フリーアドレスで固定席はなく、6階との使い分けのルールもない。左手に見える5角形のテーブルは組み合わせ方で拡張できるユニークな家具
中央で分かれている4色はグループ会社のコーポレートカラー(※)
― フリーアドレスは以前から導入していたのですか?
鈴木さん コロナが感染拡大してからですね。その年のプロジェクトでフリーアドレスになりました。
理由は3つあります。出社する人がまばらになったので固定席の意味がなくなり、スペースがもったいないということ。
また、当社は事業間連携を重視しているのですが、部署ごとに固定席の島を分けてしまうとコラボレーションが生まれにくいというコミュニケーションの課題がありました。
3つ目は、クライアントにワークプレイスを提供する会社として、自分たちがフリーアドレスを実践していなければ、本当の意味でのメリットやデメリットを伝えられないからです。だから失敗してもいいから一度導入してみようということになりました。
― リモートワークの状況は?
部署や職種によって働きやすいスタイルが違うので、特に出社率は決めていません。毎日出社しているメンバーもいれば、ほぼリモートのメンバーもいます。
― フリーアドレスを導入した結果はいかがでしたか?
瀧澤さん 人によって固定席化することが多いので、2日連続同じ席に座るのはNGというルールを設けました。その結果、部署が違う人やアルバイトの人が代わる代わる座って、普段話さない人と話す機会が増えてすごく新鮮でした。気分に合わせて違う席で働けるのはいいなと思っています。
鈴木さん フリーアドレスには、社員数が増えても手配する手間が不要という管理コスト削減効果もありますね。席を用意しなくていいので座席表の更新なども要らない。細かな工数が意外とかかっていましたから。
― そういえば、ひと昔前は新人が入るとデスクを手配したり固定電話の番号表を更新したりしていましたね。そういう管理がいつのまにか要らない時代になったのですね。
音が聞こえにくい集中席も配置されている
瀧澤さん あと、この執務スペースやフリースペースも含めて、チェアが全部違うことも特徴です。フロア自体が居抜きということもあり、SDGsを意識して中古のオフィス家具も活用しています。奥のほうの席などはほぼ中古です。もはやわからないぐらい馴染んでいます。
椅子があえて統一されていないことに注目!(※)
― いろんな家具があるのに、床をうまくゾーニングして落ち着いた雰囲気になっています。
瀧澤さん 家具は内装のチームが、お付き合いしている家具メーカーさんのお勧めしやすい家具を意識して入れてもらっていたりします。執務スペースには中古の家具も取り入れました。家具の選定にはオリジナリティを出せたと思います。
実はエントランスのフリースペースでも、すべて違う椅子が使われている
執務スペースの一角のライブラリースペース。これも元からあったものだが、カーテンもつけてうまく隠せるようにしてある(※)
カウンターの下部分に内装関連のサンプル素材などを格納。ちょっとしたアイデアで、見た目のごちゃつきを解消できる
― プロジェクトチームとして一番こだわったのはどこですか?
瀧澤さん 前のテナントさんの内装が良いことを以前から知っていたので、居抜きで使うことが決まってからは、それを最大限に活かしつつ、当社のカラーを打ち出すためにはどうしたらいいかと考えました。結果的に、レイアウトはほとんど変えず、リフレッシュスペースの床と壁を変え、奥に小上がりを作って、47のカラーに合わせました。
― プロジェクトはどのくらいの期間だったのですか?
瀧澤さん オープンまで半年ほどでしょうか。増床が決まってからの期間が短かったので、急ピッチで動かなければならず大変でした。それまでは課題の確認などを緩やかに進めていたのですが、7階を借りることが決まり、早くオープンしようということで急いで詰めることになったんです。
― 瀧澤さんはプロジェクトのチームリーダーは初めてとのことですが、発注する側になってみていかがでしたか?
瀧澤さん 難しかったですね。社内の内装メンバーが発注相手なので、意図していることは大体わかるでしょ、というコミュニケーションになってしまい、実際には伝わりづらくて「そういうことではないのに!」とストレスを感じることもありました。僕の仕事はオフィスの仲介営業なのですが、同じ社内でも通じないのだから、社外のクライアントならもっと通じないだろうということに気づき、内装の業務の大変さがすごくわかりました。
最後に、47グループの6階オフィスもご紹介します。
今回のプロジェクトでは、打ち合わせスペースを7階に移動するなどの微調整はしましたが、6階のレイアウトは大きく変えていないそうです。
オフィスが2フロアになると、今度は「分断」という課題が生まれます。それをどうやって乗り越えるか、自社オフィスでトライアルするという狙いがあるそうです。
6階オフィス。こちらもデスクの種類が豊富。(※)
社員ロッカー。出社したら荷物を入れ、帰りはパソコンや書類をしまう。名前と顔写真のカードが貼られているのは、普段接点がない部署同士だと顔が覚えられなかったりするのを解消するため(※)
北欧風の家具がある会議室(※)
会議室の外の天井に設置されていた「サウンドマスキング」の小型スピーカー。あえてノイズ音を流し、会議室の音を音で遮断しているとのこと
※
家具の選び方など、ワークプレイスの総合コンサルティング企業らしさが感じられるオフィスでした。
次回は一転して、日々クライアントのオフィスづくりをサポートしている47内装の皆さんを中心に、昨今のオフィスニーズの変化や、実際のデザイン・内装事例などを紹介します。お楽しみに。
ワークプレイスの専門家47グループの最新オフィス事例とオフィスニーズの変化
取材協力
ワークプレイスの総合コンサルティング企業。「ワークプレイスで、ゆたかな未来を」を理念に掲げ、グループ会社が運営する事業(オフィス仲介事業・内装事業・家具EC事業)を通じて、今後もさまざまな角度からワークプレイスづくりを支援し、働く場所や環境の質の向上に取り組んでいます。
編集・文・撮影:アスクル「みんなの仕事場」運営事務局 (※印の画像を除く)
取材日:2022年12月16日
2016年11月17日のリニューアル前の旧コンテンツは
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