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ABWとは? オフィスへの導入方法と、成功企業の具体事例

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ABWとは


近年、オフィスにABWを導入しようとする企業が増えています。ABWにはさまざまなメリットがある一方、導入する際はいくつか覚えておくべき注意点もあります。本記事では、ABWの概要や導入によるメリット、注意点、成功している企業の事例などを解説します。





■ABWとは? 導入目的と注目される背景

ABWとは、Activity Based Workingの略であり、従業員が業務内容やそのときの気分、予定などにあわせて働く時間や場所を柔軟に選択できる新たな働き方です。もともとオランダで誕生した働き方と言われており、近年では日本でも注目されるようになりました。


ABWを導入すると、従業員はオフィスだけでなく、自宅やカフェ、コワーキングスペースなど場所に縛られない働き方が可能です。企業側にとっても、業務効率化や生産性の向上、採用力の強化などが期待でき、企業と労働者、双方にとってメリットがあります。


ABWに注目が集まり始めた理由としては、新型コロナウイルスの流行に伴う働き方の変化が挙げられます。感染リスクを軽減するため、多くの企業がリモートワークやハイブリッドワークを導入し始めました。それによって、場所に捉われない働き方に注目が集まり、導入を検討する企業が増えています。



●ABWとフリーアドレスの違い

フリーアドレスとは、従業員個々の固定席を用意せず、社内の好きな場所で働けるワークスタイルです。個人用のデスクではなく、数人が着席できるテーブルを用意し、従業員は空いている席に座って業務を遂行します。


ABWとの大きな違いは、働く場所がオフィスに限定されるかどうかという点です。自宅やカフェ、コワーキングスペースなど、オフィス以外の場所でも自由に働けるABWに対し、フリーアドレスはあくまでオフィス内で業務に取り組みます。


また、目的にも違いがあります。ABWの主な目的は従業員の労働環境改善や生産性の向上です。一方、フリーアドレスはスペースの効率的な活用によるコスト削減、コミュニケーションの活性化などに重きを置いています。




■企業がABWを導入する3つのメリット

ABWの導入を検討しているのなら、具体的にどのようなメリットがあるのかを把握しておく必要があります。ABWの導入によって企業が得られる主なメリットとしては、「生産性の向上」「コスト削減」「人材確保」の3つが挙げられます。



●働き方改革による生産性の向上

ABWの導入によって働き方改革を推進でき、従業員はこれまで以上に柔軟かつ自由な働き方を手に入れられます。たとえば、リラックスできるカフェで資料を整理する、設備が整ったワークスペースで効率よく業務を進めるといったことが可能になるため、生産性の向上につながります。


柔軟かつ自由な働き方の実現に伴い、従業員のワークライフバランスが整うのも魅力です。仕事とプライベートの両方を充実させられるほか、家族の介護や育児をしつつ働くこともできるため、モチベーションアップにつながり、生産性の向上効果が期待できます。



●オフィス縮小による維持費の削減

企業活動に要する経費のなかで、多くのウエイトを占めるのがオフィスの賃料です。ABWを導入し、自宅やカフェなどで働ける環境を整備すると、従業員の固定席を廃止できるためオフィスも縮小でき、大幅なコストダウンが可能です。


また、常時出勤する従業員が少なくなると、光熱費や通信費といった経費の削減にもつながります。併せてペーパーレス化も進めていくことで、業務で紙を使用する頻度が少なくなるため、資料の保管スペースを圧縮でき、管理コストも削減できます。



●企業価値の向上と優秀な人材の確保

ABWを導入すると、従業員が柔軟かつ快適に働ける職場環境が整うため、外部へのアピールとして有効です。従業員の働きやすさを重視している企業、ホワイト企業であるとの評判が高まり、企業価値の向上と優秀な人材の確保につながります。


人材は企業にとって利益に直結する重要なリソースです。しかし、少子高齢化に伴う労働人口の減少によって、現在では多くの企業が人材不足に頭を抱えています。今後も日本の労働人口は減少の一途をたどると考えられるため、いかにして人材を確保するかを企業は考えなくてはなりません。


