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最新!オフィスづくり(作り)ラボ

オフィス移転の新たな選択肢「居抜きオフィス」の今と将来 ~「働き方改革」時代のオフィス移転入門[第8回]~

樋山 真司さん(フロンティアコンサルティング SOI事業部首都圏ユニット第2チーム チーム長)

樋山 真司さん(フロンティアコンサルティング SOI事業部首都圏ユニット第2チーム チーム長)



近年、不動産仲介の現場で注目されているキーワードに、「居抜きオフィス」があります。


「居抜き」とは、入居中のテナントが原状回復を行わず内装や什器をそのままの状態で退去し、新たなテナントがそれを引き継ぐというものですが、主に飲食店や店舗の移転等でよく聞く言葉です。「居抜きオフィス」は、言葉の通りそのオフィス版ということになります。


飲食店などでは、厨房や客席など汎用的に流用できる設備が占める割合が多いため、「居抜き」によってコスト削減やオープンまでの時間短縮を図ることはごく一般的です。一方で、一般企業のオフィスでは、事業内容や社員構成に合わせたレイアウトや内装が求められるため、「居抜き」はそれほど一般的なものではありませんでした。


「居抜き」が成立するには、「居抜き」で退去したい側と入居したい側の双方が存在することが条件になります。かつては仲介会社の垣根を越えて情報共有する手段がなかったために、仲介会社内の取り扱い物件の中で偶然希望が一致したり、テナント同士で合意がなされたり、といった特殊な事例でしかありませんでした。


ところが、近年、「居抜きオフィス」のマッチングを行うサイトが誕生し、がぜん注目を集めるようになりました。「居抜き」で出たい、入りたいという企業を結びつける手段が登場したことにより、「居抜きオフィス」という選択肢が現実味を帯びてきたのです。



今回は、「居抜きオフィス」マッチングサイトの草分け的存在として、2016年から「つながるオフィス」を展開している株式会社フロンティアコンサルティングの樋山真司さん(SOI事業部チーム長)にお話をうかがいました。フロンティアコンサルティングは、不動産仲介から、オフィス移転やレイアウト変更における企画、デザイン、施工までカバーする総合コンサルティング会社で、当特集「働き方改革時代のオフィス移転」の第1回目でも取材しています。


「引っ越し」から「ワークスタイル変革」に変わる現代のオフィス移転


オフィス移転における「居抜き」のメリット、利用時の注意点とはとはどのようなものでしょうか。オフィス移転の新しい選択肢「居抜きオフィス」の現状と今後について見ていきましょう。



■「このまま引き継いでくれるところはないか」~サイト誕生の背景


「つながるオフィス」

つながるオフィス」(同サイトより ※)



まず、マッチングサイト「つながるオフィス」の概要を押さえておきましょう。



同サイトは、前述の通り、「居抜き」で退去したいテナントと「居抜き」で入居したいテナントをマッチングするサービスを提供しています。


「退去」希望の場合は、まずサイトに物件の概要を登録します。登録時の必要な情報は、場所、坪数、退去のおおよその時期といったものです。登録後、同サイトのスタッフが詳細をヒアリングし、オーナーとの調整、物件写真の用意など同サイトが代行して、募集内容をとりまとめます。オーナーの承諾が取れ、情報が固まれば公開です(後述のように、公開しないことも可能)。


「入居」希望の場合は、サイトに掲載されている物件を探して、興味ある物件があれば問い合わせます。未公開の物件も豊富にあるため、希望するエリア、規模、内装のポイント等を問い合わせ、適した物件の紹介を依頼することも可能。条件に合った物件があれば、通常の仲介の通り、内覧を行い契約へと進みます。


サイト利用料は不要で、契約にいたった場合には仲介手数料が発生します。



物件一覧ページ(同サイトより ※)

物件一覧ページ(同サイトより ※)



――「つながるオフィス」を立ち上げた経緯は?



当社で内装を担当したお客様から、「オフィス移転を計画しているのだけれど、現在のオフィスの内装はかなり手をかけたこだわりあるものなので、このまま使ってくれるところはないだろうか」という相談をいただいたのがきっかけになりました。


一般的なオフィスの契約書には、たいてい「原状回復して引き渡す」ということが明記されており、いわゆる「居抜き」というのは一般的ではありません。ところが、近年、人員採用時の印象向上などのニーズから、オフィスの内装のレベルは以前にくらべると格段に上がっていきていますから、原状回復するのはたしかにもったいないという側面があるのです。


そこで、今後このような要望は増えていくのではないかと考えました。うまくマッチングできれば、「居抜きオフィス」は退去される方、入居される方、オーナーの方の双方にメリットがあると思ったのです。そこで、2016年に「つながるオフィス」を立ち上げました。


(フロンティアコンサルティング SOI事業部首都圏ユニット第2チーム チーム長 樋山 真司さん)




