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究極の短時間ミーティング環境、アメフトのハドルが由来「ハドルルーム」とは? (バイオジェン・ジャパン株式会社 オフィス訪問[4])

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バイオジェン・ジャパン株式会社の打ち合わせ用個室 ハドルルーム(HUDDLE)

バイオジェン・ジャパン株式会社の打ち合わせ用個室 ハドルルーム(HUDDLE)


※シリーズ記事 ほかに「多発性硬化症を始め難病治療薬を創薬するバイオテクノロジー企業のパイオニア バイオジェン・ジャパン株式会社のオフィスづくり【前編】 (オフィス訪問[1])」「【後編】 (オフィス訪問[2])」「誰もがふらりと来て話ができるフルオープンな役員室 ~これからの時代の役員室のありかた(バイオジェン・ジャパン株式会社 オフィス訪問[3])



■ハドルルーム(HUDDLE)という予約不要の個室の会議室

希少疾患の治療法開発に重点を置く世界的バイオテクノロジー企業バイオジェン(Biogen)の日本法人 バイオジェン・ジャパン株式会社のオフィスには、社内用の会議スペースとして、ハドルルーム(HUDDLE)と名前が付けられた特徴的な個室が多く設置されている。


ハドルルームは、部屋ごとに、カラーリング、チェア、ソファ、ハイテーブルなどがそれぞれ部屋ごとに変えてあり、会議室を利用するときの用途や気分によって使い分けできるようになっている。大きな外部モニターが用意された部屋から、PCを使わずに話をするようなソファの小部屋まで、さまざま用意されているのだ。



■予約できないようにしてある会議室

形はいろいろ用意されたハドルルームに共通する特徴は、予約ができないようにしてあり、空いていれば使えるクローズドな会議室であるということ。使用しているかどうかは、どの部屋も透明なガラス張りで、内部が通路側から丸見えなのですぐわかる。個室と言えども、声は漏れないがオープンになっているのだ。


このハドルルームの導入の経緯は、オフィス移転前は会議室が大変不足しており会議がなかなかできなかったことを解消するためとのことだ。それだけではなく、同社では、ハドルルームを使って、即時、短時間の効率的な会議が多く行われている。そのハドルルーム利用の仕組みについて、同社執行役員 本部長 医薬品生産&技術本部 押川 昌一郎氏に伺った。



■必要があれば、すぐに作戦会議ができるように



会議で一番フラストレーションが高まるのは、緊急で話し合わなければいけないときに、会議室が空いていない場合です。例えば、午前中に緊急課題が発生したのに、会議室が開いているのは17時となると、全員が夕方まで待たないといけないわけです。これは本当に非効率だし、フラストレーションが溜まるんですよ。そのときに、すぐ集まって、作戦を練ってすぐ分かれる、ということができるのがハドルルームです


これは、バイオジェンのアメリカの本社も同じ仕組みを持っているんですよ。ハドルというのは、アメリカンフットボールの情報交換です。アメフトの試合中、各プレイがスタートする前に、選手たちが一箇所に集まるじゃないですか。あれをハドルっていうんです。みんながぱっと集まってちょこちょこっと会議してぱっとポジションにつく、あのイメージなんですよ。すぐ集まって、ここで会議をするというイメージですね。


(同社執行役員 本部長 医薬品生産&技術本部 押川 昌一郎氏)


取材者もあまりアメフトに詳しくないので、少し解説してみたい。


アメリカンフットボールの試合をテレビなどで見ていると、試合中、何人かの選手が数十秒間集まって頭を寄せ合って話しているシーンが出てくる。これを「ハドル(HUDDLE)」という。


アメリカンフットボールは、作戦を組んで1プレイずつ極めて戦略的に進められるので、試合が中断し再開までのわずかな時間(審判がプレイの開始を告げ25秒以内にプレイを開始するまで)を使って、次のプレイの作戦会議を行うことを「ハドル」というわけだ。まったく余談だが、お笑いコンビ「オードリー」春日のネタ「トゥース!」というのも、アメフトのハドル召集の合図、「ハッドゥー!」「ドゥース!」「トゥース!」と呼びかける掛け声が元になったギャグだ。