ABWの導入によって、従業員は場所に縛られずに働けるため、遠方の求職者も採用可能です。また、育児や介護などの理由でオフィス勤務が難しいといった層も取り込めるため、採用力の強化につながります。


入社後の定着率が高まる効果が期待できるのもメリットです。優秀な人材を確保できても、短期間で退社されては意味がありません。ABWの導入で働きやすい環境を整備すると、居心地がよいと感じてもらえる可能性が高まり、従業員の定着が期待できます。




■デメリットは?ABW導入時の注意点

ABWは、従来の働き方と大きく異なるため、導入時にはさまざまな部分を見直す必要性が生じます。たとえば、ABWでは従業員が好きな場所で働けるため、これまでのように上司が労働実態を正確に把握するのが難しくなってしまいます。そのため、評価体制や勤怠管理の見直し、再構築が必要です。


また、コミュニケーションのとり方も見直さなくてはなりません。これまでのように、同一空間ですべての従業員が働くワークスタイルではないため、新たなコミュニケーション手法が求められます。たとえば、ウェブ会議システムやチャットツールなどの導入が考えられます。


適切なセキュリティ対策が求められるのも注意点のひとつです。従業員はオフィス以外の場所で業務に取り組めるため、端末やUSBメモリの紛失、盗難、オンラインを介した情報漏えいなどさまざまなセキュリティリスクを高めます。従業員のセキュリティリテラシーを養うほか、情報の扱いに関するルール作り、業務に使用する端末へのセキュリティソフト導入といった対策が必要です。


また、実際にABWを導入したものの浸透せず、従来と同じ働き方になってしまうといったケースも散見されます。こういった事態を防ぐためには、ABW導入の目的やメリットなどを従業員に対して丁寧に説明することが大切です。




■成功率を上げる!オフィスにABWを導入する方法

行き当たりばったりでABWを導入しようとすると、失敗するリスクが高まります。オフィスにABWを導入し成功させるには、以下のステップに沿って進めることをおすすめします。



1. オフィスの現状を把握し、ABWの導入が適切かを検討

最近のトレンドであるから、導入する企業が増えているからといった理由でABWを導入しようとすると失敗のリスクが高まります。まずは現状の把握と分析を行い、ABWの導入によって現状の課題を解決できるか、目的を達成できるかを考えることが大切です。


ABWの導入によって、必ずしも生産性が高まるとは限りません。むしろ、導入によって業務効率が低下し、生産性が下がるといったおそれもあります。たとえば、メンバーがひとつの空間に集まって作業しないと業務が進まないというケースでは、ABWの導入によりかえって生産性が下がるかもしれません。


また、費用対効果についても考慮しましょう。ABWを導入するとなると、フリーアドレスに適したデスクやオンラインでデータをやり取りできる仕組み、適切なセキュリティ対策などが必要です。決して少なくない費用が発生するため、投入したコストに対する効果がどの程度見込めるのかを事前に考えておかなければなりません。



2. ABWの導入目的を明確に設定

現状把握と分析が終わったら、導入目的を明確化します。顕在している課題をABW導入によってどう解決するのかを考えるフェーズです。導入目的が明確でないと、ABWの導入そのものが目的となってしまい、意味のない取り組みになってしまうかもしれません。


よくある導入目的としては、コスト削減や生産性の向上などが挙げられます。解決したい課題によって、導入すべきツールや策定すべきルールなどが変わってきます。


ABWの導入によって、もっとも大きな影響を受けるのは現場で働いている従業員です。そのため、目的が明確でないと、「何のためにそんな取り組みをするのか」と不満を抱く従業員も出てきかねません。従業員の理解と納得を得るためにも、導入目的の明確化は重要な作業です。



3. ABW型オフィスのレイアウトを設計

導入目的を明確化したら、ABWに適したオフィスのレイアウトを具体化しましょう。従来のように、従業員個々の固定席は不要となるものの、代わりに作業スペースやミーティングスペース、1人で集中して業務に取り組める空間、休憩エリアなどが求められます。


オフィスレイアウトは慎重に設計しないと、ABW導入後に従業員が働きにくくなってしまうおそれがあります。たとえば、執務スペースとミーティングエリアが離れすぎてしまい、余計な時間が発生するといったことも起きかねないため慎重さが必要です。


