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固定の執務席に隣接させた2つのラウンジ!LINEの執務空間づくりの狙いは?【前編】(オフィス訪問[3])

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写真はLINE社内のコミュニケーションラウンジ

(写真はLINE社内のコミュニケーションラウンジ)


※前後編記事 後編はこちら「固定の執務席に隣接させた2つのラウンジ!LINEの執務空間づくりの狙いは?【後編】(オフィス訪問[4])



2017年4月に移転したLINE株式会社の新オフィスでは、様々な空間づくりが試みられ、極めて興味深い空間となっている。その概要は以下の取材記事で紹介した。


LINE株式会社 新オフィス訪問 ~1か所に集約移転、更なる"WOW"を創出するオフィスとは?!~【前編】(オフィス訪問[1])
LINE株式会社 新オフィス訪問 ~1か所に集約移転、更なる"WOW"を創出するオフィスとは?!~【後編】(オフィス訪問[2])


中でも執務空間については、固定席制で1,600mm幅という広いデスクに、目線高さのパーティションで囲われるなど集中できる執務環境が整えられた上で、さらにその固定席エリアに隣接して、フリーアドレスのように自由度を高める「ワークラウンジ」と、コミュニケーションの生産性を高めるための「コミュニケーションラウンジ」が設けられている。どちらもLINE独自の空間づくりでほかにない性質のものだ。ここでは、1日の中で1か所に留まって働くという想定ではなく、働く人自身が複数用意された執務空間内で働く場所を選び、使い分ける設計になっていると言える。


そうした空間づくりについて、こちらのオフィスの設計を担当した同社クリエイティブセンター BX室 スペースデザインチーム マネージャー 山根 脩平氏に話を伺った。同社のワークスペースを見ながらその設計のポイントを見ていきたい。


■メインとなる執務エリア

まずはメインとなる執務エリア。8席を1島として構成されている。
高さのあるハイキャビネットやパーティションはデスク周りに置かず、目線を遮るものがないため、見通しの良い広々とした執務エリアが作られている。

まずはメインとなる執務エリア。8席を1島として構成されている。


高さのあるハイキャビネットやパーティションはデスク周りに置かず、目線を遮るものがないため、見通しの良い広々とした執務エリアが作られている。


執務席は固定席を採用していて、こちらをメインのデスクワークスペースとして使うよう設計されている。私物はデスクのところにあるサイドキャビネットに収納する。



■執務チェアはハーマンミラー アーロンチェア

メインとなる固定席のオフィスチェアは全席、ハーマンミラー社のアーロンチェアが採用されている。デスクワークのために疲れにくい環境を目指して、移転前から採用されているとのことだ。

メインとなる固定席のオフィスチェアは全席、ハーマンミラー社のアーロンチェアが採用されている。デスクワークのために疲れにくい環境を目指して、移転前から採用されているとのことだ。



■静かで、仕事に集中できる環境づくり

デスクをアップで撮影。

デスクをアップで撮影。


注目すべき点は固定席となるデスク環境の充実度だ。効率よく集中して作業ができるようにデスク周りの面積をかなり広く確保している。デスク幅は1,600mmと、クラウド化が進む最近のオフィスの中では相当に広い。


デスク天板は木調となっており、スチールデスクにはない温もりのあるデスクだ。デスクフレームは、アメリカのスチールケース製で電動上下昇降デスクになっている。仕事中、気分を変えて立ち仕事に切り替えができるだけでなく、体格に合わせてデスク高さを微調整できるメリットがある。写真でも少しずつデスクの高さが違っていることが分かるように、体格に合わせてデスク天板高さを変えられるのは理想的だ。


また、デスクの前と左右にはデスクパーティションが備え付けられ、座って作業しているときに周囲と視線が合わないよう作られている。この高さはかなり調整されたそうで、集中環境を作るためにパーティションを設置しているものの、高くし過ぎるとフロア全体の見通しが悪くなることを避けるため、この高さに落ち着いたとのことだ。


さらに、座席の後方部分、デスクの島の間隔も1,800mmとかなり広く取られている。ざっくりとした計算になるが、自席周りのパーソナルスペースは、直径3mくらいの円内に自分ひとりしかいないような配置になる。


