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3か月ごとの『席替え』で事業別レイアウトと職能別レイアウトを切り替えるアイデアがすごい (株式会社ストライプインターナショナル オフィス訪問[2])

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(写真は株式会社ストライプインターナショナルの執務エリア)




■ストライプインターナショナルの3か月ごとの事業別⇔職能別席替え

アース ミュージック&エコロジー、KOEなどで知られるファッションブランドを展開する株式会社ストライプインターナショナルでは、本部オフィス内で、3か月ごとに事業別と職能別で席替えを行う制度を導入している。


組織体制自体は、事業別組織を採用しており、アース ミュージック&エコロジー事業部など、ブランドごとに編成されている。事業部の人員は小さな事業部で3名という小所帯から、大きな事業部でも30名ほどだ。


席替えの制度は、各期の始めの3か月は、事業部ごとに島で集まる事業別のレイアウトを取り、次の3か月は、職能別ごとに島で集まるレイアウトとし、以降、それを繰り返している(下図)。

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なるほど、これは事業別組織の比較的大きな欠点の一つである、職能ごとにノウハウが分散してスキルを上げづらいということに対して、席替えという単純な方法でありながら、効果的な解決のアイデアに思われる。3か月ごとに事業部単位と職能別単位で座席替えを行うことで、事業別組織のデメリットの一つを解消できるということなのだ。


この制度を主導した、同社取締役兼CHO 人事本部長 神田 充教さんに話を伺った。



■組織は放っておくと縦割り化していく。何らかの形でそれを崩す仕組みが必要

.こうした事業別、職能別の席替えはユニークな制度と思いますが、導入のきっかけについて教えてください。


きっかけは、2014年6月のオフィス移転ですね。
移転前は、執務エリアが3フロアだったのでコミュニケーション上に課題がありました。移転してきて1フロアで働くことができるようになりました。しかし、1フロアになったからといって、コミュニケーションが活性化するわけでもなく、組織は放っておくと縦割り化していくのは良くある話なので、何らかの形で、それを崩す仕組みが必要だなあと思いました。


よくあるのは、フリーアドレス化なんですが、結構固定化するという話があるじゃないですか。フリーアドレス化だと、たぶんそうなるだろうなと思いまして、それなら、座席に何か意味合いを持たせたいと思いまして。事業部別、職能別と、ある程度共通点あるグループでくくったほうがいいかなと思って導入しました。


(同社取締役兼CHO 人事本部長 神田 充教さん)



■インフォーマルなコミュニケーションが生まれやすいことと、学びの機会になるということ

.この席替えのメリットについて教えてください。


二つあります。一つは、放っておいてもお互いにしゃべるようになるということ。インフォーマルなコミュニケーションが生まれやすいんです。二つ目は、学びの機会になるということ


そもそも、同じような業務をしているのであれば、基本的には事業部を超えても同じような業務のやり方のはずなんですが、実際は違うということが、話すうちに勝手に見つかって効率化されていきます。お互いに、こっちのほうがよかったんだと学ぶ機会になって、オペレーションが効率化されるというメリットですね。

(同)


.導入に当たって、周りと話すようにとか、ルールを定めたことはありますか?


ルールは特に定めてないです。皆に任せています。導入の際に、先ほどのインフォーマルなコミュニケーションが生まれることと、学びの機会であることなどの、席替えの狙いを伝えているだけです。


平均年齢は30歳くらい、女性の方が多いということもあって、コミュニケーションは女性の方が上手なので、環境を整えるだけで、放っておいても部署を超えたコミュニケーションが生まれやすい環境になっているかもしれません。

(同)


.席替えのデメリットはありましたか?


導入の最初は、上司から管理がしづらいという意見がありました。それは、上司が自分から歩き回れば済みます。もし集まって話をする必要があれば、自分が集めれば済みますからね。それも気軽にできます。

(同)


.座席は人事本部で決めているのですか?


