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固定の執務席に隣接させた2つのラウンジ!LINEの執務空間づくりの狙いは?【後編】(オフィス訪問[4])

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固定の執務席に隣接させた2つのラウンジ!LINEの執務空間づくりの狙いは?【後編】(オフィス訪問[4])

(写真はLINE社内のワークラウンジ)


※前後編記事 前編はこちら「固定の執務席に隣接させた2つのラウンジ!LINEの執務空間づくりの狙いは?【前編】(オフィス訪問[3])


固定の執務席に隣接させた2つのラウンジ!LINEの執務空間づくりの狙いは?【前編】(オフィス訪問[3])」からの続き。


前編で見てきたように、コミュニケーションラウンジは、人が行きかい会話する場所としてメインとなる執務エリアに隣接して各フロアに設けられていた。


では、もう一方のラウンジであるワークラウンジを見ていこう



■フリーアドレス的に働ける場所

ワークラウンジも各フロアの出入り口を入ったところに設置されている。こちらもLINE独自の空間づくりだ。メインとなる執務エリアには、先ほどのコミュニケーションラウンジか、こちらのワークラウンジを必ず通るように設計されている。

(写真は同社のワークラウンジへの案内プレート)


ワークラウンジも各フロアの出入り口を入ったところに設置されている。こちらもLINE独自の空間づくりだ。メインとなる執務エリアには、先ほどのコミュニケーションラウンジか、こちらのワークラウンジを必ず通るように設計されている



ワークラウンジの狙いについて山根氏に尋ねた



ワークラウンジは、今回の移転で新しく作った場所になります。弊社は多くのサービスを展開しているため、様々な職種の従業員が在籍しています。そのため、働き方のバックグラウンドも多岐にわたります。


当初はフリーアドレスの採用も視野に入れて設計を進めていましたが、固定席が必要な部署も当然あります。LINEでは事業のその時々によって適正な組織へと改変を行うため、部署の拡張や分割などを1年に何度も行い、社内の座席移動も頻繁に発生します。そのため、座席が変わってもすぐに業務に集中できるように、職種ごとにワークスペースの考え方を変えるという選択肢はありませんでした。


そこで、基本は静かで集中できる自分の拠点として固定席を用意し、そのうえで働き方の選択肢を増やす場所を作ることを検討しました。そこから生まれたのがワークラウンジという場所になります。自席で集中できない時などは気分を変えてワークラウンジで働く。フリーアドレスのように常に自分にあった環境で働けるように働き方の選択を自身で出来る場所として定義して空間を設計しています。

(同社 山根氏)


こちらは、前出のコミュニケーションラウンジがコミュニケーション機能に特化した空間とすれば、ワークラウンジは、働く場所を自身で選択し、集中したり、リラックスしたりしながら仕事をする機能に特化した空間と言えそうだ。



■ワークラウンジ全景

洞窟タイプのソファ、独り用カウンターデスクが並び、大きめのテーブル席、ラウンジ席などがゆったりと配置されている。照明も暖色系になっていて、最近のカフェスタイルのコワーキングスペースといった雰囲気の空間だ。

洞窟タイプのソファ、独り用カウンターデスクが並び、大きめのテーブル席、ラウンジ席などがゆったりと配置されている。照明も暖色系になっていて、最近のカフェスタイルのコワーキングスペースといった雰囲気の空間だ。


確かにここであれば、自席から離れて、カフェ的に気分を変えて仕事をしにきたり、仲間と少し話したりしやすい雰囲気だ。同社には広いカフェテリアが用意されていて、そちらで気分を変えて仕事をすることも可能なのだが、エレベーターで移動が必要になる。その点、こちらは執務エリアに隣接していて気軽に利用できるのが魅力だ。



ワークラウンジは、まだまだ初めて作った場所なので、決まった使い方というのはまだなくて、人それぞれです。ですが、ここは、深いディスカッションをする場所という想定はしていないんです。空間の作り方としても、パーティションがあったりとか、机と机の距離が結構離れていたり、照明がちょっと暖色系で落ち着いた雰囲気を出しているなど、そうすることによって空間の作り方によってディスカッションではなくて、静かに仕事をする雰囲気を作っています。

(同社 山根氏)


コミュニケーションを積極的にする場所は、コミュニケーションラウンジで、というわけだ。こちらのワークラウンジは、フリーアドレス的に使え、働き方の選択肢を増やす場所になっている。


以下、ワークラウンジの空間づくりを見ていこう。



■洞窟型の座敷スペース

洞窟型の座敷スペースが作られている。リラックスできる仕様だ。ちょっと中に入ってみたくなる洞窟仕様なのが心憎い。テーブルはあえて小さいものが置かれていて、執務の雰囲気が出ないように作られている。

洞窟型の座敷スペースが作られている。リラックスできる仕様だ。
ちょっと中に入ってみたくなる洞窟仕様なのが心憎い。
テーブルはあえて小さいものが置かれていて、執務の雰囲気が出ないように作られている。