また、このデスク周りでは会話は最小限にし、コミュニケーションと集中して業務をする環境のメリハリをつけたレイアウトを採用することで、執務スペースは静かに保たれている (話す場合は、近くにあるコミュニケーションラウンジに行く)。執務環境としては国内最高レベルの設備と言って良いのではないだろうか。



広いデスク板面、集中できるだけのデスク周りの広さ、チェアはアーロンという、高いレベルの執務環境が用意されている上で、自席で仕事をすることを義務付けられているわけではなく、後述するコミュニケーションラウンジやワークラウンジ、社内カフェなどの社内スペースで仕事をすることは社員の自由に任されている



執務席周りの設計の狙いについて、同社山根氏に尋ねた



執務席は固定席制を採用しています。確かに、フリーアドレスもすごくいいと思うのですけども、社内に自分の拠点があったうえで、多様な働き方、ワークプレイスが選択できるという環境がベストじゃないかという結論に最終的に至り、現在のようなレイアウトにしています


(同社クリエイティブセンター BX室 スペースデザインチーム マネージャー 山根 脩平氏)


移転にあたり、フリーアドレス化の意見も社内にはあったとのことで、フリーアドレス的に使えるワークラウンジ(後述) も執務フロア内には用意された。



執務席周りの静かさを保っているところも特徴的で、企業によっては執務席周りをコミュニケーションの場所としているケースもある。その点についても伺った



執務エリアをどのように作るかについては社内でもいろいろな意見がありました。100人いれば100人の声があるということは当然なのですが、今回の移転では、静かで集中できる環境、積極的にコミュニケーションが生まれる環境、働き方の柔軟性を高めるという相反する課題に取り組みました。


自席は静かに集中できるパーソナルスペースを確保し、積極的なコミュニケーションはコミュニケーションラウンジで行えるように場所を明確に分けました。ただ分けるだけでは自然とコミュニケーションは生まれないので、自席にいたるまでの動線上に「ワークラウンジ」「コミュニケーションラウンジ」を設置し、ラウンジを通過して自席へ移動する空間構成としました。そうすることでスタッフ同士が顔を合わす機会を増やしコミュニケーションが生まれやすくなると考えています。


実際に新オフィスが完成した時に、机の幅は900mmでいい、とか、デスクパーティションは要らないとか、席を近くしてどんどんしゃべりながら業務を行いたいという意見もありましたが、そうしたニーズにも合わせてコミュニケーションラウンジを用意しました。実際、コミュニケーションラウンジで仕事をしている人もいます。使い方は自由なのです。

(同社山根氏)


LINEでは多岐にわたる事業を展開しているため、業務の内容によっては、コミュニケーションの方法やタイミングが異なる。デザイン職や開発職であればメインの執務席では静かで集中できる環境を求めるし、営業職や編集職であれば、電話や社内の会話などコミュニケーション中心の業務を行っている。それらを1か所で行うのではなく、場所ごとに役割を決めて、静かで集中できる環境、コミュニケーションしながら仕事ができる環境、と分けて、社員の選択に任せたということなのだ。


自席が固定席で、広く静かで集中できる環境が作られているのに対して、積極的なコミュニケーションを生み出す環境は、執務エリアに隣接したコミュニケーションラウンジが担っている。そこを見て行こう。



■コミュニケーションを取るための場所

コミュニケーションを取るための空間「<strong>コミュニケーションラウンジ</strong>」は、LINE独自の空間で、全ての執務フロアに設置されており、各フロアの入口を入ったところにある。社員は自席に行くのに、必ず、コミュニケーションラウンジか、もう一つのラウンジであるワークラウンジ(後述)を通るようになっている。

コミュニケーションを取るための空間「コミュニケーションラウンジ」は、LINE独自の空間で、全ての執務フロアに設置されており、各フロアの入口を入ったところにある。社員は自席に行くのに、必ず、コミュニケーションラウンジか、もう一つのラウンジであるワークラウンジ(後述)を通るようになっている



コミュニケーションラウンジの狙いについて山根氏に尋ねた



コミュニケーションラウンジは、積極的なコミュニケーションや偶発的に生まれるコミュニケーションを生み出す場所です。ちょっといいですか、と話しかけて始まる会話を自席でやるのではなく、コミュニケーションラウンジを積極的に利用してもらう意図で設置しています。


