株式会社一休 新オフィスの巨大ラウンドテーブル(※)
オフィス移転で大変なのはやはり引越し。机まわりを整理し、文具やファイル、普段はロッカーに入れているものも段ボールに詰めて旧オフィスを退社し、移転先ではその段ボールを開梱したり、パソコンを設定したり、面倒な作業に追われます。高級ホテル・旅館の予約サイト『一休.com』などを運営する株式会社一休は、2022年12月に本社を千代田区紀尾井町に移転。なにかと落ち着かないはずの「新オフィス初日」は、ワクワクするお祭りの日になりました。
前編
・200人の社員が出社する1000坪のオフィス
・居抜きをいかしたサステナブルな移転コンセプト
・自由度の高い働き方ができるオフィス
後編
・コミュニケーションのためのこだわりラウンジ
・移転初日は仕事を一休み。全員参加のイベントを開催
・オフィス移転は「楽しいこと」。だから船出感が重要
一休さんの新オフィスは、東京メトロ「永田町駅」直結の東京ガーデンテラス紀尾井町・紀尾井タワー。10階でエレベーターの扉が開くと、目の前一面に広がっていたのは黒板に描かれたチョークアート。
今日オフィスをご案内してくださる植村弘子さん(執行役員 CHRO管理本部長)と大島葉月さん(管理本部 人事総務部)がお出迎えしてくれました。
左:植村弘子さん(執行役員 CHRO管理本部長)、右:大島葉月さん(管理本部 人事総務部)
― 今日はよろしくお願いします。素敵なチョークアートですね。
植村さん これは日本のチョークアート第一人者の方に、沖縄からお越しいただいて描いてもらったんですよ。私たちがバリューとして大切にしている「ユーザーファースト」という言葉や、新たなスタートにふさわしいメッセージを伝えています。チョークですからいつかは消えてしまうので、1年くらい過ぎたらまた新しいメッセージに変えていくつもりです。
お二人の案内で、さっそく中に入ってみることに。
執務エリア(※)
― かなり広いですね! エレベーターホールをぐるりと囲んでいる形ですね。
植村さん 全部で1000坪あるのでかなり広いです。前オフィスではフロアが分かれていたのですが、今は社員全員でワンフロアです。社員数は全国で350人いますが、本社に出社しているのはそのうち250人ほどです。今は席数に余裕があるように見えますが、今後ビジネスが進化して伸びていくと思っているので、あっという間に人が増えて、ちょうどいい広さになると予測しています。
― どのような部署があるのですか?
植村さん 大きく分けると、宿泊とレストラン、管理本部、カスタマーサービスという感じです。経営陣がそれぞれ各事業本部のトップで、メンバーとともに事業を進めています。
部署ごとの配置はすぐに決まりました。オフィス内は色分けされた柱でエリアが区切られていますが、部署の配置と各エリアのカラーには特に関連性を持たせていません。今回はそれよりも新しい働き方を重要ポイントと考えていますから、カルチャーのことを考えるより、プロフェッショナルとして働くためにどのようなオフィスにすべきかという視点で考えました。
イラストが得意なデザイナーが描いたオフィスの全体図。オフィスオープンの日に社員に配布した。色分けは前テナントのヤフーのまま(※)
グリーンのエリア。プロダクト開発のメンバーが働いている(フリーアドレス)
レッドエリア(写真奥)では、カスタマーサービスの部門が働く(固定席)
パープルのエリア。レストラン事業の営業チームやカスタマーサクセスチームが働いている(グループアドレス)
植村弘子さん(執行役員 CHRO管理本部長)
― 新オフィスのコンセプトは何でしょう?
植村さん オフィスのコンセプトは「ハイブリッド」「サステナビリティ」ですが、移転ということでは、やはり居抜きということが一番のポイントでした。前テナントは、ヤフー株式会社でした。当社は2016年にヤフーグループ(現Zホールディングスグループ)の傘下に入り、グループ間の相乗効果を活かして事業を展開しています。今回の移転ではヤフーが使っていた内装をほぼすべて引き継いでいます。ドアや壁の色、カーペットの色もそのままです。
参考:「居抜き」移転のメリットや注意点についてはこちらの記事もご覧ください。
オフィス移転の新たな選択肢「居抜きオフィス」の今と将来 ~「働き方改革」時代のオフィス移転入門[第8回]~
― 部署ごとのカラー分けなどもヤフー時代のままということですね。せっかくの新オフィスですから、一休のコーポレートカラーを使いたいエリアもあったのでは?
