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会社の成長に合わせてオフィスのステージを上げる~株式会社エスタイル 代表取締役 宮原 智将氏インタビュー~(オフィス訪問[2])

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株式会社エスタイル 代表取締役 宮原 智将 氏 (同社オフィス内にて)

株式会社エスタイル 代表取締役 宮原 智将 氏 (同社オフィス内にて)


人々の好奇心を掻き立てるコンテンツを生み出す!バーティカルメディアを運営する株式会社エスタイルのオフィス(東京 原宿)に行ってきました(オフィス訪問[1])」の続きです。



今回は、このような素敵なオフィス空間を作り上げるに至った株式会社エスタイルのオフィス移転にまつわる話を、同社代表取締役 宮原 智将さんに伺いました。



■CIとオフィス移転を同時に行った理由

CIとオフィス移転を同時に行った理由 株式会社エスタイル 代表取締役 宮原 智将 氏 (同社オフィス内にて)


――今回、オフィス移転にあたり会社のロゴやウェブサイトといった、コーポレート・アイデンティティ(CI)と同時に行われたとのことで、その狙いについて教えてください


そもそも、話を最初までさかのぼると、「どうやったら会社の事業が伸ばせるか」、「そのためには経営がどうあるべきか」ということを考えていたのが発端です。そういうことを考えていたときに、社内を観察すると、社員によって生産の格差が開いてきているのが分かりました。


――生産の格差とは具体的には?


例えば、今、うちの内定者の子もインターンとして仕事をしていて、すごくいい成果を上げているんです。弊社はコンテンツを作ることが仕事なのですが、記事コンテンツというのは、記事によって読者からの反響が違います。同じくらいの時間をかけて作っても、まず、作り手によって反響に差がつくし、同じ作り手でも記事の出来不出来によって差がつきます。例えるなら、80点レベルの記事よりも、95点レベルの記事のほうが、反響は10倍あったりしますね。個人間の生産格差が5倍とか開いてしまうので、成果を出せる優秀な人に入社してもらいたいというのがありました。


僕が思うに、例えば営業職であれば、商談ができる時間の上限や、移動時間もあるので、特殊な例外を除けば、個人間の格差は3倍くらいまでしかつかないと思うんです。でもコンテンツを作る仕事って、5倍とか10倍の生産の格差が開いてしまう特徴があるんですよね。その根底にあるのは、ピーター・ドラッカーの言う知識社会における知識労働の特性だと思います。それを考えたときに、もっともっと成果を上げられる個人を会社に入れたいし、成果を上げられる組織を作りたいと思ったんです。そうなったとき、採用はすごく大事だなとなりまして、採用の強化に至ります。



■採用はブランディングと広報が重要

採用はブランディングと広報が重要 株式会社エスタイル 代表取締役 宮原 智将 氏 (同社オフィス内にて)


――採用の状況はそれまでどうでしたか


実は、弊社ではそれまで、新卒採用は良い人材が採用できていて困っていなかったんですが、経験者を採用する中途採用はあまりうまくいっていなかったんですね。それで提示する給料を上げたりもしたのですが、思ったよりインパクトがないんです。


そこで、周りを見渡して、採用がうまくいっている会社を観察すると、どこも非常にユニークな会社の特徴が伝わるようにしていて、広報活動も熱心な会社が多かったんです。やはり採用はブランディングと広報がすごく大事だと改めて思いました。若手の社員を見ていても、どうすると心に響くかと考えたときに、居心地の良いオフィス、素敵なオフィスというのはインパクトがあると感じていました。


そういった経緯から、採用に力を入れようとなりまして、3つ方向性を決めました。1つはオフィスの物件そのものを移転するということ。2つ目は、オフィスの内装をしっかりする。そして3つ目はブランディングの観点からオフィスやコーポレートロゴなどを見直すことです。


このオフィス移転の狙いについてまとめると、採用強化が第1にあり、次にオフィスを良くすることと、企業ブランディング(CI)があり、それらによって、非常に生産性の高い会社にするということが狙いでした。


――中途採用もオフィスはカギになりますか?


中途採用は転職エージェント経由なのですが、ある程度、認知度を高めないと、そもそも母集団を形成できないというのがありまして、イメージがいいだけでも意味がないので、オフィスの半分はラウンジスぺースにして多くの人に来てもらって、例えば勉強会とかセミナーに利用してもらって、まずは知ってもらうということを意識しています。


――ラウンジスペースで開かれている勉強会について教えてください


勉強会は、私が新規事業に関連してやっています。仮想通貨周りの新規事業を進めているんですが、これって今非常に勉強したいテーマがすごくいっぱいあるんですね。月1回くらいのペースでゲストをお呼びして、知り合いを中心に30名ほどで、ここで夜7時から軽食とお酒を出しながら勉強会をしています。


――勉強会から採用につながったりしていますか?


