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働き方改革時代の「社員食堂 第3世代」とは? ~食を通じた企業と従業員の関係について考える~

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画像提供 : beeboys / AdobeStock (※)



ビジネスパーソンのささやかな楽しみは、毎日のお昼の食事です。同僚に声をかけて、今日は何を食べようかと最近話題のお店を物色したり、お弁当を広げたり、ぶらぶらと社員食堂に足を運んだり。


ささやかとは言え、日々の活動源になる食事であり、同僚や上司などとのコミュニケーションの機会として非常に重要な意味があります。職場の食ということでいえば、身近な存在は社員食堂です。その社員食堂のイメージが、昔ながらのものとは様変わりしつつあることをご存じでしょうか。


社員食堂といえば、あまりおいしいとは言えないマンネリのメニューが多く、それでも価格は安いので、給料日前はよく混んでいるという、あまりポジティブなものとは言えないイメージを抱いている人も多いかもしれません。なぜか地下階にあることが多く、薄暗い印象もあるかもしれません。社員の利用率が下がったり、アンケート評価が悪かったりすると、総務部の担当者が調理業者に苦情を申し入れるなどという話もあります。


そんな社員食堂が、最近では眺望の良いビルの最上階に場所を移し、メニューも近隣のカフェさながらのオシャレで健康的なメニューが提供され、社員たちがゆったりとくつろいでいるようなスペースへと変容をとげています。「働き方改革」にもつながる社員食堂の変革は、どのようにして進んだのでしょうか。



今回は、食を通じた企業と従業員との関係について考えてみたいと思います。



■今どきの社員食堂は「第3世代」


まず、「社食ドットコム」(運営:プライムナンバー株式会社)のスーパーバイザー、露木美幸氏(帝京大学 法学部 准教授)に、最近の社員食堂の動向について伺いました。


社食ドットコム スーパーバイザー 露木美幸氏

社食ドットコム スーパーバイザー 露木美幸氏



「社食ドットコム」は、企業価値を高める社員食堂のあり方を研究しているサイトで、数多くの企業や官庁などの社員食堂訪問レポートが掲載されています。


露木氏によれば、日本における社員食堂の歴史は、大きく3つの世代に分けられるとのこと。


かつての「第1世代の社員食堂」は、たとえばメーカーの工場のように、周囲に飲食店がない労働環境で、従業員に食事を提供する場所として生まれたものです。対象となる従業員は多くの場合、肉体労働者が主で、量も多く味も濃い、健康やカロリーとは無縁の食事が提供されていました。


続く「第2世代の社員食堂」は、都会に立地する会社の内部に、主に福利厚生の一環として作られたものです。外に出ればすぐに飲食店はある環境ですが、他社も含めた地域の社員が集中することで混雑し、それを避けようとフライング気味に正午にダッシュするなど、仕事への集中を欠く状況への対策という意味もありました。価格は外の飲食店にくらべて格段に安く抑えられており、運営コスト節約のために地下などの立地が選ばれました。


この第2世代の社員食堂の時代が長らく続き、一般的な社員食堂のイメージが形づけられたと考えられます。


その後生まれ、今に続く「第3世代の社員食堂」とはどのようなものでしょうか。




第3世代の社員食堂が生まれた背景には、オフィスビルの高層化という事情があります。エレベーターの前に行列して箱が来るのを待ち、ビル外の飲食店に往復するだけで、昼休憩時間の半分以上をとられるほどになってしまうという状況があるのです。そこで、従業員にゆっくりとした食事の場を与えることで、モチベーションを高めるという方向に企業の意識がシフトしていきました。当時、シリコンバレー系のIT企業内にある「無料食べ放題」のカフェなどがSNSやブログで話題になったことも影響しているでしょう。


日本でもIT企業が隆盛の時代を迎えますが、その多くが高層ビルにオフィスを置いたことから、「エレベーター待ち」の問題が顕在化したわけです。


たとえばディー・エヌ・エーは渋谷にオフィスを移転しましたが、当初は、「渋谷には飲食店などいくらでもある」ということから、食堂の必要性がないと考えていたそうです。ところが下見をしてみたら、外に出るのがものすごく大変なことがわかったので、急遽、社食プロジェクトを立ち上げたそうです。


(社食ドットコム スーパーバイザー 露木美幸氏)




――第3世代の社員食堂は、第1世代、第2世代とくらべてどんな特徴があるのでしょう?