事業部や職能ごとのエリアは人事本部で決めますが、エリアの中の座席は事業別なら事業部長、職能別ならリーダーの人に決めてもらっています。例えば、ブランドマネージャー、マーチャンダイザー、企画バイヤー、のエリアはここ、と島は決めて、エリア内の座席は、職能別ならその中でリーダーを決めてその人に席を決めてもらっています。企画バイヤーであればその中で社歴が長かったり、職能の高い人がリーダーになって席を決めます。また、席替えとなるエリアも毎回変わります。管理部門は業務上、動かせないので固定していますが、それ以外の部門は3か月ごとの席替えをしています。

(同)



■事業別組織か職能別組織か

というように、同社ではとてもユニークな制度を行っている。


そこで、事業別組織と、職能別組織について、改めてその意義とメリット・デメリットを振り返ってみたい(*1)


*1) ここでは「事業別組織」については、一般的に「事業部制組織」とほぼ同義で用いている。また、「職能別組織」については、「機能別組織」と言われることもあり、ここではほぼ同義で用いている。


企業がベンチャーとしてスタートし、その後事業に成功し、大企業へ成長していく際に、どのような組織形態を取るのが良いかという典型的な問題がある。


企業の組織構造は、戦略や環境と密接に関係がある。それを明らかにしたのは、経営学の古典である「組織は戦略に従う」(*2)だ。そこでは、20世紀に初めてアメリカで生まれた、デュポンやゼネラルモーターズのような巨大企業の戦略と組織の変遷が詳細に分析されている。


*2)「組織は戦略に従う」アルフレッド D. チャンドラー, Jr著 有賀裕子 訳, 2004, ダイヤモンド社 (原著の初版は1962年)


一般に、企業がある程度の規模になるまでは、製造部門、販売部門、会計部門等が、社長の配下に連なる職能別組織を取ることが多い。経営者である社長がすべての経営判断を行うための組織形態だ。例えるならば、各部門が経営者の手足となって経営者のパワーを倍化させるアシストとして機能する。

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しかしながら、さらに事業が成長し、複数の製品ラインや販売地域を持つように多角化すると、この組織形態では経営者が各事業の細かな実務判断まで行う必要があり、経営者に経営判断が集中しすぎて成長のボトルネックとなってしまう。そのため、事業判断の分業の必要性が出てくる。そこでこの段階では、事業別組織が構築されることが多い。販売地域や製品ごとに利益計算を行える単位で事業部を作り、事業部長が、担当事業の利益責任を負って、実務判断を行う責任分担が行われる。

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事業別組織は、利益計算ができる単位のため責任が明確であり、小組織化による小回りが利くメリットがある。他方、事業部間の競合や、調達などの無駄、事業部間の足並みの乱れなどが生まれるデメリットがある


前述の「組織は戦略に従う」によると、1920年代のゼネラルモーターズでもそうした問題は表面化し、各事業の自律性を保持しながら、中央集権的なコントロールを行うための事業部間の調整を担う組織作りで危機を回避した様が描かれている。


その後、経営史的にはマトリックス組織が登場したりするのだが、ここでは一般的に企業が成長するときに、職能別組織から事業別組織に移行するメリットとデメリットについて考えたい。


事業別組織のメリットは先ほど述べたとおり、責任会計単位による小組織化による小回りが利くということだ。


それに対して、職能別組織にもメリットがある。例えば、生産管理部門、調達部門、マーケティング部門など、同じ職能ごとにチームで固まっているため、各職能単位のノウハウが共有され部門ごとに専門性を高めることができる。他方、事業別組織では、各職能が各事業別部門に少人数で散らばっているため、ノウハウ共有が進みにくい。各職能単位での生産性を上げるには、職能別組織にメリットがあるということなのだ(*3)


*3) また、事業自体が成長途上でマーケットが大きく変化している場合、当初の事業部単位の分割が市場に対してや企業戦略上適切でなくなる可能性があり、事業部体制の見直しは必要になることが多い。その見直しを行うための経営会議は事業部長という執行役の上に、必要になる。 つまり、職能別組織、事業別組織のメリット・デメリットの議論は多岐に渡るため、ここでは事業別組織の典型的なデメリットの一つである、職能単位でのノウハウ共有が進みにくいことについてのみ論じている。



