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オフィスデザインの省コスト化工夫と発想の転換で実現~サンニン株式会社のオフィスデザインサービス「SCOP」~「働き方改革」時代のオフィス移転入門 [第3回] ~

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画像提供:acworks / Photo AC (※)



オフィス移転において、物件が決定すると、いよいよ始まるのがデザイン・施工の工程です。どんなデザインにするか、どんな家具を選ぶか、どこに発注するか。検討すべき案件が山積みの中、特にオフィス移転プロジェクトの担当者が直面するのが「予算」の問題。


オフィスデザインや施工についての知識や経験のない担当者にとっては、「予算」をいくらにするか、あるいは決まっている「予算」の中にどう収めるか、責任重大だけに悩ましい問題であることと思います。企業の規模や業態によってかかる費用の内容や規模は変わるとしても、「できるだけ無駄を省いて適正な予算にしたい」という想いは全担当者共通。そこで、「『働き方改革』時代のオフィス移転」第3回は、デザイン・施工における「省コスト化」にスポットを当てます。



今回、お話を伺ったのは、オフィスや商業施設のデザイン・施工・メンテナンス、インテリアの設計やコーディネート等を手がけるサンニン株式会社のクリエイティブ事業部プロデューサー秋山択也さんと、クリエイティブ事業部プロジェクトマネージャー山根恵さん。


「SCOP」は、「省コストでデザイン性や使い勝手のよいオフィスを実現させる」をテーマに、同社の中で中・小規模事業所におけるオフィスのデザイン・工事、改装を中心に手がけている同社が独自で展開するオフィスデザインに特化したサービス。年間約250件を越える移転や改装にともなうデザイン・工事業務をハンドリングしているチームです。 さて、デザイン・施工における「省コスト」とはどのようなものなのでしょうか。



サンニン株式会社 クリエイティブ事業部 プロデューサーの秋山択也さん(左)、同 プロジェクトマネージャー/インテリアコーディネーター/照明コンサルタントの山根恵さん(右)

サンニン株式会社 クリエイティブ事業部 プロデューサーの秋山択也さん(左)、同 プロジェクトマネージャー/インテリアコーディネーター/照明コンサルタントの山根恵さん(右)



■省コストは料金を透明化することから始まる


「SCOP」とは「Saving Cost Office design Project」の頭文字。クライアント企業の要望を掘り下げるという意味で、「スコップ」をかけています。この名称に、ちゃんと「コスト」への考え方が盛り込まれていますね。 同社の特徴のひとつは、デザイン・施工の料金についての情報を積極的に開示しているところです。ホームページには、省コスト施工の具体例とともに、料金の目安や「100万円パック」など料金にこだわった情報が掲載されています。同業種で、ここまで料金に言及しているところはあまり多くありません。




「省コスト」を謳っているからには、料金の透明性を打ち出さないと信頼してもらえない、ということもありますが、やはりお客様の最も不安なところは「料金」です。デザインや工事はモノではないので、値段をつけにくいですし、様々な工程が入って決まるものなので、お客さんにとってはわかりにくい。不安だからコンペで比較されることになりがちで、その分、時間がかかってしまうことになります。実施時期が決まっているオフィス移転においては、時間はとても貴重ですから、本来はコンペ無しで指名していただければ、無駄な時間を短縮できます。そういったことから、できる限り多くの料金の情報をホームページで開示しています。実際に「100万円でここまでできるならこれで」などと依頼していただくことが多いですね。


(サンニン株式会社 クリエイティブ事業部 プロデューサー 秋山択也さん)




同社が考えるデザインや・施工における「省コスト」とはどのようなものなのでしょうか。




当社が考える「省コスト」とは、単に予算を圧縮するだけではなく、「無駄を省く」というスタンスです。職人さんや専門業者にダイレクト発注で中間マージンを省くのは当たり前ですが、全工程で無駄を排除していきます。


(同 秋山さん)



オフィスデザインの段階では、
・精度の高いパースを提出しデザインイメージを早い段階で共有
・価格パターンを松/竹/梅で提出
という対応を行っているとのことです。


プランが固まるまでの流れがスムーズになり、その結果、訪問回数が減って無駄な手間、時間を節約することができる、というわけです。




「SCOP」では、デザインから施工現場まで、一人のスタッフが最初から最後まで取り組んでいくスタイル。全員が図面を書けますし、家具や照明の選定や現場監督までできるスキルを備えています。外注されがちなイメージパースも内製化しています。


お客様との打ち合せ時に課題が出ても、その場ですぐに図面などを修正して確認してもらえば、時短になります。「持ち帰って検討して再訪問」ということは、極力しないように心がけています。工事の知識と経験を活かして、使う素材の仕様や納入ルートであったり、制作する造作物の材料どりなどを考えながら、より低コストでご要望を実現できないか、デザイン段階で検討していきます。