まず、社内の最も眺望のいい場所に作られていることが多いということです。昔だったら社長室を置くような場所ですね。


次に、第2世代までの最大の特徴だった「低価格」は姿を消し、価格は外のレストランとあまり変わらなくなっています。場合によっては外のレストランよりも高いこともあります。


また、お昼の時間以外にも朝食や夕食さらには軽食をとったりする場所として活用されているという特徴もあります。業務上、24時間稼働しているようなIT企業では夜も営業していますし、朝食を提供したりもしているので、朝昼晩ずっと営業していることになります。


さらに、食堂として以外の用途にも使われているということも特徴のひとつです。社内サークルや社内バンドのコンサート会場として使用されたり、会議室の代わりに使われることもある。社内でノマド的に仕事をする人のために、Wi-Fiやホワイトボード、プロジェクターなどが完備されている社員食堂もあります。第2世代までの社食のように、午後は電気を消してもう入れませんという場所ではなく、ワークスペースの一部として使われているわけです。


また、従業員のモチベーションを上げる工夫がされています。自社の製品が社食の意匠に使われたりしており、社員が自社に誇りをもったり来客に紹介したりできる社食もあります。あるゲームソフト会社では、スタッフの制服に自社のキャラクターをプリントしたり、カフェラテアートのモチーフにしたりしていました。


どの社食でも共通する最大の特徴は、従業員のコミュニケーションを重視していることだと思います。カフェのようなソファ席など、長居できる環境が用意され、たんに食事をするだけの場所ではなく、従業員同士が話し合えるような設計がされています。


たとえば大企業では、一括採用で入社して研修が終わると、顔を合わせる機会がなくなってしまうことも珍しくありません。そんな仲間と食堂で久しぶりに顔を合わせたり、仕事上の悩みや部署を超えて問題を解決するために、社員が横のコミュニケーションをとれる場所として、社員食堂が生まれ変わったのです。


(同)




■社外とのコミュニケーションによるイノベーション創出の場へ


そうしたインナーコミュニケーションのベースとして以外にも、社員食堂が外部とのコミュニケーションのツールとしても活用される流れも生まれています。




私はイノベーション創出型と呼んでいるのですが、社員の交流の場という機能を超えて、誰でも入れるコミュニケーションスペースとして運営されている社員食堂も出てきています。一般的には、社員食堂は許認可やセキュリティ上の問題によって部外者は利用できないところが多いのですが、最近では一般公開して、社外の地域コミュニティとのコミュニケーション機能をもつような社員食堂も見られます。たとえば、農機具メーカーのクボタでは、社員食堂のテラスで米や野菜の栽培を行い、収穫体験を地元の保育園・幼稚園児に開放して、地域とのコミュニケーションにも役立てています。


(同)




社内のコミュニケーションから、社外へコミュニケーションを開くことによってイノベーションへとつなげていく場へ。従業員に対する福利厚生からスタートしたかつての社員食堂という存在が、大きな変化をとげていることがわかります。


あえて鎌倉という場所にこだわり続けているIT企業カヤックでは、同じ鎌倉市内でビジネスを展開する企業数社と共同で運営している「まちの社員食堂」の取り組みも、地域をベースにしたコラボレーションによる新しい社員食堂のあり方と言えるでしょう。



カヤックほか鎌倉の数社で共同運営されている「まちの社員食堂」

カヤックほか鎌倉の数社で共同運営されている「まちの社員食堂」



露木氏は、多くの社員食堂を取材する中で、従業員を大切にする企業の姿勢を感じると語ります。社員食堂に大きな予算をかけ、運営に工夫を凝らすのは、企業側の従業員ファーストの精神に基づいています。そうしたメッセージが社員たちに届くことによって、さらにモチベーションに結びつくという理想的な好循環が生まれているようです。働き方改革として考えるのであれば、企業は自社の従業員がその能力を最大に発揮できる場所を提供することを念頭に社員食堂を設計していくことが望ましいでしょう。



■食によって従業員の健康を守る


一方、第3世代の社員食堂の初期には、健康志向のブームがありました。タニタが「健康づくりに貢献する」という経営理念を実践する場として、社員の健康の維持・増進を目的に本社社員食堂をオープンしたのが1999年。このメニューが話題になり、社員の健康管理に関心が集中しました。当時は「メタボ」という言葉が流行しており、カロリーを抑えたメニューや、女性従業員向けに美容に良いメニューなども提供されました。全体に薄味をフォローするために、出汁のきいた和食が中心になったのもこの頃です。


現在の第3世代の社員食堂では、健康に配慮されたメニューは当然のものとなっています。働く人の健康を守ることが社員食堂の重要な役割のひとつであることは、社員食堂の世代を問わず、変化していないのです。まして、健康経営に対する関心が高まっている現在、「食」はますます重視されつつあります。<職場の食をめぐるユニークなビジネスを展開している株式会社おかんの沢木恵太氏(代表取締役CEO)にお話を伺いました。



