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アジャイルオフィスで働く環境の最適解を探す ~株式会社ヴィス 森陽香氏インタビュー[前編]

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株式会社ヴィス 東京オフィス

株式会社ヴィス 東京オフィス


コロナ禍によってテレワークが一般化し、一時は「オフィスなくても仕事はできる」という「オフィス不要論」も叫ばれたが、最近では、出社とテレワークを組み合わせる「ハイブリッドワーク」が主流となりつつある。かつてのように応接室やエントランスを中心にリニューアルするのではなく、社員の働きやすさを追求し、執務スペースを重視してオフィスを見直す傾向があるという。オフィスデザインを手がける株式会社ヴィスの執行役員、森陽香さんにお話を伺った。








■ハイブリッドワークに適したオフィスとは

森陽香さん(株式会社ヴィス 執行役員)

森陽香さん(株式会社ヴィス 執行役員)



― コロナ前後でオフィスニーズはどのように変化していますか。


コロナ禍で、オフィスの意義が問われるようになりました。オフィスではなくても仕事ができることが分かり、一時はオフィス不要論も流れました。しかし現在は「やはりオフィス出社は大事」と考える企業も増えています。「何のために会社に来るのか」ということを考える会社が多くなり、オフィス改装などのニーズも増えています。出社する意味を改めて定義し、出社した社員に働きやすい良い環境を整えたい、さらに出社したからにはしっかりコミュニケーションを取ってほしいと考える経営者が増えました。


― テレワークの日数が減っている企業もあるようですが。


今はハイブリッドワークが主流になりましたが、経営者が社員に出社してほしいと望むのは変わっていないと思います。全社員出社の会社も多いですね。基本ルールとしてテレワークでも良いという方式でも、出社している人の方が多い会社もあったりします。


― 御社の働き方も変わりましたか。


コロナ禍以前はテレワークを取り入れていませんでした。最初の緊急事態宣言を受けて全面的にテレワークを導入し、業務上出社が必要な人だけがオフィスに来ていました。感染者数の減少に応じて出社人数を4割、6割などと調整し、今は出社率8割を目安としています。


コロナ禍でテレワークを取り入れてみて、働き方の面でもメリットがあることもわかりました。働く環境を整えることは当社のテーマでもあるので、現在もテレワークを継続しています。


週に1回程度、チームごとでバランスよくテレワークを取り入れ、出社した社員は全員が座れるような設計にしています。


週2回という考えもあったのですが、新入社員も多いため育成の面と、チームでする仕事が多いことから、週1日ということになりました。


― 御社では「出社する意味」をどのように捉えていますか。


仕事柄コミュニケーションを取り合う必要のある仕事が多いので、メンバーみんなが出社する意味を感じていると思います。


家で黙々とやる作業は、集中はできますが刺激がありません。オフィスに来ると、ちょっとした雑談をしたり、近くの人の話が聞こえてきたりして、"偶然の刺激"があります。それが大事だと思うんです。


― ハイブリッド出社におけるオフィスづくりのポイントは?


オフィスに来たときにコミュニケーションをとりやすい空間づくり、家ではできない作業ができる場づくり、ストレスなくオンライン会議ができる環境づくりですね。





オフラインとオンラインでミーティングする場面も増えてきました。オンラインの人は孤独になってしまいがちですが、モニターやマイクなどのICTツールをしっかりと整えることで対面しているのと変わりなく会議ができます。




■変化に対応し、最適解を探せる「アジャイルオフィス」



― お客様の要望はどのように変わりましたか。


最近は、エントランスや応接室などよりも、執務エリア全体をリニューアルしたいというオーダーが圧倒的に多いですね。これはオンラインミーティングが一般化したことで、来客を意識する機会が減ったこともあると思います。もちろんエントランスをデザインすることも会社のブランディングとしては必要ですが、やはり社員のために働く環境を整えたいと考える企業が増えました。


― 具体的な課題としては?


