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ワークもライフも含めた「働きがい」が企業のパーパスになる[中編]

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前回、GPTWジャパンを訪問し、代表の荒川陽子氏に、働き方改革やコロナ禍を経て、日本の会社における「働きがい」がどう変化しているかを伺った続き、中編です。


前編はこちらから

「ワークもライフも含めた「働きがい」が企業のパーパスになる[前編]」








■働きがいを上げるさまざまな取り組み事例



― ランキング上位の会社の事例を教えてください。


荒川  例えば、株式会社ディスコ様は大規模の製造業です。製造業は総じてスコアが低い傾向があるのですが、この会社では常に高い働きがいをキープしています。その施策は、10年以上にわたって職場の信頼度合いを見える化し、改善する取り組みを地道に続けていることです。チーム対抗のような要素を入れ、ランキングやご褒美が出るような仕組みを作って、一人ひとりが主体的にコミットできる工夫をしており、常にランキング上位です。


中規模では、株式会社コンカー様が5年連続1位です。この会社は出張・経費管理クラウドベンダーのコンカー・テクノロジーズの日本法人ですが、10年以上前に現社長が社長に就任した際、「当社はアメリカ本社がプロダクト(モノ)を決める。カネも本社が融資してくれる。自分でコントロールできるのはヒトだけだ」とおっしゃって、人の力を最大化し、成長できる会社にするというビジョンを目標に掲げました。この会社には人事部だけでなく、働きがいの専属オフィサーが置かれています。これは大きな投資です。


働きがいは、何か一つ施策を講じたから上がるというものではありません。トップが本気で働きがいの高い会社を作ることが起点になります。


小規模部門の1位にランクした株式会社あつまる様の社長も、「一人ひとりが目指したい姿を実現するのが私の会社」とおっしゃっています。この会社では一人ひとりに、数年後にどうありたいかという「ビジョンシート」を書いてもらい、それをみんなの前でプレゼンして、対話をしながらお互いの目指す姿にコミットしていくそうです。


こうした取り組みを長く続けている企業の努力には敬意を表したいですね。



4つの職場タイプごとの対前年売上伸び率。働きやすさ×やりがいの高い職場が最も成長している。(GPTWホームページより ※) 



― コロナ禍によって、働きがいには変化があったでしょうか。


荒川  コロナの感染拡大当初、一部の会社ではいち早くテレワークの環境を整え、従業員の安全に配慮したコミュニケーションを取りました。このため、各社とも働きがいのスコアがグッと上がりました。自分の会社は良い会社だと認識した人が多かったのでしょう。


しかしその後、働きがいが下がった会社は、「周囲の人が仕事に行くのを楽しみにしていますか」という質問の回答が低下しています。


リモートワークで物理的な距離を置きながら働く環境にありながら、いかに互いの仕事を知りあい、仕事を楽しみだと感じあえる環境を作れるかということがポイントです。


リモートワークをしながら働きがいを高めている会社は、こうした環境下だからこそ、あらためて互いの仕事を知りあう場を作ったり、コミュニケーションの頻度を増やしたりして頑張っています。そういう違いがあります。




■働きがいのある会社とない会社、二極化が進む



― 「女性ランキング」に入っている会社では、女性活躍推進法の効果が出ていますか?


荒川  女性ランキングは、働きがい認定企業の中から特に女性の働きがいに優れた企業を企業規模ごとに上位5社選出したもので、この15社では、女性が生き生きと働いてもらうことの素晴らしさが理解されています。しかしながら、全体としては遅々として進んでいない印象で、今後に期待です。


データを分析すると、女性管理職の働きがいは全体に高い傾向にあります。女性は管理職につくのを躊躇するなどと言われますが、じつはそれこそがアンコンシャスバイアスで、実際に管理職になると男性管理職よりも高い働きがいを持ちます。男女ともにそうしたバイアスを取り払い、チャレンジさせることが重要だと思います。


若手中堅のころから男女関係なく期待をかけ、能力開発を行うことで女性の管理職登用を積極的に進めれば、働きがいが高まり、女性が活躍する会社が増える。これは理にかなった話ではないでしょうか。女性のための制度を設けたり研修を充実させたりするだけでは、「女性ばかり優遇されている」というあらぬ不満が出てしまう危険もありますから。


― 働きがいは、今後どうなっていくでしょうか?


荒川  まず働きがいの高い会社と低い会社という二極化が進むでしょう。「働きがいを高める」ことを経営戦略として欠かせないと考えている会社には、優秀な人材が集まります。そこで二極化していくわけですが、働きがいに関心のない企業も次第に働きがいの重要性に気づきはじめ、最終的にはほとんどの企業が働きがいを高めるようになるだろうと思います。


― 無関心だった企業は今後どうしていけばいいですか?


荒川  そうした企業は働きがいを高めるメリットを理解しておらず、業績を上げる手段のひとつでしかないという認識ですから、まずそこを根本的に変えないといけないでしょう。従業員だけでなく、すべてのステークホルダーの働きがいを高めることそのものが企業のパーパスになっていくことに気づけるかどうかですね。メリットがないからやらないという企業は、法律の整備など、国の政策などで必要性を認識できるようにしていくしかないでしょう。



「日本は自分の働きがいに無自覚な人が多いです。無理して働くのではなく、自分のキャリアにとって本当に良いと思う場所で働いてほしいですね」(荒川さん)

「日本は自分の働きがいに無自覚な人が多いです。無理して働くのではなく、自分のキャリアにとって本当に良いと思う場所で働いてほしいですね」(荒川さん)





働きがいを追求する同社の「働きがいのある会社ランキング」の参加企業は年々増加しているが、トップが変わると参加を辞退する企業もあるという。参加企業はトップが積極的に働きがい向上を求めているということだ。今後の参加企業推移にも注目したい。



後編へつづく





取材協力


株式会社働きがいのある会社研究所(Great Place to Work® Institute Japan)

コーポレートサイト/[外部リンク]
2022年版 日本における「働きがいのある会社」ランキング ベスト100[外部リンク]


アドビ株式会社(日本法人)[外部リンク]


編集・文・撮影:アスクル「みんなの仕事場」運営事務局 (※印の画像を除く)
取材日:2022年6月16日・7月29日

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