ちなみに、左奥に見えるのがメインとなる執務スペース。入口からワークラウンジを通り抜けて執務スペースへ行く動線になっている。



コミュニケーションラウンジ、ワークラウンジの2つのラウンジは、自席に行くまでに必ず通るように動線を設計しています。また、通過するためだけではなく、勤怠リーダーやコピー機、オフィスサプライなどを集約しています。物理的に空間を制約することで、スタッフ同士が顔を合わす機会を増やし、コミュニケーションの活性化、偶発的なコミュニケーションが生まれることを期待しています。

(同社 山根氏)



■テーブル席とカウンター席

洞窟型の座敷スペースが作られている。リラックスできる仕様だ。ちょっと中に入ってみたくなる洞窟仕様なのが心憎い。テーブルはあえて小さいものが置かれていて、執務の雰囲気が出ないように作られている。

洞窟型のエリアは、喫茶店のようなテーブル席や、自習室のようなカウンターも用意されている。



■別のワークラウンジ

同じフロア内にある別のワークラウンジ。

同じフロア内にある別のワークラウンジ。


こちらはホワイトとナチュラルウッドのカラーリングで雰囲気を変えている。 ウッディな落ち着く雰囲気は共通するがカラーリングや家具などを変えて違う雰囲気が作られている。まさに、気分を変えて仕事ができる場所なのだ。



■終わりに

以上見てきたが、いかがだったろうか。


同社の執務スペースについてのオフィスづくりは非常に徹底している。主となる執務スペースは、静かで広く、独り集中して仕事ができる環境を目指している。そのためのデスクの幅1,600mmであり、上下昇降デスクの採用であり、デスクパーティションの設置であり、アーロンチェアの採用となっている。ある種贅沢にも執務スペースの人口密度を下げ、周りが気にならず集中できる環境づくりに注力されている。


他方、仕事をする上ではショートな打合せや会話をしながら進めたいときがある。また、コーヒーを飲みながら仲間と雑談することで仕事のヒントが生まれたりもする。そうしたコミュニケーションニーズのために、執務スペースの近くに、コミュニケーションラウンジを設け、予約不要でオープンなコミュニケーションスペースを作った。メインとなる執務スペースは静かに保ったまま、コミュニケーションしながら仕事をする場所を設けたといえるので、これは第2の仕事場と言っていいのではないか。


さらに、朝から夕方まで、ずっと同じデスク、同じチェアで働いていると刺激が不足して効率が落ちてくることはよくある。最近では、社内にカフェを設けてそちらで気分転換をして仕事をするということが流行しているが、同じ効果を狙ってワークラウンジを設けたということだろう。カフェと同様に、デスクやチェア、照明をあえて変化をつけることで、気分を変え、リフレッシュして仕事を進められるようになっている。そうした場所を、メインの執務スペースから最短距離のところに設けたのがワークラウンジといえるので、これは第3の仕事場と言えるのではないだろうか。


そして、コミュニケーションラウンジもワークラウンジも、執務スペースへ向かう出入り口のところに設け、コピー機やゴミ箱なども両ラウンジに集めることで、皆がラウンジを行きかい、偶発的なコミュニケーションが生まれることも狙ってオフィス内動線は設計されている。



今までのオフィスと言えば、狭かったり、うるさかったり、逆に静かすぎて会話できなかったりといった、多少の不自由さがある執務空間で、勤務時間中はそこに拘束されるというものだった。ところがここでは、働く人が1日の中で、集中、コミュニケーション、気分リフレッシュなどの目的で、メインとなる執務空間以外に、第2、第3の執務空間を使い分けて生産性を上げ、偶発的なコミュニケーションは自然に誘発されてイノベーションを促進する仕掛けが施されている。


つまり、オフィスワークの生産性を上げるために欲しい空間機能である、集中、コミュニケーション、気分リフレッシュ、を徹底して充足するべく作り上げられたオフィスといえるのではないだろうか。


確かに、一般的なオフィスよりもスペースをかなり広く使うことから生まれる機能性は否めない。しかし、それだけには留まらないオフィスづくりの大事な観点が含まれている。


同社は、企業ミッションとして「CLOSING THE DISTANCE (世界中の人と人、人と情報・サービスとの距離を縮めること)」を掲げている。コミュニケーションアプリのLINEをはじめ、ユーザーに"WOW"という感動、驚きを提供することを価値基準としてサービスを作り続けている。あくまで、こちらのオフィスのある種贅沢ともいえるオフィスづくりは、ユーザーの感動を生み出すためにある。


ユーザーの感動を生み出すための製品やサービスを創り出すための働く場所をどう作るかという観点でオフィスづくりを考えていくならば、同社の新オフィスの取り組みは、たとえ同社の規模ではないとしても、これからの新しいオフィスづくりで、参考になる点が多く含まれているのではないだろうか








取材先

LINE株式会社newwindow

コミュニケーションアプリ「LINE」を機軸として、コミュニケーション・コンテンツ・エンターテイメントなどモバイルに特化した各種サービスの開発・運営・広告事業に加え、AI事業として、クラウドAIプラットフォーム「Clova」を展開。ニューヨーク証券取引所、東証一部上場。




編集・文・撮影:アスクル「みんなの仕事場」運営事務局(※印の写真を除く)
作成日:2017年6月29日




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