■「コミュニケーション」の問題

この職能単位でのノウハウの共有は、現在の自分の仕事でうまく行ったやり方を同じ職能の同僚に共有し、反対に同僚の行っている良いやり方を自分に取り入れていくなど、こうしたコミュニケーションを通じて進んでいくのが通常だ。また、先輩が後輩の疑問に答えて、レクチャーして伝えていくというのもあるだろう。つまりは、「コミュニケーション」の問題が大きいとも言える(*4)


*4)もちろん、厳密には共有の動機づけの問題などもあるのだが、動機づけの問題をクリアできれば、やはり「コミュニケーション」の問題と言えるので、ここでは単純化している。



■3か月単位の事業別と職能別の席替え

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そこで先ほどの同社の事例に戻ると、事業別組織と職能別組織のそれぞれのメリット・デメリットを見た上で、組織変更ではなくて、3か月ごとの席替えによって、職能別組織の利点の一つである、ノウハウが共有され職能での専門性が高まるメリットが得られる、ということになる。



一つは、放っておいてもお互いにしゃべるようになるということ。インフォーマルなコミュニケーションが生まれやすいんです。二つ目は、学びの機会になるということ。


(同社取締役兼CHO 人事本部長 神田 充教さん)


というように、何気ない「席替え」ながら、実はスゴイというのがこの仕掛けだ。



■偶発的コミュニケーション発生の設計について

昨今、「コミュニケーション」が生まれるようにするオフィス作りというのが、どこのオフィスでもテーマになっているように思われる。オフィスワークの生産性向上のカギが「コミュニケーション」と言える。



一貫して言えるのは、交流そのものに、我々が思うよりもはるかに大きな価値があるということである。(*5)


*5) 「仕事場の価値は多様な出会いにある」ベン・ウェイバー Ben Waber, ジェニファー・マグノルフィ Jennifer Magnolfi, グリッグ・リンゼー Greg Lindsay, 辻 仁子/訳, 『DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー』2015年3月号, p24, ダイヤモンド社



特に、「偶発的コミュニケーション」がカギとなるので、それをいかに発生させることができるかといった取り組みを多く見かける。だが、ただ「ランダム」な偶発的な出会いと、そこからのコミュニケーションの発生だけでは、オフィスの雰囲気は良くなるが、生産性向上には必ずしも寄与しないということが判明している(*5)


やはりそこには、偶発的と言えども、どういう偶発的なコミュニケーションが起きるようにするのか、計算することが本来は求められているはずだ。


若干言語的な矛盾を含むが、「望ましい偶発的なコミュニケーションが高確率で発生するような仕組み」を設計できるのがベストだ。ところが、やはり「偶発的」ということに引っ張られて、ランダムベースになってしまっているケースが多いように思われる。


そうした点で、同社の席替えの取り組みは、組織にとって望ましい偶発的コミュニケーションを設計して、高確率で発生するよう仕掛けている事例に思われる。



座席に何か意味合いを持たせたいと思いまして。事業部別、職能別と、ある程度共通点あるグループでくくったほうがいいかなと思って導入しました。

(同社取締役兼CHO 人事本部長 神田 充教さん)


取材者が話を伺った際に、こういう解決の仕方があったのか、と目からウロコが落ちた。これは、偶発的コミュニケーションの発生と、それの方向付ける仕掛けだ。組織にとって望ましい偶発的コミュニケーションを発生するようコントロールできるという事例なのだ。


偶発的コミュニケーションの発生と方向付けコントロールは、これからのオフィス作りにおけるコミュニケーション設計のカギとなるのではないだろうかと思った次第だ。







取材先

株式会社ストライプインターナショナルnewwindow

「earth music&ecology(アース ミュージックアンドエコロジー)」や「E hyphen world gallery(イーハイフンワールドギャラリー)など女性に人気のアパレルブランドを始めとして、現在ではライフスタイル事業も展開するファッションブランド企業。





編集・文・撮影:アスクル「みんなの仕事場」運営事務局
取材日:2017年3月28日




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