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急成長中だからこそお互いが手を伸ばせば届くくらいの距離で仕事をしたい、執務用に100cm幅の少し狭めのデスク幅を選択 (ピクスタ株式会社オフィス訪問[2])

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机を購入するにあたり、何センチ幅(何ミリ幅)のデスクを導入するかというのは悩ましい問題だ


一般的には広ければ快適といえる。とはいえ、社員全員が広いデスクを使うことになったら限られたオフィス空間の中で、デスクがあふれかえってしまう。また、机上面の広さは快適さにつながるとはいえ、得てして資料を積み重ねて物置化するのがオチだ。


執務作業に必要な幅(と奥行)というものがあって、机上スペースを絞りすぎると作業がはかどらず作業効率が悪化する。しかし、広さに余裕がある机上面は物置スペースになりやすく、その空間がもったいない


つまり、オフィスには業務特性に応じて、必要にして十分な広さの選択が必要なのだ。必要十分なスペースであれば、机上は物置化せず、作業が終われば片づけ、執務に十分なスペースがある環境になる。


今回取材した、ピクスタ株式会社では、執務用に100cm幅の少し狭めのデスク幅を選択されている。どのようにオフィス作りを考えて移転を進められたのかについて、ピクスタ株式会社 コーポレート本部戦略人事部部長 秋岡 和寿さん から伺った。



■社内外の垣根、組織間の垣根をできる限り低くしたい

.オフィスを移転される際の方針はどういったものだったのですか。


当社は「インターネットでフラットな世界をつくる」というのが理念にありまして、オフィス環境も組織のあり方もこの理念にもとづいて「オープンでフラット」を常々最上位のコンセプトとして掲げています。


社内外の垣根、組織間の垣根をできる限り低くして、かつ、自然体でカジュアルな感じを実現したいと考えています。そういう場を作っていきたい、ということを常にベースとして持っているんです。今回のオフィス移転にあたっても、それが念頭にありました。


(ピクスタ株式会社 コーポレート本部戦略人事部部長 秋岡 和寿さん)



■オープンな象徴としてのカフェラウンジ

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エントランスから全面ガラス越しにカフェラウンジが一望できる


.オフィスに入ったところから印象的な空間が広がります。


「オープンでフラット」というとかなり抽象度が高いので、イメージしづらいかもしれませんが、その象徴として、オフィスのエントランスがあります。


エントランスで、お客様が入っていらっしゃると目の前が全面ガラス張りで、社内のカフェラウンジが一望して見渡せるようにしました。ガラス1枚を隔てるだけで、そこは社内スペースなんですね。視覚的に完全にオープンになっています。


また、このカフェラウンジも2面が窓に面していて、方向的にも建物に遮られず明かりが良く入る、すごく抜け感がある一画だったんですね。そこに「オープンでフラット」な象徴としてカフェラウンジ(「3号カフェ」)を作りました。


(同)



■ゆるやかな凝集性と開放感のバランス

(インタビュー続き)


何回かオフィス移転する中で、コミュニケーションについて考えてきましたが、「ゆるやかな凝集性と開放感のバランス」だと思っています。私自身が人事や組織づくりを行う上でのテーマでもありますが、このバランスを組織やオフィス作りにおいてどうやって取っていくかが大事だと思っています。


「ゆるやかな凝集性」とは、当社はネットベンチャー企業ということもあって、社内でもオンライン上のコミュニケーションがすごく多いんです。そうすると、社員同士の物理的な距離は近くても、ちょっと人の温度を感じにくく、遠くに感じてしまうことがあったりします。


ネットというのは、得てして分散する方向に進んでいくので、分散させない凝集性やかたまりを社内にいかに作るかというのが大事なんじゃないかと思っています。それでオフィス内に「ゆるやかな凝集性」のある場所を作って、そこから自然にコミュニケーションが生まれることを意図しています。


(同)



■100cm幅のデスクを採用してゆるやかな凝集性を持たせる

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.執務デスクの選び方の基準について教えてください。


執務スペースについては、個人としてのパーソナルスペースはきちんと確保しながらも、ちょっと距離感が近い場所になるようにしています。個人として狭すぎて不快な状態は絶対に良くないので、そうはならないようにしていますが、会社としてゆるやかな凝集性を求める場所として執務スペースを設計しました。それが100cm幅のデスクで島を作るという形に落ち着きました。


この距離感だと、机に座ったときに、何となく島にいるメンバーがぱっと視野に入る距離なんです。そうすると、五感でメンバーの様子、温度感や表情もわかりやすくなるし、距離が近いぶん話しかけやすくなるなどのメリットが生まれてきます。


また、この100cm幅のデスクを採用できた背景には、当社が皆、基本的にノートPCで仕事をしていて、かつ、クラウド上で作業するワークスタイルがあります。そのため、ほぼペーパーレスで、小物類もそれほど必要としてない状況がありました。業種によってはもう少し広いほうがいい場合もあるかもしれませんが、当社の場合は、100cm幅で無理なく仕事ができます


私物はそれぞれ個人のロッカーに入れるルールにしています。デスクは固定席ですが、机上にはあまり余計なものは置かないようにしています。全体的にシンプルで統一感をもたせることで、執務エリアも「オープンでフラット」という印象を感じられるようにしました。


(同)



■開放感ある「3号カフェ」(カフェラウンジ)で仕事もできる

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カフェラウンジ内のテーブル席


.「3号カフェ」(カフェラウンジ)は執務エリアと対照的ですね。


執務スペースはゆるやかな凝集性を持たせる一方で、「3号カフェ」と名付けているカフェラウンジのほうは、相当ゆったりした作りにしています。場合によっては2mくらいの距離で仕事ができるようになっています。