併せて、どのようなオフィス家具や設備が必要なのかも検討を進めましょう。たとえば、フリーアドレス用のデスクや、社外で業務に取り組む従業員用の端末などが挙げられます。



4. ABWに対応した社内制度・環境の整備

従来と働き方が大きく変化するため、社内制度や環境整備も進めなくてはなりません。これまでと同じ評価方法では、オフィスにいない従業員の働きぶりを正当に評価できないため、評価方法も見直す必要があります。


ネットワーク環境も要チェックです。通信速度が遅い、安定しないといった問題があると、WEB会議に支障をきたしかねません。スムーズなデータのやり取りも難しくなるおそれがあるため、必要に応じてネットワーク環境も見直しましょう。


また、セキュリティ対策も重要です。オフィス勤務のように閉鎖された環境で業務に取り組むわけではないため、さまざまなセキュリティリスクがつきまといます。公共のWi-Fiを使用しない、重要なデータが入ったUSBメモリを持ち出さないなどルール作りを進めるほか、セキュリティソフトを導入するなどの対策も進めましょう。


従業員のセキュリティリテラシーを高める取り組みも求められます。高度なセキュリティ環境を整備しても、従業員のセキュリティリテラシーが低いと、不適切な行動から情報漏えいのようなリスクが発生しかねません。




■ABW型オフィスに必要な設備の例

ABW型オフィスを構築するには、複数人で利用できるオフィスデスクや集中ブース、ミーティングスペース、収納スペースなどが必要です。



●複数人が使えるオフィスデスク

社内外の自由な場所で働ける環境を構築するには、従業員個々にデスクを用意するのではなく、複数人で使用できるオフィスデスクが必要です。ABWを導入するなら、そういったフリーアドレスに適したデスクを選びましょう。


フリーアドレスデスクは複数人での使用を前提に開発された製品が多く、ノートパソコンやモバイル機器などの配線を通せるケーブルダクト、電源を備えたものが多くを占めています。また、キャスターつきのデスクなら、オフィス内で自由に移動させながら使えるため便利です。


フリーアドレス向きのデスクはサイズもさまざまなので、何人での使用を想定するのかを考えたうえで検討を進めましょう。



▼Ceha プレノデスクシステム フリーアドレスデスク

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■本体価格(2023年12月時点)
¥57,800(税込)
※製品本体の価格です。オプションの有無などによって、価格は変動します。



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Ceha プレノデスクシステム フリーアドレスデスク



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●WEB会議にも対応の集中ブース

集中ブースは、1人で業務に集中したいときに使用するブースです。密閉型やパーティションで周りを囲った簡易型などのブースが販売されています。業務によっては、顧客情報をはじめとした機密情報を扱うケースもあるため、1人用の集中ブースがあると安全に業務に取り組めます。


おすすめなのは、WEB会議にも対応した集中ブースです。場所に捉われない働き方では、必然的にWEB会議の頻度が高まると考えられます。パーティションで囲っただけの簡易的な集中ブースでは、音声が周りに漏れてしまうため、音が気にならない密閉型のブースがおすすめです。


なお、集中ブースには2人で使用できる製品もあります。これなら、1on1のミーティングなど多用途に使用できます。



▼集中ブース・ワークブース(防音・遮音)

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●気軽な打ち合わせができるミーティングスペース

ミーティングスペースは、従業員同士が気軽にコミュニケーションをとったり、アイデア出しを行ったりと多用途に使用できるスペースです。気軽に集まって話ができる空間があることで、スピーディーな情報交換を実現できるほか、新たなアイデアの創出にもつながります。


ミーティングスペースをリフレッシュスペースと兼用するのもひとつの手です。堅苦しくないカジュアルな雰囲気のなかで情報共有や交換ができ、コミュニケーションの活性化にもつながります。ただ、リフレッシュスペースと兼用する際には、使用時間や注意事項などあらかじめルールを策定しておきましょう。


座ってミーティングを行うスタイルのスペースなら、複数人で座れるソファの導入がおすすめです。ハイバックソファならリラックスするにも最適で、くつろぎながらミーティングを進められます。



▼アスプルンド ファミレス席風ハイバックソファ

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■本体価格(2023年12月時点)
¥57,900(税込)
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アスプルンド ファミレス席風ハイバックソファ



