THE CAMPUSの6階。リラックスしながら仕事ができるエリア(※)
2022年11月の「2023コクヨフェア」に合わせ、コクヨが運営する「働く・暮らす」の実験「THE CAMPUS」のフロアの一部がアップデートされました。前編にひきつづき、アップデートされたTHE CAMPUSのフロアを紹介していきます。
ご案内してくださったのは、引き続き、同社の原田怜さん(ワークプレイス事業本部 スペースソリューション本部デザイナー)、芥川梨枝子さん(ワークプレイス事業本部 ECマーケティング部)です。
こちら
■「若い世代をどう育てていくか」という深刻な課題
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原田さん 最後が6階です。このフロアは2022年7~8月にリスタートして、「育む」をテーマに、労務についての課題をつきつめています。
原田怜さん(ワークプレイス事業本部 スペースソリューション本部デザイナー)
原田さん この階のフロアテーマは、当初は「遊ぶ」で、人が集まってつながりを作ったり、発信したりする、「働く」に付随することを狙ったのですが、なかなかうまく稼働しませんでした。そこで1年前から「育む」というテーマに変更したのですが、施策が追いつかず、空間もあまり大きくは変えられなかったので、それをフロア全体に広げることが2022年の大きなテーマになりました。
― 前回の取材時は、まだ途中段階だったのですね。
原田さん 「育む」ために何が必要かと考えた結果、まずつながり、そして深めることだと考えました。このプロジェクトで難しかったのは、「どうやってつながっていくか」ということです。
でも、ただ単につながりを作るのは難しい。平時なら、業務上で関係することでつながりが深めて信頼関係ができ、会社の共通言語が作られていきます。ところが、コロナ禍でハイブリッドワークが増え、人を育成したり会社との関係性を育んだりすることが難しくなりました。
― そういった声はよく聞きます。
原田さん 今、入社して間もない人たちは、コロナ全盛下に入社した人たちです。彼らはリモートワーク主体のため、上司・先輩に質問できなかったりしています。温度感なども伝わりにくく、心理的安全性を高めることができずに辞めてしまうパターンもあります。それをどのように改善するか。コクヨの社員として若い世代をどう育てていくかということが弊社の目下の課題になっているわけです。
― それを解決するためのフロアということですね。
原田さん 全体的に「Home Living」という空間テーマで、フローリング調にしたり、カーペットを入れたり、ソファーを多めに入れて、リビングテイストな雰囲気を作って、人が集まれるようにしましたが、単に居心地のいい空間を作るだけでは課題は解決できません。そこにさまざまな仕組みや施策を盛り込み、空間と仕組みの両輪で回しています。
― 運用の施策が重要だということですね。
原田さん たとえばこのエリアは、ステーショナリーも含めていろいろなアワードを共有しています。「育む」ために会社のことを知ってもらう仕組みです。
フロアに入ると最初に目に入るのが、コクヨの受賞事例を皆でシェアするスペース
こちらは社員が読んだ本を紹介し合うというコーナー。自然に人が集まるマグネットスペースになっている
その本のポイントをタックメモで貼り付けてあるので、手に取りやすい
こちらは過去のライブオフィスの写真。昭和時代のオフィスの写真もあり、若い社員にとってはかなり新鮮とのこと。
LOVOTも動き回る癒やしの空間にもなっている。お着替え用の服も用意されていた
原田さん 展示などの後ろは、「共通理解」のエリアになっています。平時はソロワークができるような設えですが、簡単に中規模の会議や社内セミナーなどができるようにして、人が集まれるようにしました。
テーブルと椅子は可動。くっつけたり離したりしてエリア占有できる。キャスター付きのファニチャーはAny way(別記事「カジュアル化が進むコクヨの新着ファニチャーを見せていただきました」で詳しく紹介しています)
原田さん ここはランチのメイン会場にもなっています。他のフロアは食事できる場所が限られていたり、「軽飲食だけ」となっていたりしますので、しっかり食事ができるのは6階だけです。6階の中でも他のエリアは時限的に優先される人がいたりするのですが、このエリアは誰でも基本OKで、時間によっては仕事より食事する人が優先されることもあります。
6階がランチのメイン会場ということで、お菓子や電子レンジが設置されている
前回記事でも紹介した「社長のおごり自販機」。社員が2人同時に社員証をかざすと無料で飲料をゲットできるというコミュニケーション促進の仕掛け
― 「社長のおごり自販機」は前回来たときにとてもユニークだと思いました。
芥川さん THE CAMPUSの来場者アンケートでも、最も興味を持った人が多いコンテンツの一つです。コミュニケーションや若手育成の課題解決の一つとして、リアルコミュニケーションの機会創出に期待されているのだと思います。
こちらはリフレッシュエリア。ゆったり仕事をしたり雑談したりできる
原田さん 施策として、若手とチューターが優先的に集まれるフレッシャーズシートというエリアを作って若手の業務理解と心理的安全性の向上を図り、コンシェルジュエリアを作って業務上の困りごとを相談できる窓口にしました。
こちらがフレッシャーズシート。1.5人用のデスクで、チューターとフレッシャーの2人が画面を見ながら業務の内容を理解したり深めたりできる
三角形のテーブルは、正面で向かい合うより斜めからのほうがコミュニケーションしやすいため採用。詳しくは別記事「カジュアル化が進むコクヨの新着ファニチャーを見せていただきました」を参照
こちらはコンシェルジュエリア。ICTコンシェルジュなどいろいろな相談窓口がある。左側の縦のスクリーンは大阪オフィスと常時接続中。「つながる仕組み」のひとつ
原田さん コンシェルジュエリアでは、たとえば営業の人がこれまでにない商材としてICTツールなどを扱うようになって知識が不足しているという困りごとに対して、そこに座った専門知識のある人が相談にのったりします。
こちらはアートとホワイトボードを掛け合わせた「アートボード」。10階に入居したプロジェクトチームがパートナーと協業して生まれた商品(※)
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THE CAMPUSアップデートフロアのご紹介は以上です。
総括すると、11階は「経営と社員をつなぐHUBとしてのオープンラウンジ」、10階は「コクヨらしいプロジェクトワークのスタイルを模索する実験場」、そして6階は「ワーカーとワーカーが信頼関係を築くフロア」ということになります。
経営層との一体感を持ちにくかったり、働き方の変化でプロジェクト型の仕事が増えたり、ハイブリッドワーク下で距離感が生まれて人を育成しにくくなったり、というのは昨今のオフィスの共通課題だと思いました。
また、全体を広く"コミュニケーションの課題解決"と考えると、「経営層とワーカー」、「ワーカーと社外パートナー」、「ワーカーとワーカー」という相手ごとのコミュニケーションを促進させる、興味深い場ができていたと思いました。
原田さん、芥川さん、どうもありがとうございました!
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こちらの記事もご覧ください
「カジュアル化が進むコクヨの新着ファニチャーを見せていただきました」
取材協力
コクヨ株式会社
文房具やオフィス家具、事務機器を製造・販売。組織とワークスタイルの変化によってオフィスに求められる価値が大きく変容していることを受け、オフィス家具を提案するだけにとどまらず、オフィスデザインを通した働き方改革を追求している。オフィス設立の検討段階から関わり、コストシミュレーション、レイアウト設計、運用・維持にいたるまで、さまざまなフェーズで働く環境の計画プロセスを提案し、ワーカーのクリエイティビティを高められるオフィス空間の総合デザインをめざしている。
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編集・文・撮影:アスクル「みんなの仕事場」運営事務局 (※印の画像を除く)
取材日:2023年1月13日