(株式会社エスタイル 執務エリア)
前回、前々回と株式会社エスタイルのオフィスを紹介してきましたが、大変見どころの多いオフィスということもあり、今回は、取材者から見た同社のオフィスづくりの注目すべきポイントを7個に整理してお届けします。オフィス移転などオフィスづくりを考えている会社の方にはきっと参考にしていただける内容です!
【参考】前々回記事
「人々の好奇心を掻き立てるコンテンツを生み出す!バーティカルメディアを運営する株式会社エスタイルのオフィス(東京 原宿)に行ってきました(オフィス訪問[1])」、前々回記事「会社の成長に合わせてオフィスのステージを上げる~株式会社エスタイル 代表取締役 宮原 智将氏インタビュー~(オフィス訪問[2])」
「働き方をトコトン考えると、まずはオフィスをもっと良くしよう」と語る同社代表取締役 宮原 智将さんのコメントから窺えるように、新しい働き方を追求した結果がこちらのオフィスです。大規模オフィスではなくても、ここまで魅力的なオフィスが作れるという1つの実例ではないでしょうか。
それでは、取材者から見た、小さくてもオシャレで働きやすい同社のオフィスづくり 注目ポイント7個を順に見て行きましょう!
小さくてもオシャレで働きやすいオフィスにしたいときに意識したい7個のポイント
≪もくじ≫
[ポイント1] スケルトン天井にすることで天井高を上げて開放感を確保し、天井をキレイなホワイトカラーに仕上げて室内を明るく
[ポイント2] 採光性の良い大きな窓を最大限活かしてオフィスに外光を取り込み開放感をプラス
[ポイント3] ナチュラルカラーのデスク天板と床フローリングで温かみを感じさせるオフィスに
[ポイント4] 床を明るいフローリングにすることで清潔感を演出、デスクも足下スッキリ
[ポイント5] 随所に配置されたハンギンググリーンでうるおいと温かみをプラス
[ポイント6] 生産性が上がるよう気分転換して仕事したり、同僚とリラックスして話ができるラウンジスペースを用意
[ポイント 7] 各人のお気に入りの場所が作れるようラウンジスペース内にいろいろな座り場所を作る
以下、各ポイントを写真とともに解説していきます。
同社執務スペース
築年数の経ったオフィスビルでは、最新ビルに比べて、設計上どうしても天井高の低さが気になってしまうことがあります。通常のオフィスの天井は、コンクリートの躯体よりも少し低い位置に石膏ボードが吊り天井として設けられていて、そこに照明器具や空調設備、配管が入っているのですが、その天井をスケルトン化して、コンクリートの躯体を露出させることで天井高を稼ぐ方法があります。リノベーションオフィスでよく見かけるスケルトン天井です。
こちらのオフィスでは、天井のスケルトン化に加えて、スケルトン化した天井のコンクリート躯体部分や配管もホワイトに塗装することで光の反射率を上げています。そのおかげで直接照明だけでなく、間接照明も加わりソフトで明るいオフィスになっているのです。
もちろんスケルトン化も塗装も賃貸オフィスではビルオーナーの同意が必要となります。そのため、どのオフィスでもできるわけではないのですが、オフィスに開放感をもたらす魅力的なリノベーション手法の1つではないでしょうか。
また、リノベーションにより壁や柱はホワイトカラーの化粧板でカバーすることで継ぎ目を見えなくして、納まりの良い壁面に仕上げています。そうしたことも、清潔感あるスッキリとした雰囲気づくりに貢献しています。
加えて、執務スペースと隣のラウンジスペースの間は天井まで壁で遮るようにしているので、ラウンジスペースでの話し声が執務席側に届きにくい工夫がされています。天井高をスケルトン化で高くしていることとあいまって、ラウンジでの話し声があまり気兼ねいらない点もコミュニケーションの場としてラウンジスペースの設計では見逃せないポイントです。
写真は同社会議室で、ガラス窓越しに執務スペースが見える。
オフィス内は出来る限り窓からの外光が取り入れられるように作られています。例えばこちらの会議室ですが、会議室の執務スペース側に大きなガラスパネルを設置しているのも、会議室の窓からの外光を執務スペースに取り入れるため。光が最大限入るよう、あえて床から天井近くまでの高さの大きなガラスパネルを室内に設置しているところが象徴的です。執務席から外が見えることで開放感がプラスされています。