ハドルのイメージは上の写真のような感じで、プレイ中のわずかな時間を使って、選手が短時間集まり作戦会議をする。

画像提供: Kzenon / PIXTA(ピクスタ) (※)


ハドルのイメージは上の写真のような感じで、プレイ中のわずかな時間を使って、選手が短時間集まり作戦会議をする。終わり次第、各人がポジションに戻ってプレイを再開する。


このアメフトのハドルと同じ仕掛けを会社で行っているのが、同社だ。


何か事案があれば、関係者がすぐにハドルルームに集まって対策会議を開く。そして、対策が決まり次第すぐに分かれ、各人がポジションについて行動していく。そうした即時、短時間のミーティングを行って、効率を上げている。


社内会議というと、会議室の空き時間と、メンバーの空き時間をすり合わせて招集することが一般的だ。特に、会議室が取れなくてすぐに打ち合わせができないというのはよくある。確かにフラストレーションが溜まる。同社のハドルルームが予約なしにいつでもすぐ使えるのであれば、部屋は常に確保できるわけでとても魅力的な仕組みだ。


しかし、本当に予約は必要ないのだろうか。会議室を使いたいときに、必ず空いているものだろうか。その点が気になって尋ねた。



■予約させないことで抜群に効果が上がる


むしろ、必要がある時にすぐに会議室を使えるようにするために、先取りにしています。会議室は先取りで、逆に予約をしちゃいけない。予約ができないようにルールにしています。これで会議は抜群に効率が上がりますね。


予約をできるようにすると、実際は2時間しか必要なくても、もしものために4時間とか予約してしまうんです。昔、我々がそうだったんですが、空いている会議室の予約を見ると、5時間予約されているんです。もう会議は終わって、誰も使っていない。予約制にするとそうしたことが始終起きるんです。

(同)


なるほど。会議室数のキャパシティが理論的には足りていても、予約制にすると、本来十分な数があるはずでも、予約確保しすぎてしまって、使いたいときに使えないという問題が発生するということのようだ。予約させないことで、必要な時に必要なだけ使うことで全体がうまく回るというわけだ。



■会議室のシェアリングのような形

この話を聞いて思ったのだが、これは、会議室のシェアリングのような形ではないだろうか。「予約」=「所有」ということであり、予約禁止にすることで、必要な時に「利用」=「シェア」する使い方に切り替えるということに思われる。


とはいえ、予約(=所有)しておかないと確実に使えないのではないかと不安な気持ちになることは取材者も実感している。そのあたりはどのようにされたのか、こちらのオフィスの、オフィス作りプロジェクトの事務方を取りまとめられたた、同社医薬品生産&技術本部 セキュリティ ファシリティ EHS+S総務 マネージャー 新井 良典氏に話を伺った。



ハドルルームについて言えば、移転前の段階で「予約できるようにしてほしい」と社内から要望はありました。「ハドルルームが使用されていて埋まっていて、使いたいときに足りなくなったらどうするんですか?」という心配の声もありました。また、「全部の部屋にモニターつけてほしい」といった要望など、オフィス移転にあたり、いろいろな要望、心配の声はありました。


そのあたりは、説明をして理解してもらうことが第一です。それでも不安は残りますので、「いったんこの状態で始めてみましょう」と話しました。トライアルの期間を設けてやってみるようにしたのです。トライアルで、皆さん使っていただくと、「あ、大丈夫なんだ」と実感いただけると思いますので、そうなると、不平不満ではないですが、要望は落ち着きました。


(同社医薬品生産&技術本部 セキュリティ ファシリティ EHS+S総務 マネージャー 新井 良典氏)



トライアル期間を設けて、実際に実感してもらうことで、必要な時に必要な部屋が使えることを理解してもらって行ったというのが興味深い。それによって、事前に多めに予約して確保する必要がなくなり、ますます会議室は足りるということになるのだろう。また、同社の会議スタイルの、ぱっと集まってぱっとポジションに就くという短時間で会議を行うスタイルもポイントと思われる。