同社が提供している「オフィスおかん」というサービスは、企業のオフィスに冷蔵庫や自動販売機型の冷蔵設備を設置し、真空包装された惣菜やご飯を常設し、販売するというものです。その価格はなんと1つ100円。安心・安全にも配慮された健康的な惣菜を、好きな組み合わせ、好きなタイミングで食べられます。この価格を実現できるのは、このサービスが、従業員個人に対してではなく、その企業に対して提供されているからで、同社は、企業からの月額利用料金収入という新しいビジネスモデルによって成功をおさめています。企業側からすると、社員食堂という設備のコストをかけずに、従業員のエンゲージメントや満足度を高めることができるわけです。さらに、好きな時間やタイミングで好きな量を食べられるという利便性も大きな特長です。


一般企業だけでなく、医療現場、福祉現場、クリニック、病院、介護施設や、百貨店やカラオケ施設などのサービス業や、工場、物流施設など幅広い顧客にサービスを提供しています。



株式会社おかん 代表取締役CEO 沢木恵太氏

株式会社おかん 代表取締役CEO 沢木恵太氏




全体をみれば、社員食堂は減少傾向にあります。これはニーズがなくなったということではなく、運営コストを削減するために営業時間を限定したり廃止したりする社員食堂が増えているのです。中には、お昼前後のみ営業して、それ以外の時間帯はオフィスおかんの惣菜を提供している企業もあります。


せっかく社内に作ったコミュニケーションスペースにあまり人が集まらないので、オフィスおかんを置くことによって活性化させているお客様もいますし、従業員に無料で朝食をサービスして、残業を減らすことに成功している企業もあります。


また最近は、どの企業も健康経営に対する意識が強くなっており、明確に「健康経営の取り組みとして健康経営優良法人(ホワイト500)の認証取得のために導入したい」という注文も増えてきました。当社が提供している健康や食生活に関する従業員研修とあわせてご利用いただくケースもあります。


そのように目的によって様々な運用が可能なのが、オフィスおかんの強みです。


ともすると、われわれのサービスが残業を助長するのではないかという誤解されることもありますが、むしろオフィスおかんでさっと食事をすませて仕事を終わらせるほうがより早く退勤できます。


(株式会社おかん 代表取締役CEO 沢木恵太氏)




■エンプロイー・エクスペリエンスを最大化するツールとしての「食」


沢木氏はかつて会社員だった時代に、多忙のため食事をおろそかにしたために体調を壊し、欠勤するようになった経験があります。会社は好きだし仕事にもやりがいを感じているにもかかわらず、「この仕事を続けていけるのだろうか」と考えるようになったことにショックを受けた沢木氏は、健康の重要性にあらためて気づき、その体験がおかんの創業に結びついていきました。




健康経営でいうアブセンティズムやプレゼンティズムは、どちらも生活習慣の乱れが大きな要因です。生活習慣とは食事・運動・睡眠の3つですが、企業が勤務時間内で直接かかわることができるのは食事の部分のみだと思いました。オフィスおかんは、利用者に生活改善を強いるのではなく、利便なサービスを通じて自然な形で生活習慣改善にランディングしてもらうサービスなんです。


(同)




沢木氏は、食とは、従業員のエンゲージメントを強化し、パフォーマンスを上げ、離職を低減させるための重要なツールのひとつだと語ります。それが「働くヒトのライフスタイルを豊かにする」という同社のミッションステートメントにつながっているのです。


同社が企業に提案している「エンプロイー・エクスペリエンス」(Employee Experience)という観点は、最近注目されている概念で、従業員が企業や組織の中で体験する経験価値のことを指します。それを増大するためには、いかに従業員が満足できる体験を与えられるかという従業員の立場に立った視点が求められます。




オフィスおかんの惣菜を職場で食べるだけでなく、自宅へ持ち帰ることを推奨している企業もあります。共働きや核家族の比率が上がっており、夕飯のおかずの品数を増やす助けになっているわけです。それによって働く人の負担が軽減され、ひいては仕事のパフォーマンスにも影響します。エンプロイー・エクスペリエンスを意識し、そのように従業員の日常生活にも介入し、精神的・身体的不安を取り除く取り組みが広がっているのです。


(同)





今後、労働力の減少トレンドが続く日本のビジネス環境において、エンプロイー・エクスペリエンスを最大化することこそが、経営者のミッションであると言っても過言ではないと言われています。それに基づく企業の姿勢は、社食ドットコムの露木美幸氏が取材時に感じた「従業員ファースト」の精神と共鳴するものではないでしょうか。








取材協力

社食ドットコム

株式会社おかん









編集・文・撮影:アスクル「みんなの仕事場」運営事務局 (※印の画像を除く)
制作日:2019年2月4日




         

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