(同 秋山さん)



オフィス家具といえば、専門メーカーのものを使うのが常識ですが、同社は、具体的な省コスト策として、IKEAや無印商品、アスクルの商品などの一般向け家具や、上代や下代設定のない製品を積極的に使用するプランを提案しています。




ネットで検索すると、安いオフィス家具がいくらでも見つかりますよね。オフィスデザインの現場でも、家具などのハードで利益を取ることはすでに難しくなっています。それなら発想を転換して、価格が明確な一般的な家具を多く使って、省コストを図ろうと考えました。家具の選定やデザイン・レイアウトなどソフト面で料金をいただくスタイルです。見積もりも、家具の費用と当社の作業に対する費用を明確に分け、わかりやすい形で出しています。お客様にも好評で、コストの透明性を上げることが信頼感につながると実感しています。


(同 秋山さん)



でも、一般向けの家具は、不特定多数の人が使うようなオフィス環境で使用に耐えるだけの強度を持っているのでしょうか。




強度については確認してます。その家具が使われる環境を考えて、使用に耐えるかどうかを検証し、必要に応じてオフィス向け家具も利用しますので、ケースバイケースの対応ですね。


(同 秋山さん)



デザイン性が高く、価格もこなれている一般向け家具の活用は、省コストとデザインの両立に有効とのこと。オフィスにはオフィス専用のもの、という従来の発想を切り替えることで、省コストにつなげる例です。



サンニン株式会社 クリエイティブ事業部 プロデューサーの秋山択也さん

(同 秋山さん)



■必要なものは何かを見極めると選択肢が広がる


昨今のように、オフィスのデザインについての情報があふれている時代は、かつてありませんでした。政府の推進する働き方改革を背景にしたワークスタイルやワークプレイス改革を重視するトレンドが大きくなっていることに加え、インターネットを中心とするデジタル化の進歩により、様々な形態のオフィスが実現できるようになったことから、こうした状況が実現しています。




以前と比べると、「こんなオフィスにしてほしい」という具体的なプランを決めてこられる方が増えています。もちろんご要望に応じたものを作るのが当社の役割なのですが、「はたしてそこまで必要なのか」と思うような場合には、私たちからも提案させていただきます。凝ったレイアウトや設計にしなくても、家具や壁、床を変えるだけで、働く方のモチベーションを上げるオフィスを作ることはできますから。今必要なものは何かということを見きわめることも、省コスト対策の一つだと思いますね。


(サンニン株式会社 プロジェクトマネージャー/
インテリアコーディネーター/照明コンサルタント 山根恵さん)



メディアなどで発信される情報は、最先端のオフィス事例や機材やワークスタイルの情報が中心です。それを見て、中小の事業者の担当者が「うちの会社では、こんなオフィスはとても実現できない」と否定的な考えをもってしまうこともあるかもしれません。




「オフィスデザイン」というと、「お金がかかるもの」というイメージがあると思います。でも、「お金がかかるんだったら、今のままで」と最初から決めてしまうのは、ちょっともったいない。今は様々なタイプの家具や床材があり、ちょっとした組み合わせの工夫で、雰囲気はガラリと変わります。今回は家具だけ入れ替えて、次にオフィス移転をするときにはさらなるレベルアップを考える、ということでもいいのではないでしょうか。


(同 山根さん)



以前は代わり映えのしなかったオフィスの家具や床材等も、近年は機能性やデザイン性が上がりバリエーションも豊かになっています。




今では木目調のタイルカーペットまでありますから、それを敷きつめればフローリングのように見せることもできます。水をこぼしても浸透しないタイプや、メンテナンスフリーのタイプなど、デザインと機能性を両立させたものが多く出ています。会議室用の家具では、高さが変えられる昇降テーブルなどがお勧めです。こういったものを使えば、プレゼンターと聴く側の目線の高さが同じ位置になりますから、会議室のイメージや使い勝手が大きく変わります。最近では、オフィス機器メーカーもデザイン性にこだわった家具を出すようになっていますから、選択の幅はますます広がっています。


(同 山根さん)



「SCOP」では、このところ、移転よりも改装についての問い合わせが多いそうです。 不動産価格が上昇しているために移転を見送ったり、人手不足を背景に、人材募集のために現在のオフィスを刷新したいといった理由が目立っているとのこと。 オフィスのイメージチェンジということなら、最新の家具や床材を活用したレイアウト変更も、リアルな選択肢と言えるでしょう。