デスク天板と床を、ナチュラルカラーの木製にしています。
それにより、執務エリアで目に入る多くの部分が木になることで、温かみが感じられるオフィスになっています。
実は、執務デスクの天板の色と、オフィスフロアの床の色はオフィス内の明るさを左右する重要なポイントです。天井に設置された照明からの光は、デスク天板や床が受け止めて反射することで、室内に光を拡散させる効果があるためです。
デスク天板や床の光の反射率が高いとオフィス内は明るく感じ、反射率が低いと暗く感じます。ほかの色に比べてホワイトの反射率は最も高く、オフィスデスクに採用が多いのもそのためですが、こちらではナチュラルカラーにして若干反射率が下がる分、床を反射率の高い明るい色目のフローリングにすることでトータルで明るいオフィスにしています。一般的なオフィスでは、床をダークカラーのカーペット、デスク天板をホワイトにしていることが多いですので、そうしたオフィスよりずっと明るく感じるのです。
こちらのオフィスはとても清潔感がありますが、そのポイントはデスク足元の見通しの良さと明るいフローリング床にあります。
足下の見通し良いこちらのデスクは、デスクフレームがホワイトカラーのハの字脚のため足下がとてもスッキリしているところがポイントです。一般的なオフィスデスクは板状のパネル脚であることが多く、足下を囲うことでフロア全体での抜け感が良くないのです。
また、明るいフローリング床も清潔感の高さに貢献しています。一般的なオフィスでは、グレー系やダーク系のカーペットにすることで汚れが目立たなくなるようにしていることが多いのですが、それにより不潔感があるわけではないものの、人間の感覚は面白いもので、それによりすごく清潔感が感じられることもないのです。それに対して、白い床が汚れなく白いとき、とても清潔感を感じたりします。清潔感は、本来汚れの目立つものが、汚れのないキレイな状態であるときに感じられることが多いのです。
こちらのオフィスの見通し良い明るいフローリング床について見てみると、本来汚れや散らかりがあると目立つものであり、そこが散らかりなくスッキリとしていて、汚れが見えないことで、清潔感を感じられるオフィスになっているのだと思われます。この清潔感が感じられるオフィスは、特に女性にとっては重要なポイントかもしれません。一般的に男性より女性の方が清潔感に関しては敏感なためです。
こちらのオフィスには、あちこちに観葉植物が吊るされています。
オフィス内の壁や天井は明るさを確保するためホワイトカラーで統一されている中で、オフィスを見渡した時に目に入ってくる個性的なグリーンは、心地よいアクセントになっているのです。
オフィス内に執務エリアと同じくらいの広さのある社内ラウンジスペースが設置されています。
同社におけるラウンジスペースの重要性は、オフィス内でこれだけの広さのスペースを割いていることからも表されています。こちらでは、ランチや休憩に留まらず、くだけたコミュニケーション、仕事の打ち合わせ、1人集中して仕事をしたり、仕事の合間にリフレッシュしたり、夜にはセミナーや勉強会が開かれるなどなど。
ラウンジスペースは、単なる休憩スペースの域を超え、社内外の公式・非公式を含めたコミュニケーションの場であり、集中して仕事をするためリフレッシュするオアシスでもあり、執務デスクと対になる執務空間なのです。
ラウンジスペースのバーカウンター
現在、新鋭オフィスには広い社内ラウンジやカフェのようなスペースを設置することが増えています。それらの社内ラウンジ(カフェ)は、従来の社員食堂とはまったく異なる意図で作られています。
従来、社員食堂は、食事の自前インフラであり、オフィス周辺の飲食店が貧弱だった時代に従業員へ低廉で栄養十分な食事を供給する福利厚生のためのものでした。それに対して現在の社内ラウンジスペース(カフェ)の多くは、オフィス周囲に十分な数のカフェやレストランを含む飲食店がある中で作られるものです。もはや食事などのためのインフラではなく、コミュニケーションの場であり、リフレッシュして集中力を復活させクリエイティブな仕事をしてもらうための場所なのです。
