前回、オフィスデザインを手がける株式会社ヴィスの執行役員、森陽香さんにお話を伺った続き、後編です。
前編はこちらから
「アジャイルオフィスで働く環境の最適解を探す ~株式会社ヴィス 森陽香氏インタビュー[前編]」
― 生産性を上げるためにオフィスができることは何でしょうか。
生産性とは社員の主体性です。ただ机が並んでいるオフィスの指定された席よりも、自分で業務に合わせて自発的に場所を決められるABWオフィスのほうが生産性は上がります。
― ABWを導入した会社では、どうすればいいか迷ってしまう人もいるそうです。
我々のオフィスでは、チームワークを大事にし、チームごとのフリーアドレス「グループアドレス」を採用しています。「フラッグ」という中心となるテーブルを作り。その周囲にチームごとにゆるくかたまって集まっています。フラッグは月に一度場所を変えています。
― 「フラッグ」はどのように使うのですか?
出社したら自分が所属するチームのフラッグの周辺に行って朝のミーティングをします。そこからはその日の予定によって、外出したり、そのまま働いたりするわけです。自由ですね。
ワークテーブルの形もさまざま
― 自由すぎて落ち着かなかったりしませんか(笑)。
そのためにフラッグを作っています。外出などから戻ったときにチームメンバーのいるテーブルに戻ります。マネジメント側としてもメンバーの動きが把握しやすいですし、相談ももらいやすいです。
― 生産性を上げる仕掛けはほかにもありますか?
バイオフィリックデザインがあります。東京オフィスの4階や大阪オフィスでは壁面にグリーンを施しています。また、視界に緑が含まれると生産性が6%ほど向上するという研究もあり、植栽などを置いてどちらを向いていても必ず視界に緑が入ってくるオフィスも生産性向上につながるそうです。
東京オフィス4階のエントランス
大阪オフィスのエントランス
大阪オフィスのワークスペース
オフィスアートにも視覚的効果がありますから、自社の企業理念や想いを表現したアートなどを使ったオフィスもいいと思います。
東京オフィスの"マテリアルスペース"
服装をスーツからオフィスカジュアルに変えただけで、社員が毎日着る服を考えることでモチベーションがあがり、生産性が上がったというクライアントもいます。
― 御社がデザインされたオフィスの事例をご紹介ください。
あるエンジニアの会社では、什器や家具も古く席も固定だったのですが、コロナのタイミングで、一新させることになりました。働き方をヒアリングしたところ、エンジニアさんは2~3ヵ月ごとにプロジェクトでチームが変わるということだったので、人数に応じて机を動かせるアジャイルオフィスにして、座席もフリーアドレスにしたところ、それまではコミュニケーションがなかった人たちとも話すようになったそうです。こういった事例が増えています。
― これからオフィスづくりをする企業にアドバイスをお願いします。
やはり「カルチャープレイス」ですね。オフィスに出社した人が4つのカルチャー要素を感じられる空間を作ることをおすすめします。そこに経営者側から社員へのメッセージをこめるのが大事です。何のためにオフィスに来ているのか、自社がどういう方向に向かっていくのか。社員が迷わずにいられるメッセージが伝わるオフィス空間を、私たちも一緒に作っていければと思います。
― 最後に、新しく立ち上げた株式会社ワークデザインテクノロジーズ(WDT)についてお聞かせください。
これまで私たちは企業が移転する際のオフィスづくり、企業価値を高め、社員のモチベーションをあげる空間を作ってきました。7000件以上のオフィスデザイン実績があります。
しかし「働く」ということには、オフィスデザインだけでなく、働く人のエンゲージメントの向上や働き方の改善などさまざまな要素が含まれています。企業で働く人たちの中にオフィスがあるわけです。
そのため、現在は「ワークデザイン」として、これまでのデザイナーズオフィス(ブランディング)に加え、コンサルティング、ワークスタイリングにも領域を広げています。特にデータを通じたコンサルティングに注力するため、グループ会社としてWDTを立ち上げました。
WDTはデータを元にしたコンサルティングやICTソリューションの活用などを通してお客様の課題を解決するコンサルティングに特化していきます。
また、ヴィスではワークスタイリング事業としてワンフロアのテナント貸し・シェアオフィス・コワーキングという3つの要素が複合している「The Place」も展開しています。大阪・名古屋で稼働しており、ほぼ満床です。同じビルの中でさまざまな企業のつながりがあり、シナジーが生まれます。こちらも引き続き展開していきます。
※
一日の執務時間を固定席だけで完結しているワーカーは、今や少数派だろう。人出不足を背景に、企業側は働く環境の整備を積極的に進め、フリーアドレスやハイブリッドワークは今後、更に広まっていくものと思われる。「自由なスタイルで働く」と「生産性を上げる」という双方を満たすオフィスづくりは、今後も課題でありつづけるだろう。
プロフィール
1998年4月設立。「はたらく人々を幸せに。」をパーパスに掲げ、デザイナーズオフィス事業を幅広く展開。社員数234名(2022年6月末現在)。
株式会社ヴィス 執行役員 デザイナーズオフィス事業本部 デザイナーズオフィス第一事業部部長 CM事業部部長
認定ファシリティマネジャー(CFMJ)
株式会社ヴィス コーポレートサイト[外部リンク]
サービスサイト[外部リンク]
編集・文・撮影:アスクル「みんなの仕事場」運営事務局 (※印の画像を除く)
取材日:2022年7月14日
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