こうした、ゆるやかな凝集性のある執務スペースと、対照的な開放的な場所を分けて、個人が選択できる状況を作っていることが大事だと思っています。


(同)



■社内動線も凝集性を意識して設計

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社員通用口付近にある休憩スペース。後ろの柱には勤怠システムがあるので社員は1日最低2回は近くを通る。


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3号カフェから執務スペースを通る動線。


.社内の動線もかなり意識的に設計されたと伺いました。


オフィス内にゆるやかな凝集性のある場所を作ると考えたときに、デスクのあり方もそうですが、執務フロア内もある程度動線を重視しました。自然に話せる場を置いておくとか、動線の中でちょっと話せる仕掛けにしています。


執務フロアへ社員が出入りする主な入口は基本的に1か所に絞っていて、そこが社内動線の起点になるようにしています。付近には、人を引き寄せるマグネットスペースになるよう、コーヒーなどを入れるスペースや冷蔵庫、自販機を置いて、仕事をちょっと離れたときに立ち寄る休憩スペースにしています。そこで、オフィスを出入りする人と会う確率が上がるようにしたり、近くに、わざとコピー機も置いているので、コピーついでに立ち話ができるように考えて配置してあります。


執務スペース内は、3号カフェから執務スペース奥まで動線1本でつながるようになっているんですが、出入り口との動線と交差するところに、スタンディングテーブルや、ペアプログラミングブースを置いています。


基本的には、この2本の大動脈となる動線に、みんながふらっと立ち寄る場所を作っています。


(同)



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オフィスの中央付近、執務スペース内の動線が交わるところに、ミーティングエリアになっている。パーソナルロッカーももう一つの動線沿いに配置されている。


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スタンディングテーブル。プログラマーの方が気分転換に立って仕事をしたり、短時間の立ちミーティングに使われる。


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ペアプログラミングシート。
プログラマーが二人で作業を進められる。


■席替えを時々行って組織に揺らぎをつくる

.席替えも定期的にされるとか?


ネットベンチャーということもあって、ビジネス環境が変わりやすく組織変更が多いという側面もありますが、組織づくりにおいても、一つの部署、場所など、同じところに人が固定的にいると、偏ってしまう傾向があると考えています。一定スパンで、組織に揺らぎを作り続けることが大事かなと思っています。


それで席替えをよくするんです。組織変更の度に席替えをしていますが、なくてもたまに、こっちとこっちを入れ替えて、と気軽に実施しています。


やり方としては、全員のスケジュールに、金曜日の夕方五時くらいに入れておいて、「五時引っ越しするよ、いっせーのーでー」とガサガサガサと一気に片づけてそのままノートPC動かして引っ越しをする。デスクの島はそのままで、中の人とモノを持って動く。島の中の席は各部署に任せています。


(同)




■取材を終えて

今回、ピクスタ株式会社 コーポレート本部戦略人事部部長 秋岡 和寿さんから、オフィス作りに込められた想いや今までの経緯を伺うと、そこに企業理念や業界文化を踏まえてより良い働く場を作ろうという強い意志が感じられる。


100cm幅のデスクを選択した背景には、執務スペースに「ゆるやかな凝集性」を作るためであり、そこで自然な社内コミュニケーションが発生することを意識したオフィス設計がなされていた。


他方、執務スペースにある程度の密度で集められることで仕事時間が窮屈な時間にならないよう、対照的な「開放感」あるオフィスとして、社員が自由に使える広々としたカフェラウンジを用意するなど、社員が選べる自由がきちんと確保されていて、それが魅力的なオフィス作りに繋がっている。


まさに企業理念に基づいた「オープンでフラットな世界」が表現されているのだ。スタンディングテーブルやペアプログラミングシートの導入も、各部門からヒアリングして要望があって導入されたとのこと。オフィス作りは一方的に設計するものではなく、社員からのフィードバックを受けて、居心地がよく、コミュニケーションが生まれ、生産性が上がるスペースに成長していくものだと実感したオフィス取材であった。



《 まとめ 》急成長中だからこそお互いが手を伸ばせば届くくらいの距離で仕事をしたい


  • 「ゆるやかな凝集性と開放感のバランス」を取る

  • オフィス内に「ゆるやかな凝集性」のある場所を作って、そこから自然にコミュニケーションが生まれる

  • 個人としてのパーソナルスペースはきちんと確保しながらも、ちょっと距離感が近い場所になるように執務スペースを設計

  • 机に座ったときに、何となく島にいるメンバーがぱっと視野に入る距離にすることで、五感でメンバーの様子、温度感や表情もわかりやすくなり、距離が近いぶん話しかけやすくなるなどのメリットが生まれる

  • カフェラウンジのほうは、相当ゆったりした作りにしていて、場合によっては2mくらいの距離で仕事ができるように

  • ゆるやかな凝集性のある執務スペースと、対照的な開放的な場所を分けて、個人が選択できる状況作っていることが大事

  • 執務フロア内もある程度動線を重視していて、オフィス内の動線の中で自然に話す場を置いておく

  • 大動脈にみんながふらっと立ち寄る場所を作る

  • 席替えを時々行って組織に揺らぎをつくる







取材先

ピクスタ株式会社

写真やイラスト、動画といったデジタル素材のオンラインマーケットプレイス「PIXTA(ピクスタ)」の運営をはじめとして、出張撮影マッチングサービス「fotowa(フォトワ)」を展開するなど、「インターネットでフラットな世界をつくる」ことを企業理念として躍進中のインターネットカンパニー。2015年9月東京証券取引所マザーズ上場。





編集・文・撮影:アスクル「みんなの仕事場」運営事務局 (※印の写真を除く)
取材日:2017年3月14日




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