確かにある程度の会議室数は用意しなければ回らない仕掛けではあるが、すぐに集まって、必要なだけ短時間で会議をして散会するのであれば、とても有効に機能しそうだ。



■会議室を画一的ではなく、いろいろな形を用意する理由

また、同社はハドルルームをいろいろな形で用意している。例えばPCを使わないで、ソファで話をするための部屋や、大型モニターを用意して6人くらいまでで会議ができる部屋もあり、そのときの打ち合わせの内容に合わせて選べるように作られている。


どうして同じ仕様に会議室を揃えていないのかと疑問の方もいるかもしれない。実は、人は部屋の作りによって話せる内容が変わるのだ。


例えば、上司と自身のキャリアに関して相談をしたいというときに、大型モニターのある大き目の会議室で対面すると、相手までの距離もあるので、まるで面接のような雰囲気になり、ざっくばらんな話をしづらいということがある。ところが、ソファが置かれた明るめのトーンの部屋に90度の角度で向き合って座れば、その近さもあって、初めからリラックスして話しやすかったりする。そういう心理的な効果も踏まえて、会議室はその用途ごとにいろいろな種類が作られているのだ。



加えて、ハドルルームは執務スペースのすぐ近くに作られていて、何かあればハドルルームに入れるようになっている。個室になっているのは、製薬という事業の特性上、守秘的な話が多いことに備えてではあるが、声は漏れないが前面を透明なガラス張りにすることで、ハドルルームに誰がいるかはすぐに分かるように作られている。このあたりは、ほかの企業で守秘的な話が少なければ、ハドルルームをオープンな打ち合わせスペースにしても良いかもしれない。


以下、具体的にハドルルームを一部紹介していきたい。



■ハドルルームいろいろ

こちらはソファベースのコンパクトな部屋。2人などで話す会議向き。

こちらはソファベースのコンパクトな部屋。2人などで話す会議向き。モニターはあえて置いていない。明るいライトグリーンのカラーリングと、近めの距離感で落ち着いて話し合えるように設計されている。


こちらは4人で大型モニターを見ながら会議できる部屋。

こちらは4人で大型モニターを見ながら会議できる部屋。いわゆる会議用なので、壁もライトブルーでシャープな雰囲気を持ち、壁にはホワイトボードも設置している。


こちらはソファに座って4人で会議できる部屋。

こちらはソファに座って4人で会議できる部屋。壁にはホワイトボードも設置。モニターは置いていない。ブレストに向きそうな部屋だ。


こちらはモニターを囲んでハイチェア6つの会議室。

こちらはモニターを囲んでハイチェア6つの会議室。立っても打ち合わせできるように作られている。ライトブルーの壁でシャープな雰囲気を出している。


執務スペースに対して、すぐそば、右側にハドルルームが並ぶ。

執務スペースに対して、すぐそば、右側にハドルルームが並ぶ。



■終わりに

何か事案があれば、関係者がすぐにハドルルームに集まって対策会議を開く。そして、対策が決まり次第すぐに分かれ、各人がポジションについて行動していくというスピーディーな経営をしている同社。会議室を短時間、必要な時に使うだけにすることで、シェアリングのように予約なしで回すことが出来るなど、とても参考になるオフィスづくりだ。もちろん、そのためには短時間で会議する運営の仕方や、ある程度の会議室数の用意などは必要になるが、これからの新しい会議の一つの形を示しているのではないだろうか。








取材先

バイオジェン・ジャパン株式会社newwindow

多発性硬化症を始め難病治療薬を創薬するバイオテクノロジー企業のパイオニア バイオジェン社(Biogen, Inc.)の日本法人。バイオジェン社は、1978年スイス・ジュネーブにて創業。現在、本社はアメリカ、マサチューセッツ州ケンブリッジにあり、神経疾患、自己免疫疾患、希少疾患の治療法開発に重点を置く世界的バイオテクノロジー企業。企業理念「Caring Deeply. Changing Lives. (深く思いやる。人生を変える。)」を掲げる。




編集・文・撮影:アスクル「みんなの仕事場」運営事務局 (※印の写真を除く)
作成日:2017年6月9日




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