植村さん 「もったいない」と判断しました。せっかく居抜きで使えるのに、このサステナブルが重視される時代に。全部剥がしてカラーを変えるのはあまりにもったいない。とにかくスピードとサステナブルのことしか考えませんでした。旧オフィスに移転した際の経験からも、オフィス移転というのは、十分に使えるものも廃棄したりして、もったいないと思っていたんです。
会社によっては、コーポレートカラーをちゃんと出したいとか、いろいろカスタマイズしたいという考え方もあると思います。一休は創業からある程度の時期を経たこともあり、カルチャーやカラーも浸透しているので、そこにはこだわりすぎず、使えるものはすべて使いました。
― 廃棄せずに無駄にしない。まさにサステナブルですね。
植村さん ゴミ箱やハンガーラックも極力、旧オフィスから持ってきました。ヤフーが作り込んだスペースに加えていったので、バランスをとるのに苦心しましたが、良い感じにできていると思います。
大島葉月さん(管理本部 人事総務部)
― 今はリモートと在宅のハイブリッドワークですか?
植村さん コロナ禍をはさんで働き方が変わり、2022年4月からはテレワークも取り入れ、ハイブリッドな働き方になっています。出社頻度は職種や部署によって異なりますが、全員が最低「週1日」をオフィスに来る日にしています。
チームごとに働き方を決めているので、その出社頻度に一番合った形になるよう、座席はフリーアドレス、グループアドレス、固定席の3種類に分かれています。
たとえばグリーンのエリアはエンジニアのチームですが、そこはフリーアドレスです。週1回のみ出社するエンジニアもいるので、それにあわせた広さになっています。
イエローやパープルのエリアの営業部門は週3日以上出社する人が多いのでグループアドレスにしており、そのエリア内で自由に席を選んで仕事をしています。
ネイビーのエリアの管理本部は社員への対応もあり、週5日出社する人も多いため固定席です。
各部署の席以外に個室の集中ゾーンも多く作りました。
要望の高かった集中席(※)
― 個室ブースは増やしたのですか。
植村さん 会議室も個室ブースも増えました。利用率はかなり高いです。特に個室ブースは、エンジニアが集中して作業をしたり、営業メンバーがクライアントとオンラインミーティングをしたりと、使い勝手がよく好評です。
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このエリアは美しい夕日が映えるので、あえてスペースを広くあけているそう
個室以外でも、すぐに打ち合わせできるフリースペースを配置(※)
― 自由度の高いオフィス環境を目指したそうですが。
植村さん 基本的にどこで働いてくれてもかまわない、ということです。規則はなく、ラウンジエリアでもいいですし、こもりたいときは個室ブースでもいい。出社した日の気分、その日のチームの状態、どこで何をやるのがベストなのかということはお任せしています。
― 移転して効率が良くなったなどの効果は?
植村さん もともと効率的な働き方を心掛けていましたが、より快適なお気に入りの場所をそれぞれが見つけているようですね。
大島さん 会議室難民がいなくなったことも効率化につながっていると思います。以前は2フロアの一方にしか会議室がなく、わざわざフロア移動したのに会議室が埋まっていたりしたのですが、今は数が多くなりましたので。
こちらは社員を癒してくれるLOVOT。「カツオ」「ワカメ」という名前の2匹が在籍していて、ちゃんと社員証もつけている。「出社時の楽しみにしてもらえるように採用しました」(大島さん)。
※
ご案内の途中ですが、前編はこのへんで。
後編では、ラウンジスペースのこだわりや、説明会をかねた移転当日の全員参加のイベントや、移転プロジェクトの進め方について伺っていきます。
お楽しみに。
取材協力
1998年7月設立。高級ホテル・旅館予約サイト「一休.com」ほか、レストラン・ビジネスホテル予約サイトもオープン。社員数約350名(2023年1月現在)
編集・文・撮影:アスクル「みんなの仕事場」運営事務局 (※印の画像を除く)
取材日:2023年1月18日
2016年11月17日のリニューアル前の旧コンテンツは
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