企業の人材育成を目的に行われる社員研修。近年、座学だけでは得られない効果を求めて、ユニークな研修を取り入れる企業が増加しているという。
滝に打たれて精神統一を行う日清食品の管理職社員
『チキンラーメン』や『カップヌードル』でおなじみの「日清食品株式会社」では毎年、新任管理職社員を対象に2泊3日の「山修行研修」を行っている。その名の通り、山ごもりの修行で精神力と自活力を鍛え、骨太の管理職を育てるための研修だ。
カリキュラムには、夜中に20キロの峠道を歩くオーバーナイトウオークに加え、写経や座禅、滝修行など僧侶さながらの禅修行も含まれている。また、この研修の中で特に同社らしいのが食事。各自が知恵を絞って火をおこし、着火に成功した者だけが食事にありつくことができるのだという。もちろんメニューは、お湯さえあればどこでも食べられるチキンラーメンだ! 実際に研修を受けた社員からは、「自分一人の小ささを痛感せざるを得ない過酷な環境の中で、仲間の存在の大きさを実感した」「極限状態で即席めんのありがたみを再認識し、自社商品への愛着も増した」との声が。仲間とのきずなを深めるとともに愛社精神をも高めることができる、一石二鳥の研修だ。
宴会芸でエンターテイナーとしてのプロ魂を見せるメイション社員
結婚式の2次会のサポート『2次会くん』を運営している「株式会社メイション」の研修も実に面白い。東京、名古屋、大阪の各支社がしのぎを削って社員旅行プランのコンペを行うというものだ。
プレゼンテーションで見事勝者に輝いた支社の旅行プランはその年の社員旅行に採用され、選ばれなかった支社には、旅行当日の宴会で本気の余興を披露するというペナルティが待っている。罰ゲームとはいえ、彼らはエンターテインメントのプロ集団。完成度の高い芸で旅行をおおいに盛り上げる。
企画力、提案力、パフォーマンス力、そしてチームワークとコミュニケーション能力。これらすべての向上を狙ったこの研修旅行だが、注目すべきはその効果だ。会社が拡大するにつれてコミュニケーションが薄れがちな支社間の交流が深まり、転勤を理由に退職する社員も減ったのだという。
社員の精神力や思考力の成長を狙いとした研修は、一朝一夕でその効果が現れるものではない。企業にとってはいわば投資だ。しかし、上記2社の事例からも分かるように、企業にとってもうれしい副作用をもたらしてくれるはずだ。
幼いころに経験した人も多いであろう、課外授業や社会科見学。授業の一環とはいえ、何だかワクワクするものではなかったかな? しかも、不思議とそこで学んだ知識は大人になってからも忘れないもの。今回紹介した2例も、実は同じ心理効果があるのかもしれませんな。
つまり、今回の法則はこれ。「非日常の環境で、"気付き"の効果は倍増する」
毎年恒例の研修も、今年は少し環境を変えてみてはいかがだろうか? 一石二鳥...といわず、三鳥でも四鳥でも捕まえられそうなほどのうれしい効果が期待できるかもしれませんぞ!
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