画像提供: haru_natsu_kobo / PIXTA(ピクスタ) (※)
ITの進化によって、私たちの仕事は大きく変化しています。ますますマルチタスクであることを求められ、1日の間にいろいろな役割を果たしていく必要があります。また、市場を開拓したり、問題の解決ができるようなアイデアを求められ、集中力を発揮しなければいけない場面も増えてきました。
仕事がそうやって変わっていったとき、私たちの働き方も執務デスクに朝から夜までいることから、仕事に合わせて働く場所を変え、執務デスクとは違った場所でリフレッシュして集中力を復活させて、短時間で効率よく働く姿にシフトしつつあります。そうした働き方を受け止める場所が、執務空間内に作られる社内ラウンジスペース(カフェ)になってきているのです。
執務デスクでは、集中して仕事をすることが中心であるのに対して、社内ラウンジスペース(カフェ)では、リラックス、リフレッシュ、コミュニケーション、集中など、今の働く人に必要になってきたモードを担当しています。
特に、コミュニケーションについては、フレキシブルに広く使えるよう設計することで、セミナーやイベントなどを開催できるようにすることで、ラウンジスペースは社内外をつなぐコミュニケーションスペースとしても機能するよう作られています。
社内ラウンジスペース(カフェ)の役割をまとめると以下のようになります。
• 執務席から離れて休憩する場所 [リラックス]
• 気分を変えて仕事ができる場所 [リフレッシュ]
• 1人集中して仕事をする場所 [集中]
• すぐ打ち合わせができる場所 [コミュニケーション]
• リラックスしてくだけた話ができる場所 [コミュニケーション]
• セミナーなどでみんなが集まる場所 [コミュニケーション]
同社ラウンジスペース全景
ラウンジスペースは各人が自由に使えます。休憩してリフレッシュする場所として使えます。カウンターテーブルでコーヒーを飲んでも良いし、ビーズソファに横になってもOKです。こちらでリフレッシュして、またデスクに戻って集中することができます。ほかには気分を変えて仕事をする場所でもあります。
ラウンジスペース内のバーカウンター
カウンタースツールに腰かけて集中して仕事をしてもよいし、カウンターテーブルにノートパソコンを置いて短時間の立ちミーティングをする使い方もOK。夜は社内バーとしてコミュニケーションの場所にも変身。
ソファ席
ラフな雰囲気の大きいソファくだけた打ち合わせもよく、ごろりとリラックスしてもOK。
ビーズソファ席
ビーズソファで思い思いの姿勢でリラックス。
大きなテーブル席
大きなテーブル席では、ミーティングのために集まったり、各人が座ってそれぞれの仕事に集中したり使い方は自由。
テーブル席のチェアは、カフェ定番のものです。曲木のチェアや、ウインザーチェアなど変化をつけることで、画一性をなくして、各人の気に入ったチェアを選んでもらえる仕掛けになっています。
ラウンジスペースは、カッチリした印象の執務エリアに対して、リラックスしたり、リフレッシュしたりする場所です。そのため、あえてパレット風の木材でソファを作ったり、武骨なブロックによるバーカウンターなど倉庫感ある雰囲気に仕上げたりなど、気取らないラフな雰囲気づくりで、サード・プレイス的な空間づくりを行っています。こちらを画一的で機能的に作ってしまうと執務席の延長になってしまうので、そうならないようにデザイン面で工夫が凝らされているんですね。
以上、取材者から見た7個のポイントを見てきましたが、いかがでしたか。
素敵な執務スペースには様々な工夫が凝らされています。オフィスを作る時に取りいれたいポイントが見つかったのではないでしょうか。
複数のバーティカルメディアを企画運営しているインターネットメディア企業。女性向けのコンテンツ企画に強み。
編集・文・撮影:アスクル「みんなの仕事場」運営事務局 (※印の画像を除く)
取材日:2018年3月8日
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