もちろん自席でそのまま会話したほうが場所移動しなくていいので効率が良いのですが、そうすると自席周りがどんどんうるさくなっていってしまいます。うるさくなることで、ストレスを抱える人がたくさん出てくる、という問題があります。


デスクトップパソコンで、モニター見ながら会話する場合は、執務席でその場で会話するのも当然必要ですが、15分や30分かかる会話は、執務エリアを静かな環境にしておくためと、より積極的なディスカッションを行えるように、ちょっといいですか、と話しかけてコミュニケーションラウンジに連れて行って、そこで話しましょうということにしました。

(同社山根氏)


最近、カフェ風な仕事空間づくりが流行だが、その中でも、カフェの中からコミュニケーション機能部分に特化した空間と言えそうだ。



■コミュニケーションラウンジ全景

こちらがコミュニケーションラウンジ全景。メインとなる執務エリアに隣接して、各フロアに用意されている。

こちらがコミュニケーションラウンジ全景。メインとなる執務エリアに隣接して、各フロアに用意されている。


窓際の景色の良いところにカウンター席が並び、ほかはテーブル席が5つほど配置されている (コミュニケーションラウンジにより多少異なる)


こちらではお昼休みなどに休憩したり、業務外でコミュニケーションを取れる場所でもありつつ、軽い打ち合わせなど、業務以外でも様々な種類のコミュニケーションを生み出す場となっている。


テーブル席は会話に集中できるよう、座ると頭が隠れる程度の壁が設けられている。とはいえ、オープンさを保ち、密室にならないように仕切りの高さだけでなく向きも調整されていて、通路側から誰がいるかは分かるデザインとなっている。

テーブル席は会話に集中できるよう、座ると頭が隠れる程度の壁が設けられている。とはいえ、オープンさを保ち、密室にならないように仕切りの高さだけでなく向きも調整されていて、通路側から誰がいるかは分かるデザインとなっている。


つまり、この場所は、会議室のような会議の参加者だけがコミュニケーションを取る場所ではなくて、通路側を歩いていてふと見かけた知り合いやチームメンバーに声をかけて、会話に参加できるイメージで作られているのだ。


そうした偶発的なコミュニケーションが発生するよう、コミュニケーションラウンジは、わざと出入り口付近に設置されており、自席へ行く途中でラウンジを通るよう作られている。また、コピー機やゴミ箱などもラウンジに設置されており、日常的に何かとラウンジを通るよう動線設計されている。



コピー機やゴミ箱、文具等のオフィスのサプライ関係はラウンジにしかないというようにしているので、コピーを取りに行くのもラウンジに行くことになります。そこで社員同士が自然に顔を合わせることができます。


利便性だけみると、コピー機を机の近くに欲しいという要望はありました。利便性も確かに大事ですが、利便性だけを追い求めると人の移動がなくなりコミュニケーションが減るという問題も浮上します。オフィスは利便性だけではなく、LINE STYLEをどのように実現していくか、が重要だと考えているので、コミュニケーションの生産性を高めることを重視したスタッフ動線を考えて空間を構成しています。


もともと、こうしたラウンジは、移転前に各フロアを繋ぐ階段付近にフリースペースを設置しており、そこでは積極的にコミュニケーションが生まれていました。それを今回、ワークラウンジとコミュニケーションラウンジという場所として定義して設置しています。


今回のオフィス移転計画の中で、コミュニケーションラウンジは非常に高い効果が生まれたと感じています。当初はmtgを中心としたコミュニケーションの場所として計画しましたが、チームで集まって一日業務をしたり、ランチ時にはここでおしゃべりしながらご飯を食べる場所になるなど、様々な種類のコミュニケーションが生まれスタッフ同士の距離を縮める空間になったと思います。


また、コミュニケーションラウンジには会議室が隣接しています。
会議室で会議が終わったあとも継続してディスカッションが必要な場合にすぐ、コミュニケーションがとれることを意図しています。

(同社山根氏)