――「居抜きオフィス」には、どんなメリットがあるのでしょうか。



まず退去される側のメリットは、原状回復作業や廃棄コストを削減できるという点です。とくに、天井を抜いたり、空調を追加したり、会議室を増やしたり、と様々に内装に手をかけるほど、また面積が広いほど、その費用は大きなものになります。「居抜き」で退去することによって、そうした費用を大幅に削減することができ、その分、移転先の内装や家具の調達に回すことができます。また、エコの観点からも、「居抜き」を評価される方もいらっしゃいます。まだまだ使える設備を壊して廃棄してしまうことは望ましくない。「もったいない」の精神ですね。




――入居する側にとっても、内装コストを削減できますね。



内容にもよりますが、内装工事の標準的な費用は什器も含めると坪15万円程度と言われています。それを「居抜き」で入居すれば大幅に削減できるわけです。家具まで引き継げればよりコスト減が見込めます。ただ、実際には家具まで引き継ぐ事例はそれほど多くはなく、入居にあたって新調される方がほとんどです。ネットワークやセキュリティなどは新規で施工する必要がありますが、中には、設置されていたセキュリティシステムが同じものだったため、内部設定の変更だけで引き継ぐことで費用を抑えられた、という事例もありました。




「居抜き」での入居、退去、それぞれの費用の差の例(同サイトより ※)

「居抜き」での入居、退去、それぞれの費用の差の例(同サイトより ※)



――不動産のオーナーサイドにもメリットはありますか。



家賃収入のない空室の時期を「ダウンタイム」と言いますが、オーナーはその期間をなるべく減らしたいと考えていらっしゃいます。「居抜きオフィス」なら、原状回復前に募集を始めることができるので、退去前に入居者が決まることも多々あります。ダウンタイムがゼロになるわけです。



――オフィスの「居抜き」が一般的ではなかったために苦労されたこともありましたか。



サイトができても「居抜き」物件がなければ、もちろんマッチングは成立しません。当初は、当社が内装を担当させていただいたお客様を中心にお声がけしていきましたが、皆さん、「居抜きオフィスって何?」という段階でした。メリットを丁寧にご説明し、マッチングサイトの体裁が整うまでには数ヶ月ほどかかりました。




――「居抜きオフィス」に対する認識が変わってきたという手ごたえは。



移転の際に「居抜きオフィス」という選択肢がある、という認知は確実に広がってきたと思います。オーナーの方も、希望があれば相談してほしい、と言っていただけることが多くなりました。原状回復の指定業者さんとの関係などもあり、「居抜きはNG」という物件もまだまだありますが、今後とも「居抜き」のメリットを根気よく発信していきたいと思います。




樋山 真司さん(フロンティアコンサルティング SOI事業部首都圏ユニット第2チーム チーム長)



■居抜きオフィスを上手に利用するためには


「居抜きオフィス」は、一般的な原状回復済みのオフィスに入居する場合とは異なり、希望をすべて反映させることはできません。


失敗しない「居抜きオフィス」利用のためには、通常の移転と「居抜きオフィス」の違いを押さえておく必要があります。


利用上の注意点や上手な利用法についてうかがってみました。



――「居抜きオフィス」に入居する場合、注意すべきことはどのようなことしょう。



原則的には「そのまま使う」ことをおすすめしています。理由はコストとリスクです。当社で施工した内装なら、図面や資料が手元にあるのであまり問題はありませんが、実際には図面や資料を引き継ぐことが難しい場合が多いのです。そうなると、手を加える場合には構造の確認から入る必要がありますから、手間が増える上、一部だけではすまない場合も出てきますし、コストアップの要因になります。結果的に、更の状態から通常通り施工するのと大して変わらない、ということもあります。また、内装の構造によっては、思いも寄らない問題が発生する場合があります。これは極端な例ですが、希望の施工をすると天井が落ちてしまうとか、空調が使えなくなるなど、大きな工事に発展してしまう可能性も否定できません。そういった場合、以前のテナントさんに法的責任を問うことはもちろんできません。入居ご希望の方の中には、会議室や壁を増設するなど、現況の内装をもとに改装を考える方もいらっしゃるのですが、ご相談のうえ、場合によっては「居抜き」ではなく、通常のオフィス仲介による一からの設計・施工をお勧めすることもあります。




――「居抜き」物件の構造に手を加えるのは避けたほうがよい、ということですね。



もちろん、たとえば壁をコーポレートカラーに塗ったり、タイルカーペットを変更したり、痛んだところを取り替えたりといった程度の改装なら問題ありません。ただ、手をかけないほどメリットが大きくなるのは事実です。会社名のアクリルパネルを付け替えるだけ、というお客様もいらっしゃいます。退出企業のパネルは先方負担で外されているので、これなら、かかるのはアクリルパネルの製作費と取り付け工事費だけです。




――契約前の確認がたいへん重要になりますね。



通常のオフィス仲介においては、重要なのはまず立地と坪数ですから、内見の際も、何もないフロアを見ていただきます。これに対して、「居抜き」の場合は、さらに現在の内装を評価していただく必要があるので、内見の重要度は格段に上がります。