プロジェクトマネージャー/インテリアコーディネーター/照明コンサルタントの山根恵さん

(同 山根さん)



■「時間」移転をスムーズに進めるカギ


デザイン・工事の工程をスムーズに進めるために、オフィス移転の担当者が心がけておくべきポイントについて、実作業に携わる立場からのご意見を伺いました。




物件選定の際に、内装工事に関する情報も合わせて検討していただいたほうがいいでしょう。というのも、工事に関するルールはビルごとに異なりますので、いざ設計に着手したときに想定していた工事ができなかったり、余計なコストがかかったりすることが少なくないからです。工事を再調整することは手戻りになりますから、時間が無駄になります。ですから、経験豊かな不動産業者なら、物件探しの段階で、どういうオフィスを考えているかをと共有しておけば対応してくれます。決まっているなら、デザイン会社にも事前相談しておけば、さらに間違いありません。


(同 秋山さん)



物件が決まって、デザイン・施工の段階に移ってからはどうでしょう。




当社は一般住宅も手がけていますが、住宅の設計の場合は、極論すればいくら時間をかけても、わがままを盛り込んでもかまいません。しかし、入居期限の定まっているオフィスでは、そうは行きません。オフィスデザインは、限られた時間内で、お客様の要望と工期・コストのバランスをとった「中間地点」を見つけることだと考えています。デザインの工程はとても大事ですから、効率を上げてもそれなりの時間を要します。デザイン会社にはできるだけ早い時点で声をかけていただき、レイアウトの相談やビル側の工事条件の確認などを打合せしていくのがいいと思いますね。


(同 秋山さん)





デザインや工事に関する方針変更は、時間とコストの双方に大きな影響が出ます。いったんゴーサインが出て、作業が始まってからの変更は、手配した業者をバラしたり、資材をキャンセルしたり、多くの時間もコストをロスすることになります。最も避けたい事態ですね。担当者の皆さんもよくご存じだとは思いますが、起こるときは、起こってしまうんですよね。


(同 山根さん)



どのアドバイスも、「時間」がオフィス移転プロジェクトの成否に直結する最重要の要因だということが実感できる内容です。たとえ時間が足りなくなっても、移転日を遅らせることは基本的にできないので、「引越し時点で内装が完成していない」というような事態を避けるために、遅れを取り戻すための特急作業でコストが増加することになります。 後の工程がスムーズに流れるように準備段階を組み上げ、時間のロスを排除することが重要です。



サンニン株式会社 クリエイティブ事業部 プロデューサーの秋山択也さん(左)、同 プロジェクトマネージャー/インテリアコーディネーター/照明コンサルタントの山根恵さん(右)

(写真左: 秋山さん 写真右: 山根さん)



■「オフィスデザイン」という言葉はなくなる?


昨今、オフィスのあり方が変化し、かつては耳慣れなかった「オフィスデザイン」という言葉もすっかり定着してきました。サンニンに寄せられる問い合わせでも、漠然としているような依頼は珍しくなり、具体的な問題意識を持って取り組んでいる企業が増えているとのこと。


今後、「オフィスデザイン」はどのような方向に発展していくのでしょうか。秋山さんは「オフィス」の持つ役割の変化を実感しているといいます。




今後数年間のうちに、「オフィスデザイン」という言葉はなくなるか、古い言葉になっていくのような気がします。リモートワークやコワーキングスペースなどを含めた「働く場全体のデザイン」という考え方にシフトしていくのではないでしょうか。そのとき、現在でいうオフィスは、「働く場」の一要素にすぎなくなります。 「働く場」は、今後も変化し続けていくと思います。当社としてはもちろん「オフィスデザイン」にこだわっていきますが、「働く場」としてのデザインにも取り組んでいきたいと考えています。


(同 秋山さん)



かつては、オフィス以外の「働く場所」を選ぶことはできませんでしたが、今では従来のオフィスの機能を代替する、様々な形態が生まれつつあります。オフィスの持つ役割は相対的に限定され、面積も狭くなりつつあるのは事実です。


オフィスデザインの省コスト化という考え方も、「働く場所」全体として考えれば、その基準が見直されていくことになるでしょう。そんな変化に、オフィス移転担当者はどう対処していくべきなのか。


サンニンのお二人が語るように、情報に踊らされることなく、「自社が必要とするオフィスとは何か」を明確にして、最適な形で実現してくことがひとつの答えのように思われます。それがプロジェクト全体の「省コスト化」にもつながることは間違いないでしょう。










取材協力


サンニン株式会社

オフィスデザイン・内装・事務所レイアウト SCOP






編集・文・撮影:アスクル「みんなの仕事場」運営事務局 (※印の画像を除く)
制作日:2018年10月20日




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