■コミュニケーションラウンジを端の方から

中央奥にコミュニケーションラウンジがあり、全体を撮影。
フロア内で人が行きかう交差点のような場所なので、社内会議室(写真左手)もこちらに配置されている。写真右手に見えているのは、ファミレススペース。

中央奥にコミュニケーションラウンジがあり、全体を撮影。
フロア内で人が行きかう交差点のような場所なので、社内会議室(写真左手)もこちらに配置されている。写真右手に見えているのは、ファミレススペース。



■ファミレススペース

洞窟スタイルのファミレススペース。予約不要なので、コミュニケーションスペースからこちらへ移動してきて会議することもできる。

洞窟スタイルのファミレススペース。
予約不要なので、コミュニケーションスペースからこちらへ移動してきて会議することもできる。


ファミレススペースの中に入ると、頭が隠れる程度の高さの背板で囲われるので、打ち合わせに集中できるようになっている。他方、通路側からは誰が話しているか分かるオープンさが保たれている。あえて、壁を完全に立ててしまわず、密室にならないようセミクローズドな空間になっていることがポイント。

ファミレススペースの中に入ると、頭が隠れる程度の高さの背板で囲われるので、打ち合わせに集中できるようになっている。他方、通路側からは誰が話しているか分かるオープンさが保たれている。あえて、壁を完全に立ててしまわず、密室にならないようセミクローズドな空間になっていることがポイント



■ビッグカウンター

コミュニケーションラウンジの向かい、通路側には、大型のカウンターテーブル「ビッグカウンター」がある。こちらの一角で短時間の立ち会議に使われることが多い。

コミュニケーションラウンジの向かい、通路側には、大型のカウンターテーブル「ビッグカウンター」がある。こちらの一角で短時間の立ち会議に使われることが多い。


右側の壁にはプロジェクターで投影できるように作られていて、大勢で参加も可能な多目的カウンターとして作られている。



■ミーティングをする空間としてのコミュニケーションラウンジ

クイックミーティングを行いコミュニケーションの生産性を高める空間としても、コミュニケーションラウンジは作られているとのことで、そのあたりを伺った。




移転前は会議室がすごく少なくて困っていました。移転にあたり、僕らの目安としては、最低限、社員40人に1室を目安として、57部屋つくりました。


ただ、これからも社員はどんどん増えるので、物理的に会議室を増やすのは限界があります。また、会議室を増やすほど、会議のための準備などに時間がとられる人が出てきたり、必要のない人が会議に参加するなどが起こりがちですが、事前準備が必要なく15分で終わるような会議は会議室ではなくもっとオープンな場所でさっと行えるような場所を意識しています。


ショートミーティングは、パッとしゃべって、すぐに自席に戻って仕事するみたいなコミュニケーションのスピード感を大事にしています。会議室を過剰に増やすのではなく、コミュニケーションの質によって場所を使い分けることを意識して空間構成をデザインしています。

(同社山根氏)


設計の狙い通り、コミュニケーションラウンジ周辺は、予約なしでちょっとしたミーティングが活発に行われる場所になっている。



■PRESS WALL

コミュニケーションラウンジ近くにある、PRESS WALL。世の中の最新情報が自然に入ってくることを意図し、LINE NEWSが流れている。

コミュニケーションラウンジ近くにある、PRESS WALL。世の中の最新情報が自然に入ってくることを意図し、LINE NEWSが流れている。



コミュニケーションラウンジは、このように人が行きかいコミュニケーションを積極的に行う場所としてメインとなる執務エリアに隣接して各フロアに設けられている


では、もう一方のラウンジであるワークラウンジはどういうものだろうか



写真はLINE社内のワークラウンジ

LINE社内のワークラウンジ



後編に続く

固定の執務席に隣接させた2つのラウンジ!LINEの執務空間づくりの狙いは?【後編】(オフィス訪問[4])










取材先

LINE株式会社newwindow

コミュニケーションアプリ「LINE」を機軸として、コミュニケーション・コンテンツ・エンターテイメントなどモバイルに特化した各種サービスの開発・運営・広告事業に加え、AI事業として、クラウドAIプラットフォーム「Clova」を展開。ニューヨーク証券取引所、東証一部上場。




編集・文・撮影:アスクル「みんなの仕事場」運営事務局(※印の写真を除く)
作成日:2017年6月29日




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