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●書類や私物を保管する収納スペース

オフィスにフリーアドレスを導入すると、個人の座席がないため業務に使用する書類や私物などを保管できません。そのため、別途収納スペースを設ける必要があります。


おすすめはパーソナルロッカーの導入です。これは個人用の収納ロッカーで、業務に使用する書類や端末などの保管に使用します。ダイヤル錠を備えたパーソナルロッカーなら鍵の管理が不要であるため、紛失によってロッカーを開けられなくなるといった事態を回避できます。


また、移動式のワゴンもフリーアドレス環境下では便利です。仕事に必要な書類や私物などを載せられ、オフィス内を移動する際も容易です。



▼オカムラ スチール収納VILLAGE パーソナルロッカー

オカムラ スチール収納VILLAGE パーソナルロッカー

■本体価格(2023年12月時点)
¥115,400(税込)
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■【事例】ABWを導入したオフィスレイアウト3選

ABWの導入を検討しているのなら、すでに運用を開始している企業の事例を参考にすると取り組みやすいかもしれません。ここでは、参考になりそうなオフィスレイアウトを3つピックアップして紹介します。



●個室は93個!活動に応じた多彩なゾーンを用意(イトーキ)

株式会社イトーキは、以前から現代に求められる働き方に適したオフィスの形を実現するための取り組みを進めていました。2018年には、ABWの考え方をベースにした新オフィス「XORK」を開設しています。


同社のオフィスレイアウトは、従業員の活動に応じた多彩なゾーンを用意している点が大きな特徴です。たとえば、個室だけでも93室が用意されており、それぞれ異なる家具やデザインを採用しています。


ほかにも、集中してソロワークに取り組むためのブースやアイデア出し用の部屋、知識共有の空間なども設けています。



関連記事:
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●フリーアドレスはあえて見送り。「自席とABWを行き来する」オフィス(日東システムテクノロジーズ)

2021年にオフィスを移転した株式会社日東システムテクノロジーズは、自席とABWを往来できる働き方を実現するオフィスを構築しています。同社のオフィスレイアウトは、コミュニケーションと集中の2つを軸にエリアを分割している点が特徴です。


固定の自席ではチームのメンバーと活発にコミュニケーションがとれ、ABWエリアは自席を離れてリラックスしたいとき、1人で集中して業務に取り組みたいときなどに利用できます。ABWエリアは、ラウンジスペースやワークスペースなど、階層ごとに異なるコンセプトを採用している点が特徴です。



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●フロアごとにコンセプトを設定、荷物問題は倉庫スペースの確保で解決(ポニーキャニオン)

株式会社ポニーキャニオンでは、コロナ禍に伴い働き方が大きく変化したのをきっかけにフリーアドレスを導入しました。ただ、初めての取り組みであったため、何が最適なのかわからずしばらくは混乱が続いていたとのことです。


ABWの導入にも踏み切ったものの、従業員たちからの強い拒絶反応がありました。そこで同社では、3つのテーマをフロア別に展開する手法を選択します。


打ち合わせなどに使用する「コラボレーションワークスペース」、リラックスして業務を行える「カジュアルコミュニケーションワークスペース」、集中して業務に取り組む「コンセントレーションワークスペース」の3つによって明確なコンセプトを打ち出し、それぞれのスペースにおけるルールを策定することでABW導入に成功しました。また、ABW導入の障壁になりがちな荷物問題は、フロアに大きな倉庫スペースを設けることで解決させています。



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 ポニーキャニオンが挑む、エンタメ企業ならではのABW



■おわりに

ABW導入によってさまざまなメリットが得られる一方で、管理体制の見直しやコミュニケーションの最適化が求められるなど、注意点もあります。ABWの導入と運用を成功させるには正しいステップで導入を進め、必要な設備を準備しなくてはなりません。オフィス家具の多くのメーカー商品をそろえるアスクルであれば、様々な働き方を実現するための商品がそろいます。ABW成功の為にも環境整備にしっかりと取り組むようにしましょう。




編集・文・画像:アスクル「みんなの仕事場」運営事務局 
制作日:2023年12月28日

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