リニューアルしたアドビ日本法人オフィス
コロナ禍の中で大幅リニューアルを決行したアドビジャパンの日本オフィス。前編ではその「心おどるアドビオフィス」を案内していただき、内部をご紹介しました。後編では、シニアHRビジネスパートナーの赤木亜希子さんに、リモートワークやオフィスでの働き方について伺いました。
前編はこちら
ひととおりオフィスを案内していただいたところで、リニューアルした新オフィスの狙いや、皆さんの働き方について、赤木亜希子さんにインタビューしました。
赤木亜希子さん(シニアHRビジネスパートナー)
― 多くの企業と同じように、アドビもコロナ禍のためにリモートワーク体制になりました。これは日本法人を立ち上げて30年の中で初めてのことだったそうですね。
赤木さん 2020年3月から完全にオフィスをクローズし、全社員が家でフルリモートワークになりました。当社はもともとテレワークを積極的に取り入れていたと思われることが多いのですが、実はどちらかというとオフィスに集い協業することを重視する文化でした。オフィスクローズをきっかけに、社員がそれぞれ自宅に快適な就労環境を作れるよう手当を設けたり、コアタイムを定めないフルフレックスタイム制にしたりと、社員の便宜を図りました。
― リモートワークで問題は生じませんでしたか?
フルリモートでもオンラインで業務のプロセスは回せます。元々、社内のプロセスもほぼペーパーレスでリモート可能な体制になっていました。社員もWeb会議や資料のクラウドシェアという働き方に慣れていますし、ビジネスへの大きな影響はありませんでした。
フルリモートになって以降も、日本オフィスには200名近くの社員が入社しています。採用の面接などもすべてオンラインでした。
入社すると、勤務開始の数日前に、自宅にセットアップ済みのパソコンが届きます。それを使ってオフィス環境のオリエンテーションを行い、画面越しのバーチャルでチームに挨拶をして仕事に入ってもらいます。
― 新オフィスのコンセプトは?
当社のカルチャーである、オフィスで人々がミングルしてイノベーションを作っていく"People Being Together"がこのオフィスのコンセプトです。
リニューアルによって席数を減らし、固定席をやめてフリーアドレスとなりました。一方で、会議室は18室から28室へ大幅に増やしています。
― ミングル(mingle)とは、「入り交じる」「混ざる」という意味ですね。いろいろな人と交流するということですか。
この2年間のフルリモートの経験で、リモートならではの良さと、対面ならではの良さ、両方があることが明確になりましたが明確になりました。
オフィスで一緒に過ごして、ミングルすることによって生まれる信頼関係やクリエイティビティを活性化してもらいたいと思っています。今は、どうすれば「自宅の方が効率的な業務もあるが、オフィスに行くことにも価値がある」と社員に感じてもらえるかということが、会社の経営課題です。
― 今は出社と在宅を選べるハイブリット型勤務の体制とのことですが。
オフィスクローズ以前は、みんなが出社するオフィスを中心に考えていたのですが、ハイブリッド型勤務となったため、社員やチームが最も効率的に働ける場所を選択するようになりました。
社員のウェルビーイングやワーク・ライフバランスという観点から、もともと時間や仕事の進め方のフレキシビリティは高い会社でしたが、場所のフレキシビリティが加わることにより、よりフレキシビリティが高まったわけです。
一方で、オフィス出社が再開したことで、他の社員に会えるようになり、ともに同じ場で時間を過ごすことの価値をあらためて感じています。
ただ、フルリモートに慣れてしまったために、ハイブリッドに戻すのは簡単ではありません。現在、オフィスはフルオープンして400席以上がいつでも使える状態にありますが、出社率はまだ10~20%です。
― 出社ルールは決めているのですか?
現在は、「まずは50%出社を目指してみよう」という方針を出しています。一方、最適なリズム(出社曜日など)は各チーム(注:個人ではなく)の考えに任せています。各チームリーダーは、アドビのフィロソフィーに則り、個々人の状況にも配慮しながら、それぞれのチームに最適なリズムを決定しています。
― 社員の皆さんの反応は?
ミングルしようと思ってオフィスに来たのに人がほとんどいなかったとか、あまり「オフィスに行こう」と言われるのもプレッシャーになるとか、いろいろな声があります。
10~20%という現在のオフィス出社率が理想的とは思っていません。もっと価値があるハイブリッドの形があるのではないかと、世界中のアドビオフィスで模索しているところです。ちょうど9月に新しい50%のガイドを出したところなので、これからオフィスの状況も変わっていくかもしれません。実際、9月、10月と以前より出社率が上がってきています。
― オフィスに来てもらうために工夫していることは?
新入社員が気軽に参加できるように、ちょっとしたパーティの機会を作っています。そういうミングルのためのスペースもあるのです。ここにはカウンターやソファがあって、ちょっとしたスナックとドリンクが提供されます。役員クラスやリーダーも顔を出して、「良かったら来ない?」と声がけしたりすると、出社している人の9割は参加してくれます。そこでの会話でアドビのカルチャーを体感してもらえば、社員自身のアドビライフがさらにワクワクしたものになると思います。
四半期ごとの全社員会議後のミングル会
― 社員を大切にする気概をオフィスに感じました。ミングルすることがオフィスの役割なのですね。
フルリモートの中でもそこは変わりませんでした。オフィスがオープンして人が集まり、ともに同じ場所で時間を過ごすことで、互いの信頼関係が構築され、多種多様な社員が集まってミングルすることで、クリエイティビティや新しい発見、アイデアが生まれると考えています。
当社が掲げるビジョン「心、おどる、デジタル」は日本独自のものです。社員のアドビライフも、「心おどる」ものにしていきたいですね。社員が最も良く働けるハイブリッドワークを構築していくことが働きがいをあげることにつながると思います。
アドビで働く皆さん(オフィス再開でお揃いのはっぴを着用)
※
今、多くの企業がハイブリッド型勤務を採用していますが、その出社率は各社各様です。
業務はオンラインでもできますが、業務が計画通り進むだけではビジネスの広がりも限定的なものになってしまいます。ただ仕事をする場ではなく、コミュニケーションの場としてオフィスを捉える企業が増えているようです。
同じ空間で直接対面し、人と話したり、交流したりすることで新たなアイデアや気力が生まれる。オフィス空間はそのような働く人の可能性を引き出す鍵になるのでしょう。
取材協力
編集・文・撮影:アスクル「みんなの仕事場」運営事務局 (※印の画像を除く)
取材日:2022年7月29日
2016年11月17日のリニューアル前の旧コンテンツは
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