コミュニケーションに関する課題が一番多いですね。出社して仕事をしているときにさっと集まれる場所を作りたい、業務に限定せず食事や休憩など多用途に集まれる場所を作りたい、といったご要望です。


座っている場所やエリアごとの人数がわかる可視化ツールなど分析ツールのオプションを希望されるお客様もいます。


コロナでオフィスニーズが変わり、我々も模索しています。正解はないと思いますが、アフターコロナのオフィスは「カルチャープレイス」になると定義しています。


オフィスには「VISION」「COMMUNITY」「GROWTH」「INNOVATION」という4つのカルチャーをつくる要素があり、オフィスという場所に集まることでその4つが醸成されるのです。


まず「VISION」は会社が目指すビジョンに社員が共感してもらうことです。


「COMMUNITY」は、もちろんコミュニケーションも含まれますが、コミュニティへの帰属意識、愛社精神や、チームとしての一体感です。


「GROWTH」は、個人の成長と組織の成長。


「INNOVATION」は、集まることによって新しく創出されるものです。多様な価値観を持つ人が集まることで、新たな価値をつくることができます。


この4つを醸成する場所としての役割が今のオフィスに求められるものではないか、と提唱しています。


― どのようにすればコミュニケーションしやすいオフィスになりますか?


動線でしょうか。一方通行ではなく、いろいろな場所を通れるようにランダムにレイアウトして、顔や目が会いやすく、声をかけやすい空間を作ります。通路を歩いていく間にも、誰かがプレゼンしていたり、ミーティングをしていたりする場面に遭遇し、そこからちょっとしたコミュニケーションが生まれます。


― 家具やスペースの作り方のポイントは?


簡単なことで言うと、視覚的に「丸い」ことです。角張っているより丸い方が心理的に集まりやすいですし、どの方向からも集まれます。家具も丸いテーブルを選ぶことが多いです。



業務内容やプロジェクト内容に合わせて働く場所を自由に選べる

業務内容やプロジェクト内容に合わせて働く場所を自由に選べる



人が集まるプレゼンテーションエリアでも「丸」が際立つ

人が集まるプレゼンテーションエリアでも「丸」が際立つ



― この東京オフィスは「アジャイルオフィス」にリニューアルされたそうですね。


アジャイルオフィスとは、変化するワークスペースのことで、変化に対応しながら最適解を見つけるオフィスです。これまでは島型にデスクを並べ、皆が一方向を向いて仕事をするのが主流でしたが、アジャイルオフィスではいろんな変化に対応できるレイアウトとそれに合う家具で構成しています。


― なるほど。


アジャイルオフィスでは、具体的には働き方に合わせて選択できるようにエリアを設けていきます。会議をするエリア、コワーキングエリア、フレキシブルに机を動かして人数に応じて集まるエリア、チームで働くエリア、コンセントレーションワーク(集中作業用ゾーン)など、いろいろなスペースを散りばめて構成しています。











リフレッシュできるエリア、コミュニケーションを取りやすいエリア、大型モニターがあってプレゼンテーションや多人数のミーティングができるエリア、プロジェクト単位で作業できるエリア、多人数のオンラインブースといったスペースです。




後編へつづく





プロフィール


株式会社ヴィス

1998年4月設立。「はたらく人々を幸せに。」をパーパスに掲げ、デザイナーズオフィス事業を幅広く展開。社員数234名(2022年6月末現在)。


森 陽香(もり はるか)

株式会社ヴィス 執行役員 デザイナーズオフィス事業本部 デザイナーズオフィス第一事業部部長 CM事業部部長
認定ファシリティマネジャー(CFMJ)


株式会社ヴィス コーポレートサイト[外部リンク]


サービスサイト[外部リンク]




編集・文・撮影:アスクル「みんなの仕事場」運営事務局 (※印の画像を除く)
取材日:2022年7月14日

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