「居抜きオフィス」の仲介には、内装の知識が不可欠です。ミスマッチによるトラブルを回避できるように、当社では内見時に内装がわかるスタッフが同行し、その時点で不明点をできるだけ排除できるよう配慮しています。改装の希望があった場合、どの程度のコストが発生するかということも明らかにしていきます。当社では、社内にあるデザイン、施工のノウハウを生かして総合的にサポートすることができるので、安心してご利用いただけます。




――取り扱いが多いのは、どのくらいの広さのオフィスですか。



10坪程度から1000坪超まで扱っていますが、最も活発に動くのは50~60坪、社員数20~30人程度の物件ですね。これは、ちょうど事業が軌道に乗ってきたベンチャー企業がオフィス移転を考える規模と言えます。この規模の企業は、会議室も一つか二つ、執務スペースも一つ、とオフィスに求める要件にあまり差がありません。そのため、内装の汎用性が高いわけです。これが企業規模が大きくなり、社員も多いと、オフィスに求める要件もどんどん多様になっていきます。




――「つながるオフィス」を上手に利用する方法は?



サイトに条件に合う物件が掲載されていなくても、まずはお問い合わせください。じつは、サイト上には、手元にある物件の半分程度しか掲載されていません。現在進行形で利用されているオフィスですから、非公開を希望されるお客様やオーナー様も多いのです。




「居抜きオフィス」物件情報のページ(同サイトより ※)

「居抜きオフィス」物件情報のページ(同サイトより ※)



■「居抜きオフィス」がつながって生まれる新しいバリュー



――「居抜き」で退去する側が注意すべき点はありますか。



できるだけ早い時点で「つながるオフィス」に登録していただくことをお勧めします。立地や内装が良い物件だと、公開後すぐに複数の問い合わせが来ることもありますが、マッチングはタイミングも重要ですから、成約まで時間がかかることもあります。できるだけ募集期間は長目がよいと思います。居抜きでの退去を検討されているなら、移転時期がまだ確定していなくてもかまいません。




――魅力的な内装の物件は、反応が早いのでしょうか。



「居抜きオフィス」の価値は、内装にあると言っていいでしょう。「居抜きオフィス」が近年注目されている要因には、採用対策やワークプレイス改革など意識の高まりにともなって、魅力的な内装が求められるようになったことが大きいのです。魅力的な内装を一から作るには相応のコストがかかりますから、イメージにあった内装の「居抜きオフィス」に入居したいというニーズは、とても多いのです。




――「居抜きオフィス」は今後も発展していくでしょうか。



成長性の高い会社の場合、内装に数百万、数千万かけたオフィスから2~3年で移転してしまうことも珍しくありません。凝った内装になるほど、原状回復費用も馬鹿にならず、コスト削減につながる「居抜きオフィス」はますます注目されていくと考えています。実際に「つながるオフィス」を利用されたお客様は、退去・入居を問わず、皆さん「居抜きオフィス」のファンになっていただいています。移転時、前向きに「居抜きオフィス」を検討していただける企業が増えていけば、利便性もさらに高まると考えています。


実際にあった事例ですが、あるお客様が居抜きで入居し、数年使われて、また居抜きで退去されました。つまり、内装費と原状回復費の両方を大幅に削減できたわけです。なおかつ、成約も大変スムーズでした。これは入居中に補修や追加等を行い、内装の魅力を維持されていたことが大きいのですが、そうした手間を考えても、メリットは大きいものだったと思います。今後、「居抜きオフィス」の裾野が広がっていけば、このような事例も珍しくなくなるでしょう。





樋山 真司さん(フロンティアコンサルティング SOI事業部首都圏ユニット第2チーム チーム長)


――「つながるオフィス」の今後の展開は。



「居抜きオフィス」マッチングサイトのさきがけとして、メリットの周知と啓蒙は今後も行っていきます。「つながるオフィス」は、できるだけ多くの方に、「居抜きサイト」について認知していただきたいため会員制などの制限を設けていません。現状では、入居したいという声のほうが多く、退去したいという側が少ない状況で、少々バランスが偏ってしまっていますので、とくにこれから移転を計画している企業に対して、「居抜き」で退出するという選択肢があることをアピールしていきたいと思います。








退去する側、入居する側、オーナー側にそれぞれメリットがある「居抜きオフィス」。 認知度の向上と利用環境の整備により、確実に存在感を増しています。オフィス移転のあらゆるニーズに対応できるわけではありませんが、目的や条件が一致すれば有効な選択肢であることは間違いないと言えるでしょう。


また今後、利用実績が積み重なって裾野が広がっていけば、「居抜き」で退去、入居することを想定したオフィスという、これまでにない新しい価値が生まれる可能性は十分あるのではないでしょうか。









取材協力

つながるオフィス(運営:株式会社フロンティアコンサルティング)








編集・文:アスクル「みんなの仕事場」運営事務局 (※印の画像を除く)
制作日:2019年2月18日




         

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