まだ始めたところなので、入社までつながってないのですが、新規事業のビジネスへは勉強会に参加された方の中から協力いただく方も出たり、参加する側も開催する側もお互いにいい影響が出ていますね。これから、社外の人をいろんなテーマで集めるイベントをしていきたいと思っています。



■オフィスに広い社内ラウンジを設けたメリット

オフィスに広い社内ラウンジを設けたメリット 株式会社エスタイル 代表取締役 宮原 智将 氏 (同社オフィス内にて)


――オフィスの社内ラウンジスペースをとても活用されているとのことですが


移転してきて、採用以外という点で、副次的な利用価値として出て来たのが、社内ラウンジです。ここ新しいオフィスでの働き方って、私自身にも社員のみんなにとっても、新しくていいかもしれないと思っています。


移転前のオフィスは30坪に15人くらいで働いていたので結構ギュウギュウだったんです。私は、前のオフィスだと、考え事をしたいとき近所のカフェに行っていました。カフェに行くことで視点も変わりますし。その当時から、自分のオフィスにいる時よりも、カフェにいる時間とか、自宅だったり、歩いてたりという、ふとした瞬間にいいアイデアが浮かんで、実はそういう時間のほうが生産性高いという意識はありました。それで、ここに移転してきて、オフィス内にラウンジスペースがあって、ソファに座ったりできるような、ゆとりある空間ができてから、私自身がカフェに行かなくなったんですよ。カフェに行くよりも、オフィスのソファのほうが考え事が進むようになったんです。


それは社員のみんなにも言えるみたいで、移転してきてからみんなの働き方を見ていると、朝の時間は自席に座ってますよね。それが、昼とか夕方になるとラウンジのカウンター席に座る人とか、ソファに座る人が、結構でてくるんですよ。例えると、まるでみんなが猫みたいな感じです。猫って家の中で居心地の良い場所を知っていて、日の当たる時間によって居場所を変えたりするじゃないですか。オフィスの中でも同じで、ずっと座っていたので今度は立って仕事がしたいのでカウンター席に来るとか、広いところで仕事をしたくなったので長テーブル席に来るとか、ソファに座って気分転換したりという風に、みんながそれぞれオフィス内の居心地の良い場所を知っていて、自分の居場所が作れているように思います。私も含めて仕事での気分転換が凄く大事で、それが生産性に貢献しているように思います。



≪同社 社内ラウンジスペース≫

オフィス内に、まるでお店のような執務スペースと同じくらいの広さのラウンジスペースが設けられている。

オフィス内に、まるでお店のような執務スペースと同じくらいの広さのラウンジスペースが設けられている。



■移転してから会話がすごい増えた

移転してから会話がすごい増えた 株式会社エスタイル 代表取締役 宮原 智将 氏 (同社オフィス内にて)


――オフィスを移転してここは良くなったということはありますか


移転してから、会話がすごい増えました。ちょっとフロア内を見ていただくと、今あんな風に話してますけども(社員の方が執務エリアのあちこちで話している)、執務空間で会話が増えたんですね。前のオフィスだと天井が低かったせいか、誰かと誰かが話すと全員に聞こえちゃうんですよ。なので結構しゃべりたいときにヒソヒソ話すとか、うるさいから長く話すんだったら会議室行くみたいにしていたんですよ。ここに来てから、普通に隣の席同士でしゃべっても他の人も苦痛にならないし、本人たちも気軽に話せるんですね。理由はちょっと分からないですが、天井高の高さが良い具合に機能しているせいかもしれません。


――働き方で大事にしていることは何ですか?


根底にあるのは、仕事の時間を楽しい時間にしたいということなんです。
前提には、先ほどお話した知識社会における知識労働で格差が大きく開いてしまうということがあると思っています。ベルトコンベアラインで大量生産している場合はベルトコンベアの速度で生産の速度はコントロールできるのですが、知識労働では、同じようにできないじゃないですか。結局は本人の頭の中のことなので、頭のモチベーションは管理できないと思っていて、リラックスして楽しくとか、集中しやすいとか、インセンティブ的なマネジメントしかできないと思うんですよ。仕事というのは頭の中でされていて、座っていることが仕事じゃないよ、ということですね。そういう意味で、居心地いいって大事だと思います。結局、働いているのが楽しい幸せというのが採用力につながるし、離職率の低下に繋がると思うんです。



■オフィスにいる時間が快適だったら

オフィスにいる時間が快適だったら 株式会社エスタイル 代表取締役 宮原 智将 氏 (同社オフィス内にて)


――このオフィスを作るときに意識したことはどういったところでしょう


オフィスにいる時間は、週40時間と少しです。1日8時間睡眠とすると、起きてる時間って16時間×7日間としても112時間くらいしかないので、オフィスにいる時間が起きている時間の大きな部分を占めているんですね。そのオフィスにいる時間が快適だったら、1週間が良い感じだと思うんですよ。


