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ワークもライフも含めた「働きがい」が企業のパーパスになる[前編]

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コロナ禍によってテレワークが浸透し、リモート会議なども日常茶飯になった今、働く人たちの仕事に対する価値観が多様化している。そんな中で、今の仕事について、胸を張って「働きがいがある」と答えられる人はどのくらいいるだろうか。

今回は、「働きがいのある会社」ランキングを発表しているGreat Place to Work® Institute Japan(以下、GTPWジャパン)と、同ランキングで上位に評価されたアドビの2社を取材した。







■今、「働きがい」が注目される理由

SDGsが掲げる目標の第8に、「働きがいも経済成長も(Decent Work and Economic Growth)」がある。





国や地域によっては働きがいが軽視された仕事も少なからずあり、様々な問題を引き起こしており、これらの問題によって経済成長が著しく阻害されていると考えられている。つまり、「働きがい」をもつことは、働く人個々人の問題ではなく企業にとっても重要だということだ。


働きがいをもつには、会社との間に信頼関係が必要になる。「会社にもっと役立ちたい」「より活躍したい」と主体的に業務に取り組んだ結果、業務の生産性がアップし、会社の業績向上につながっていく効果をもたらす。


多くの従業員が働きがいを感じる会社には、次のようなメリットがあるとされている。


●定着率が向上する
会社が自分に期待していることが理解しやすいため、もっと貢献したいという気持ちが生まれやすく、仕事に対する満足感、組織への帰属意識も強くなり、人材が定着しやすい傾向がある。


●新しいアイデアが生まれやすくなる
自らの得意分野や強みを認識し、工夫しながら仕事を進め、新たなチャレンジも行うマインドがあるため、革新的なアイデアが生まれやすくなる。


●新しいビジネスや技術につながりやすくなる
仕事の楽しさや仕事に対する興味が目覚め、挑戦心や好奇心が増すため、新しいビジネスや技術が生まれやすい。


●人材育成につながる
社員の意欲やモチベーションが高く、より自律的・主体的な働き方をしているため社員の成長速度が速い。




■「働きがいのある会社」ランキングとは

働きがいとは働きやすさとやりがいである(GPTWホームページより ※



世界約100カ国のグローバル基準で「働きがい」に関する調査・分析を行い、ランキング結果を各国のメディアに発表している専門機関が、Great Place to Work®(GPTW)である。


ランキングの順位は従業員への意識調査と会社へのアンケート調査をベースとして決定されており、参加企業は全世界で10,000社を超えており、1,020万人を超える従業員が調査に参加している。1989以降、米国では毎年1月の「FORTUNE」誌で「働きがいのある会社」ランキングを発表しており、そこに名を連ねることが一流企業の証とされている。


2005年からは日本でも活動を始め(Great Place to Work® Institute Japan:GPTWジャパン=働きがいのある会社研究所)、認定・ランキングに参加した企業のアンケート結果を点数化し、一定レベルを超えた会社を、「働きがい認定企業」として月に1度発表。さらに認定企業のうち特に働きがいの水準が高い上位100社を「働きがいのある会社」ランキング ベスト100として年に一度発表している。女性ランキング、若手ランキング、地域優秀企業といったサブカテゴリーでの表彰も行っている。


そこで、GPTWジャパンを訪問し、代表の荒川陽子氏に、働き方改革やコロナ禍を経て、日本の会社における「働きがい」がどう変化しているかを伺った。




■オフィスの雰囲気も働きがいの要素

荒川陽子氏(GPTWジャパン 代表)

荒川陽子氏(GPTWジャパン 代表)



― リモートワークの機会が増えたことは、やりがいにも影響を与えているでしょうか。


荒川  在宅勤務が当たり前になったため、離れて働いている仲間のエンゲージメントを把握したい、高めたい、という重要性が大きくなりました。働きがいへの注目度が増したということです。


働きがいは、心理的安全性と密接に関わっています。たとえば、新しいメンバーが入ったときには対面のコミュニケーションが非常に重要です。仕事で話すだけならオンラインでも十分ですが、対面ならちょっとした雑談もできます。オンラインでは、2段階上の上司とか、採用面接で会った異なる部署の上司や役員など、日常的にかかわらない人とのコミュニケーションはよほど意図しない限り発生しません。しかし若い世代はそういう人たちに声をかけてもらい、安心感を得たいんです。


一時期、「ウォークアラウンドマネジメント」という言葉が流行りました。偉い人ほどウロウロして「最近どうだ」と声をかける。対面でなければそういうことはできません。


― なるほど。


荒川  今後はオフィスの使い方が変わっていくと思います。日常的に仕事をする場ではなく、関係性を作ったり、心理的安全性を担保したりするためにオフィスは必要です。イノベーションを生んだり、明確な目的を持った人が集まる場になっていくのではないでしょうか。


オフィスの雰囲気というのも、関係性構築に影響する要素です。ランキング上位の企業は、これなら来たくなるよね、と思うような大変おしゃれで素敵なオフィスばかりです。そんなオフィスなら、リラックスして同僚や上司に自然に声をかけたりできるようになるでしょう。


― 海外に比べて日本企業の「働きがい」はいかがでしょうか。


荒川  世界約100カ国グローバル共通の基準で測ると、日本は高いとは言えないですね。アジアでみるとランクインしている企業もありますが、全体で見ると高くない。自分自身の会社や事業に誇りを持てていないのです。「周囲の人が仕事に行くことを楽しみにしていますか、楽しく働くことができていますか」という問いに対して「よくわからない」という答えが多く、周囲への関心も低いことがうかがえます。


― なぜだと思われますか。


荒川  そもそも経営者の「働きがい」に対する意識が低いように思います。経営側がきちんと取り組みをしている会社では従業員の働きがいのレベルも高くなります。


ランクインしている企業とランクインしてない企業とのギャップとしては、「上司に信頼感を持てていない」ということです。上司が部下にきちんと期待を伝えていない。


また、ランキングでは、働きがいのある会社を作るためにどういう施策を打っているのかということを重視します。つまり会社の努力、投資が足りないんです。トップが全社員に発信する機会が定期的に設けられていなかったり、従業員が理念やビジョンに共感して心をひとつにするようなコミュニケーションツールなどの施策にお金をかけていなかったり。


― 企業規模による違いはあるのでしょうか?


荒川  「働きがいのある会社」ランキング ベスト100では従業員数で大規模・中規模・小規模と部門を分けていますが、大規模の会社(従業員1,000人以上)では、会社と現場の一人ひとりとの距離も大きく、多様な価値観の人がいるので、その違いを束ねて働きがいを高めることは難しいんです。そういう意味では規模が小さいほどスコアが高くなる傾向はあります。中規模(従業員100~999人)・小規模(従業員25~99人)の企業では従業員の価値観も似通っているため、方向性を示すと反応も早く、スコアが上がりやすくなります。大規模の企業では1ポイント上げるのも難しくなります。



中編へつづく





取材協力


株式会社働きがいのある会社研究所(Great Place to Work® Institute Japan)

コーポレートサイト/[外部リンク]
2022年版 日本における「働きがいのある会社」ランキング ベスト100[外部リンク]


アドビ株式会社(日本法人)[外部リンク]


編集・文・撮影:アスクル「みんなの仕事場」運営事務局 (※印の画像を除く)
取材日:2022年6月16日・7月29日

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