やっぱりオフィスに対する意識を社員の人も変えたほうが良くて、いろんなものを社員のみんなに早く提供したいというのがあるんです。spotifyで音楽を流していますが、音楽が編集でこんなに変わるんだということや、こうやってグリーンのある所で仕事をするとかですね。


オフィス全体をラウンジとしてイメージしていて、ここの開放的で気取らない空間というのは、私がバリで感じたものです。バリって気取らない国なんですね。そこにヨーロッパの人やオーストラリアの人が入って、現地の人とコラボレーションで素敵な空間を作っている。そこはすごくフュージョンな環境で、気取らないんだけど、おしゃれ、かっこいい、という。だからここもなるべく、うるさくないデザインで、高級なオフィスに行って緊張する感じが全然ないと思うんです。それでいて居心地がいいという。「Cozy (コージー: 居心地)」が大事だなと思っていて、それはオフィスの設計だけじゃなくて、ライフスタイル全般に世の中はそういう方向に向かっていると感じていて、そんなライフスタイルを私が社員のみんなに対して伝えている部分はあります。


もちろん、このオフィスがベストだとは思っていなくて、1つのスタイルなんですけども、経営者によって期待する近未来像が違うと思うんですよね。うちよりもサイバーな空間を求める人もいるし、ただ私はライフスタイルの根底にサーフィンというのがあるので、やっぱりサステナブルというか、自然とうまく調和するとか、そういうのがすごく好きなんですよね。


――オフィスに投資する意味を議論されたそうですが


一応、今うちは1日8時間労働という形でやっていますけども、いずれ、時間と空間から解放された働き方というのは出てくると思います。このオフィスを作る時にかなり議論したのは、ノマドの時代にオフィスに投資する意味があるのかと。今、働き方改革が進んでいますが、働き方改革をトコトン考えると、まずはオフィスをもっと良くしようということになるんですけど、さらに先になると、オフィスをなくそうという考えに至る。ただ、現時点では、チームで協調して動くことによる生産性が大きいので、まずはオフィスを良くしようという結論になりました。


――オフィス移転で大変だったところはありましたか


いや、ないですね。移転プロジェクトはすごく楽しかったです。
今回ラッキーだったのは各分野の一流の人たちと仕事ができたということですね。コーポレートブランディングはビーズアンドハニー株式会社、内装のコンセプトや設計は株式会社スピーク、実際の施工は株式会社シームレス、グリーンは装花デザイナーの関尚美さんにお願いしました。本当に一流の人たちに頼めてよかったなと思いました。


――新オフィスにして反響はいかがでしたか


社員のみんな、喜んでくれました。改めて女性は建物の内側が大好きで、大事と感じましたね。移転してからすごく笑顔が増えました。また、採用は思った以上に反響があって、中途採用で良いお声が掛かったりとかもあり、メディアのM&A案件も持ち込まれるようになりました。結構お金はかかりましたが、それは投資として、3年くらいで回収できればいいなと思っています。



■今後の事業展開について

今後の事業展開について 株式会社エスタイル 代表取締役 宮原 智将 氏 (同社オフィス内にて)


――今後の事業展開について教えてください


まず、バーティカルメディア事業は2つの広げる方向があります。1つはメディアの面を少し増やします。だからメディアの買収や新規メディアの立ち上げも行っています。主に女性の悩みをテーマにしたものが中心ですね。今後ダイエットのコンテンツにも力を入れていく予定です。もう1つは、いわゆる垂直統合の方向ですね。現在は、商品やサービスを自社メディアの中で紹介しているんですが、何らかの商品、サービスを我々がメーカーやサービスの提供主体として行うというのもあります。なかなか大変なので試行錯誤しながらになると思うんですが、メディアとサービスを一気通貫でできれば面白いと。メディアを起点としたECなどを構築したいと思っています。


社内には、映画「オーシャンズ11」のような形を目指すと言っています。社員が金太郎飴のように誰もが同じではなくて、お互いが違うスキルでそれぞれ一流のプレイヤーがチームを組んでいくイメージです。


――企業にとってオフィスの重要性について


会社の成長ステージに合わせたオフィスを選ぶということは結構大事だと思います。会社を成長させているときに、経営者の多くは初めての経験なので、会社としてある程度利益が出ているときに、オフィスを次のステージに上げるべきだと気づいていなくて機会ロスしている会社が結構あるのではないでしょうか?事業のステージに合わせて、オフィスのグレードを上げる。そんな両輪がうまく合う経営を弊社も目指していきたいと思います。




(インタビュー終わり)



インタビューを終えて、社内ラウンジスペースのバーカウンターにて撮影。

インタビューを終えて、社内ラウンジスペースのバーカウンターにて撮影。










取材先

株式会社エスタイルnewwindow


複数のバーティカルメディアを企画運営しているインターネットメディア企業。女性向けのコンテンツ企画に強み。





編集・文・撮影:アスクル「みんなの仕事場」運営事務局
取材日:2018年3月8日

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